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Channel: ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
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サッカー欧州選手権の本選出場国数拡大は、それなりに成功したようだ

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今回の欧州選手権で、やはり特筆すべきは、アイスランドのベスト8進出でしょう。アイスランドは、予選の段階でオランダに勝利していましたから、それなりの活躍をするのは不思議でありません。しかし決勝トーナメントでイングランドを倒したのはやはりすごい。

アイスランド代表は、2011年からスウェーデン人のラーシュ・ラーゲルベック氏が監督をつとめています。やはり氏の手腕というのも大きいのかもですね。彼は、スウェーデン代表の監督も務めましたが、1998年から2004年までは、トミー・セデルベリと共同監督でした。「共同監督」というのもあまり聞きませんが、ラーゲルベック氏は、戦術分析、セデルベリ氏は監督采配をしたとのこと。このような特異な体制が6年続いたのは、たぶん双方ともお互いを尊重していたからのことでしょう。それで現在アイスランド代表は、ヘイミル・ハルグリームソン 氏が共同監督をつとめています。ラ―ゲルベック氏は、今回の大会後に監督を引退するということですから、単独監督になるわけで、次のロシア大会でのアイスランドの活躍が楽しみです。

あとウェールズの準決勝進出もすごいですね。ウェールズ代表は、今まで大きな国際大会は、1958年のワールドカップスウェーデン大会に1度出ただけで、それでほかはすべて予選敗退でした。実際には、80年代は、リヴァプールで活躍したイアン・ラッシュマンチェスター・ユナイテッドの顔みたいな存在で、のちに代表監督もつとめたマーク・ヒューズ、世界的にも高い評価を得たGKネヴィル・サウスオールなどすごい選手がいて、86年大会などは本大会まであと一歩というところまで行ったのですが、スコットランドの後塵となり出場がかないませんでした。ウェールズのサッカーファンとしては、遂にというところかもしれません。なにしろ58年も前の話ですから。

さて、もともとそれなりにいい選手を生み出してきたウェールズはまだしも、アイスランドのサッカーというのは、かつてはほぼ欧州のアウトサイダーと言って過言でない存在感と実力しかなかったわけで、今回の躍進は、やはり驚きですね。2014年のワールドカップでも、プレーオフまで行ってクロアチアに敗れたくらいで、その時点でそれなりの実力があることはわかっていましたが、まさに予選でオランダを2試合負かしたというのがまぐれでないことを証明したわけです。そしてこれは、欧州のサッカーが弱い国に、大きな希望をもたらしたのではないでしょうか。

なにしろアイスランドの人口は、Wikipediaの国の人口順リストドのページによりますと、2015年の推計人口で32万人強です。この数は、日本の都道府県どころか政令指定都市の人口にもまったく及ばない。Wikipediaの日本の市の人口順位のページによりますと、2016年6月1日現在の人口でだいたい一緒なのが、法定人口では、越谷市、特別区の新宿区、秋田市が32万人台です。これらの人口よりは、バルト3国、キプロスやルクセンブルク、マルタなどの方が人口が多いわけで、強化すれば、こういた国々が欧州選手権に出場することも夢ではないのかもしれません。今あげた国は、なかなか国際大会の予選でも勝つのが厳しいというくらいの実力ですが、これだって今後の強化次第で侮れない実力をつけてくるかもしれないのです。

もちろんアイスランド人は、肉体的に恵まれていて、スポーツに秀でた国民なのかもしれません。アイスランドのハンドボールチームは、北京五輪で銅メダルを取ったくらいの実力です。しかしそれにしても、やはりサッカーのナショナルチームの歴史を大きく変えるすばらしい実績です。

それで上の決勝トーナメントの表を見ますと、あとスロヴァキアが初出場です。この国は、チェコスロヴァキア時代にワールドカップで準優勝(1962年)、76年には欧州選手権で優勝しているくらいで、アイスランドと同一には語れませんが、予選リーグ敗退のアルバニアも、今まではとても国際大会に出場できる力はありませんでしたが、コソボ出身者や海外在住の移民、亡命者の子弟が力をつけてきて今回の出場を勝ち取ったわけです。2016年からコソボ代表がFIFAで認められることになりましたので、アルバニア代表は厳しくなるかもですが、ここらあたりは今後の推移を見守りたいと思います。

