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Channel: ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
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そもそも拉致問題と選挙というのは、根本的にそぐわないと思う

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日私の記事にコメントをいただきました。それでそのコメントでいろいろ考えるところがありまして、コメントの文面とはあまり対応していないかもですが、選挙と拉致問題についてちょっとあらためて考えてみたいと思います。

つまり、そもそも拉致問題というのは、選挙の際に争点となりうるか、当選したとして何ができるかということをちょっと再検討してみたいのです。

産経新聞に次のような記事が出ました。

>2016.6.26 05:02

【主張】拉致と参院選 救出への言及が足りない

 参院選に臨む党首討論会を聞き、驚いていることがある。それは、拉致問題に対する言及の、あまりの少なさだ。

 拉致は、北朝鮮という国家による残酷な誘拐事件である。国政選挙に当たり、被害者を必ず救い出すとの決意と具体策を各党はもっと熱く語るべきではないか。

 日本記者クラブ主催の党首討論会では、日本のこころを大切にする党の中山恭子代表が「拉致問題が進展していない状態を非常に歯がゆく思っている」と述べ、安倍晋三首相が「拉致問題は最重要課題だ。解決を目指して毅然(きぜん)と交渉を続ける」などと答えたのが、ほぼ唯一の拉致問題をめぐるやりとりだった。

 安倍首相が「最重要課題」とした自民党にしても、参院選公約では、末尾近くで「あらゆる手段を尽くして被害者全員の即時帰国を実現し、拉致問題の解決を目指します」とあるのみだ。連立与党の公明党は「拉致問題の解決なくして国交正常化なし」の基本姿勢で「一日も早い全面解決に向けて全力で取り組むよう政府に求める」と、政府任せである。

 民進党は「期限の定めのないストックホルム合意を検証しつつ、拉致問題の早期解決に全力で取り組む」などとし、共産党は「拉致問題や日本による植民地支配などの過去の清算といった、日朝間の諸懸案を包括的に解決することをめざす」などとしている。

 公示後の「第一声」でも「日本の若者が監禁されていることが分かっていながら放置してきた。独立国としてあり得ない」と訴えた中山氏が目立つばかりで、他党首の、この問題に対峙(たいじ)する肉声が聞こえてこない。

 北朝鮮は今年2月、拉致被害者の再調査を約束した「特別調査委員会」を解体すると、一方的に表明した。核実験と長距離弾道ミサイルの発射に対し、日本が独自制裁を強化したことへの対抗措置なのだという。

 拉致は犯罪である。この解決は本来、何らの交渉材料ともなり得ない。非が北朝鮮にあることは明白だが、日本側がより強い態度に出なければ事態は動かない。

 参院選で拉致問題が埋没することを被害者家族は懸念している。集会では「演説で5分でもいいから話題にしてほしい」の声もあったという。この悲痛な思いに応えず、何のための国政選挙か。

記事を読んでいれば、一応どの党も多少の言及はあるようですね。それは当然です。拉致問題は、大問題ですから。ある程度の議員を持つ政党がまさか「拉致問題なんかどうでもいい。早く北朝鮮と国交を回復しろ」とは言わないでしょう。しかし言及は少ない。それで仕方ないと思います。なぜなら例えば野党に関しては、拉致問題についてできることがほとんどないからです。

今回は参議院選挙ですから、かりに野党が過半数を取ったとしても政権交代はありません。そうなると、それは政府・与党に対して訴えていくということになる。それ以上のことはできません。与党だって本質的には同じです。政府に訴えていく、という以上のことはできない。これけっこう本質的な問題だと思いませんか。

たとえば増元照明氏は、2004年の参議院選挙(東京選挙区)と2014年の総選挙に出馬して落選しましたが、仮に彼が当選したと仮定しましょう。それで、具体的に何ができますかね。国会質問をする以上のことはできないんじゃないんですかね。

国会質問に意味がないとはいいませんが、たぶん増元氏がどれだけがんばっても、できることは極めて限られているでしょうね。というのは、現在拉致問題というのは、北朝鮮にいる(とされる)拉致被害者をどうやって日本に帰国させるかという問題であって、これは政府の仕事だからです。いくら日本の国会が、拉致問題で全会一致で北朝鮮を非難したところで、そんなものは解決の役に立ちません。政府が動かなければどうしようもない。上の産経の社説で、

