前に米国大統領選挙で、民主党・共和党両党候補がとった州の図をご紹介したことがあります。2012年の前回の大統領選挙の際ですから、もう4年前です。
それでその図からわかることは、東部、西部、五大湖周辺の州などは民主党の候補がとることが多く、その他中西部や南部は共和党の候補がとることが多いということです。昨今の大統領選挙はだいたいにおいてそんなに極端な差がつかないので、ほぼこの構図が維持されます。極端な例では、72年の大統領選挙では、現職のニクソンが民主党のマクガヴァンに圧勝して、マクガヴァンはマサチューセッツ州とワシントンDCのみしか取れない(地元のサウスダコタ州ですら負けました)という大惨敗でしたが、最近はそこまでの差はつかない選挙になっています。
で、今回の選挙での選挙人獲得状況をお見せします。引用は、Wikipediaの2016年の選挙結果より。
この図自体をみますと、だいぶ共和党の取っている州の面積が多いですが、実際の投票数は、赤字が共和党、青字が民主党で見ていただきますと、
獲得選挙人 304 227
勝利州数 30 + ME - 02 20 + DC
得票数 62,979,636 65,844,610
得票率 46.0% 48.1%
というわけで、得票数も300万票ちかくヒラリーさんのほうが上で、投票率も2.1%もヒラリーさんが上回っているのに、選挙人獲得数で敗れてヒラリーさんが負けるというなんともトホホな結果になったということです。参考までに、私が作った1960年の選挙からの民主・共和両党の得票率の結果と推移の票をご覧ください。
こうやって見てみると、ここ最近は、こと大統領選挙に関しては民主党が強いですね。共和党候補が得票数で上回ったのは、1992年の選挙からでは2004年の選挙以外ないわけです。連邦議会は、最近は共和党のほう優勢なんですけどね。
そこでちょっとカリフォルニア州を見てみましょう。カリフォルニアは、かつてはロナルド・レーガンが州知事で大統領にもなったので共和党が強い時代もありましたが、昨今は民主党がだいたい大統領選挙では勝っていますし、知事選も、かつても知事を務めていた民主党のジェリー・ブラウンが勝っています。今年の選挙でも、875万票対450万票弱でヒラリーさんが勝ったくらいで、ほぼダブルスコアで差がついています。民主党が勝った図です。赤、青の関係は他と同じです。
これはだいぶ票差がついて民主党候補の勝ちでしたが、2010年の州知事選の図をご覧ください。
だいぶ赤の面積が大きいことがわかります。下は2014年の選挙です。
どちらもジェリー・ブラウンの勝ちですから、民主党候補のほうが票が多かったわけですが、しかし共和党候補の勝った地区のほうが面積は上回っています。つまり大統領選挙と同じ構図です。都会は民主党が強く、田舎は共和党が強いという構図があります。
それでなんとなく私が思い出すのが、映画「イージー・ライダー」で、主人公たちや仲間の弁護士を殺害する米国の姿です。で、この映画が撮影された1968年は大統領選挙が行われた年で、リチャード・ニクソンとヒューバート・ハンフリーが戦い僅差でニクソンが勝ちましたが、実は独立系の候補として、ジョージ・ウォレスが南部の5つの州で勝利する健闘を見せました。当時のウォレスはアラバマ州知事で、自他ともに認める人種差別主義者でした。ウォレスが出馬しなければ、もう少しニクソンが大きな票差で買っていたかもです。1968年の選挙結果です。
紫が、ウォレスが取った州です。
それで、「イージー・ライダー」の主人公たちはルイジアナ州で殺害されたという設定のようですので(食堂のシーン、ラストでトラックから撃たれるシーンは、ルイジアナでロケされました)、まさに米国の暗部(いわゆる深南部と呼ばれる部分をふくむ)を代表する部分で彼らは殺されたわけです。
そして、これは前にも書いた話ですが、日本人に限らず、世界の人間が好きな米国、あこがれる米国は、だいたいにおいて民主党が強い米国です。ハワイからカリフォルニア、ニューヨーク、マサチューセッツなど民主党の牙城と思われるところはだいたい外国人観光客が多いし、ビジネス、留学、その他多くの外国人が訪れます。逆に死刑が多いテキサスとか、共和党が強い州は、あまり外国人が好きな米国ではありません。
20世紀後半でも民主党は、リンドン・ジョンソンがテキサス出身であったくらいで、わりと南部で強い時代があったのですが(上の68年の選挙で民主党がテキサス州で勝ったのは、たぶんジョンソンの影響力だったと思われます)、最近は南部は共和党が強くなっています。民主党は西部と東部で強い政党であるという時代です。
民主党にそんなに期待するというわけにもいきませんが、でも基本的に民主党の大統領候補のほうが共和党よりは優秀だとは思います。優秀な人間が必ずしも勝てないというのは、選挙というのはそういうものだとは思いますが、それも「どうもなあ」です。ブッシュの父親とデュカキスなら、デュカキスのほうがはるかに優秀ですが、しかし選挙は(なぜか)ブッシュの父親が勝つとか、そういう愚にもつかない光景がいろいろ出てきます。それもどうかです。
さてこっから先は、まったくもって主観的かつ感情的な意見なので、私も選挙の結果が出るまでは書けなかったのですが、私は今回の大統領選挙は、皆様のご想像の通りヒラリー・クリントンを応援していました。私が彼女を応援していたのは、彼女がトランプよりはまともな政治家だと考えていたことが第一ですが、それ以外に、そういった話とは次元の違う個人的な事情があります。つまり私は、彼女の本や彼女の話す英語で、英語の勉強をしていたからです。
Living History (English Edition)
[Living History] (By: Hillary Rodham Clinton)
彼女の書いた本や、彼女が吹き込んだ朗読で、私はずいぶん英語を勉強しているわけです。そうなると、人情としてやっぱり彼女に勝ってほしいじゃないですか(苦笑)。
たとえば、それはお前の偏見といわれれば「ごもっとも」ですが、トランプやブッシュの子どもの演説なんかで英語の勉強なんかしたくないよねえ(笑)。フランスの政治家だって、ドゴールやシラクやミッテランやオランドの演説なら勉強する気になるけど、サルコジや、まだなっていないけど、ルペンの娘が仮に大統領になったら、あんな人間の演説なんか聞きたくない(笑)。これは日本だって、安倍晋三などもご同様。あんなやつ、顔も見たくないし声も聞きたくないわけです。
ヒラリーさんが当選していたら、彼女の大統領就任演説なんかを繰り返し聞いて勉強したいと思いますが、トランプの英語で勉強する気にはなりません。これは、2020年の大統領選挙で、まともな候補の勝利を祈るしかないんですかね。
なお、「イージー・ライダー」のロケ地情報は、こちらのサイトを参照しました。感謝を申し上げます。「めまい」の記事の際にお世話になったサイトさんです。