そう考えると、やはり本選参加国数拡大は、今回の結果、この記事執筆時点では、決勝の結果はわかりませんが、フランスとポルトガルという強豪国同士の決勝ですから、この記事の趣旨には関係ないとして、それなりの成果があったということですかね。ワールドカップも、1998年から24か国→32か国になり、日本の出場もそれによってだいぶ楽になりましたが、出場国数を増やすことによって懸念されるのが、レベルの低い国が参加して大差の試合が出ることですが、今回の欧州選手権は、現段階予選リーグ36試合中、3点差がついた試合が3試合、決勝トーナメントでは、3点差が2試合、4点差が1試合です。決勝トーナメントの方が、むしろ3点差以上ついた試合の割合が大きいのは、つまりは本気を出してきているかどうかということでしょうが、今回は24チーム中16チームが決勝トーナメントに進めるルール(ワールドカップの、86年~94年までの3大会と同じ形式)ですので、チーム力が若干落ちるチームが決勝トーナメントに進んでいる事情があります。いずれにせよ各代表チームのレベルがだいぶ上がっているわけです。昔のワールドカップでは、1974年大会でユーゴスラヴィア対ザイール戦が9-0でユーゴの勝ちだとか、82年大会でハンガリー対エルサルバドルが10-1でハンガリー勝利、最近でも2002年大会のドイツ対サウジアラビアが8-0といったスコアだったこともありましたが、最近ではそのようなこともなくなりました・・・いや、前回のワールドカップでの、ドイツ対ブラジルみたいな試合もありますが、あれは決勝トーナメントのしかも準決勝ですから、レベルうんぬんの話ではないでしょう。

欧州選手権は、16か国の出場に拡大された96年大会(それ以前は8か国)からを見ても、予選、決勝31試合(予選リーグが4チーム1リーグ6試合で24試合、決勝トーナメントが7試合、3位決定戦なし)で、3点差の試合が5試合(すべて予選リーグ)、00年大会が、3点差以上が4試合(3試合予選リーグ、決勝トーナメントで5点差の試合あり)、04年が3点差以上4試合(予選リーグ3試合、1試合5点差、決勝トーナメント1試合)、08年大会が3点差4試合(予選リーグ3試合、決勝トーナメント1試合)、12年大会が3点差以上3試合です。予選リーグが2試合(1試合4点差)、決勝トーナメントが、これが何かと話題になった決勝での4-0でスペインがイタリアを破った試合です。

それで今回は、まだ決勝が戦われていないのでわかりませんが、現段階4点差の試合がないので、そう考えると、規模を拡大しても、明らかに各チームの格差が縮まっているのかなという気がします。もちろん予選リーグの戦い方が、そんなに思い切って点を取って、自分たちの手のうちをさらすことはないというようになったこともありかもですが、規模の拡大によって平均のレベルが下がったという心配は、そんなになさそうです。

欧州選手権の規模拡大は、つまりは欧州選手権がビッグビジネスになったということですが、サッカー振興のための意味合いも大きいわけで、上にあげたアイスランドやウェールズ、アルバニア以外にも、北アイルランドも80年代2回ワールドカップに出たりとわりと強かった時代もあったのですが、それ以外はあんまり活躍できなかった(だからジョージ・ベストも国際大会出場はかないませんでした)わけで、北アイルランドでサッカーをする少年たちにも何らかの希望が出て来たのかもです。

そうすると、今回の規模拡大は、それなりに、まずまず成功したのではないでしょうか。日本もワールドカップ常連国になったことで、日本人のサッカーへの関心が格段に上がりました。欧州では、自国リーグや自分の国のナショナルチームより、プレミアやエスパニョーラの方の結果がはるかに関心があるという人が多いのかもですが、それにしたってナショナルチームに関心が集まれば、サッカー振興の大きな助けになるというものです。

ラグビーの話ですが、日本のラグビーが決定的に人気をなくした理由の1つが、95年のRWC南アフリカ大会での、ニュージーランドに17-145で負けたことです。なにしろWikipadiaラグビー日本代表にも、「145失点の屈辱」として紹介されているくらいです。あまりに負けると、やはり恰好はつきませんし、ファンも失望します。なおラグビーも、まだ私も研究途上ですが、この時のようなすごい点差は、その後はありませんね。たぶん世界的にラグビーのレベルが上がっていて格差も無くなってきているのかもです。

この記事執筆時点で決勝の結果はわかりませんが、スポーツについてはこれからもこだわっていきたいと思います。


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