>連立与党の公明党は「拉致問題の解決なくして国交正常化なし」の基本姿勢で「一日も早い全面解決に向けて全力で取り組むよう政府に求める」と、政府任せである。

と公明党を批判しますが、公明党の言い分はまさに正しいのです。政府が動いてくれなければ解決はできないのだから。それで各政党の拉致に対する公約は抽象的なものになります。具体性がないのは当然です。具体的なことは、政府でなければできないからです。

1988年の、共産党の橋本敦議員の国会質問と政府答弁などは、まさに国会議員が活躍した例でしょうが、これは北朝鮮側が拉致を認めていなかった時代の話です。現段階北朝鮮も拉致を認めているわけで、それをどうするというのは政治決断です。だから、こういうことは、政府高官、具体的には首相が「私が任期中に解決する」とかいって、あるいはいわなくても、解決するしかないのです。拉致問題解決ができるのは、首相、外相、官房長官などの政府高官、あとは外務省などの中央官庁です。事実小泉訪朝の際も、けっきょく政府高官と外務省が動いたから、拉致被害者帰国が実現したわけです。与党はほとんど関与していないでしょう。彼(女)らが動かなければどうにもならない。つまり私が何を言いたいかというと、しょせん拉致問題というのは、選挙の話ではないということです。政党の政策でなく、日朝交渉をどうするかという具体的な問題こそが焦点であるわけです。

さて、ポスト小泉の首相たちを見てみますと、安倍→福田→麻生→鳩山→管→野田→安倍(再度)となります。それで、この人たちは、拉致問題に本気で向き合ったんですかね?

私の見たところ、あるいていど本気で拉致問題解決に動いた(あるいは動こうとした)首相経験者は、福田康夫氏のみに思えますね。安倍晋三なんか口先だけです。福田氏は拉致問題を自分が解決するといっていたし、ある程度動いていたように思います。もっとも「巣食う会」にとっては、解決しない方がいいのでしょう。そう考えると、福田氏の1年での首相辞任は非常に惜しかったですね。

さて、第一次安倍政権についてはとりあえず不問にするとして、現在の安倍政権で、拉致問題って解決に向かって何らかの進展はあるんですかね。私のみたところ無いように見えます。もちろん水面下で進行していて、これからおおっと思うことがないとはいえませんので、このあたりは慎重に私も見きわめたいのですが、しかしけっきょく、安倍政権で拉致問題が解決に向かって進展していないのなら、それは安倍(内閣)が無能なのか、やる気がないかです。そうでもなければ、拉致被害者の全員帰国とかいう建前があまりに非現実的すぎるかです。

いずれにせよ「拉致被害者の全員帰国」なんていうのは、あまりに非現実が過ぎるから、これを何とかしなければと思いますが、それができるのもけっきょく首相だけですよね。それ以外の人間はできない。私はこのブログで、安倍晋三のことを馬鹿だクズだ亡国・売国首相だと罵倒していますが、安倍が首相である限り、やっぱり安倍が動いてくれなければしょうがないわけです。で、どうですかねえ。安倍は動いてくれるのか。現段階、安倍晋三はこれと言って動いてはいないですよね。第二次安倍政権が始まった時、私も正直「お、安倍も少しはこの件で動いてくれるのかな」と考えた部分もあったのですが、現状やっぱり安倍には、自分を支持してくれている右翼系の連中の意向に沿わないことをこの件でする気はなさそうですね。別に私の考えが当たってほしいとは、この件では思いませんが、安倍が動いてくれるかどうかは、安倍が首相を辞任する日に決着はつくでしょう。それは私も注目します。

もちろん拉致問題が選挙で争点にならない理由はほかにもいろいろありますよ。私が前に主張した、年金その他の生活に密着することの方が争点になるだろというのもそうだし、またbogus-simotukareさんがおっしゃるように、

>争点にならないのは「俺達救う会の主張だけが拉致解決の唯一の道、他の主張をする奴は拉致問題解決の妨害をしている」と放言して議論を封じた上、その「唯一の道」が何の成果も生まないからです。これで争点になったらその方が不思議です。

ということでもあります。古くは、蓮池透氏を家族会から追い出したこと、最近では、過日の横田さんたちの孫との面会の写真についての想像を絶するお粗末な事態なども、その一環であるわけです。こんなことが頻発したら、ばからしくてたいていの人間が相手にしなくなるのは理の当然。どうしようもないとはこのことです。

なお今回の記事は、bogus-simotukareさんの上での引用記事を大いに参考にしました。感謝を申し上げます。


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