よかれあしかれ、LCC(格安航空会社)なくして現在の旅行(国内、海外問わず)は考えられませんが、そのLCCについて景気のいいニュース、悪いニュースが飛び込んできました。では景気のいいほうから。
中川 雅博 :東洋経済 記者 2017年02月12日
片道1.3万円!ハワイ空の旅にLCC殴り込み エアアジアが大手の牙城で「価格破壊」へ
(前略)
「エアアジアXは長距離旅行を大衆化するために設立された。(旅行者からの期待に)地域最安値でお応えしたい」。2月10日、大阪・難波で開かれた記者会見でベンジャミン・イスマイルCEOはそう抱負を述べた。関空発が月曜、水曜、金曜、土曜という週4便の運航となる。80%台半ばの搭乗率を目指すという。
JALの3分の1の価格でハワイへ飛べる
気になる運賃は、2月26日までの就航記念キャンペーンで片道1万2900円(往復2万5800円)。JALのホノルル線が最安で往復7万5000円だから、およそ3分の1の価格になる。イスマイルCEOは記念価格の終了後も「基本的には大手航空会社の3割の価格を目指す」としており、大きく変わることはなさそうだ。
(中略)
大手のフルサービス航空会社(FSC)とエアアジアXはどこまで競合することになるのか。海外出張で利用する人の多いビジネス路線とは異なり、ハワイのようなレジャー路線は価格競争に陥りやすい。ただアジアの近距離路線と大きく異なるのが飛行時間だ。ホノルル線は片道約7時間。この時間をどう快適に過ごしたいかで客の選び方は変わる。
FSCとLCCの違いが如実に表れるのが、座席だ。近年FSC各社はビジネスクラスのフルフラット化やプレミアムエコノミークラスの新設を急速に進め、単価の高い座席の比率を上げ収益性の向上を図っている。
(中略)
実はエアアジアXにも1機377席あたり12席の「プレミアムフラットベッド」と呼ばれる高級クラスがある。運賃は通常座席の5倍超。先述のホノルル線記念価格では片道6万9900円に設定されている。座席はフルフラットではなく、無料で提供される機内食はFSCのエコノミークラスと同程度だ。
残りの365席はFSCのエコノミーよりもさらに狭い通常座席だ。そして機内食は有料。こうした違いが低価格の可能な要因の一つだが、旅行客は「座席格差」をどう受け止めるのか。前出したハワイ州観光局のヴァーレイ局次長は「将来リピーターになってもらえる若年層の取り込みを期待している」と話す。ハワイを訪れる日本人観光客のうち、6割はリピーターだ。ただその大半は40代以上。エアアジアXが大きく価格を下げることによって学生や若手社会人の需要を喚起できるかがカギとなりそうだ。
(後略)
私は背が高くて肥満体なので、7時間をLCCのエコノミーで過ごすのはかなりの難行苦行ですが、しかしこの価格は確かに魅力的ですね。飛行機なんて我慢しちゃえばどってことないんだから、浮いた金を現地で使ったほうがよっぽどいいというものです。現段階ハワイに行きたいとは思いませんが、でもLCC利用というのも確かに選択肢に入れてもいいかなと思います。
ただ日本⇔ホノルルというのは、ロンドン⇔ニューヨークなどと同様、LCCとしてはほぼ最大限の距離かもしれませんね。機内食がつかないとなると、弁当を用意するか、高いの覚悟で買うか、がまんするか。水は用意したほうがいいと思いますけどね。この辺りは自分なりの判断をしなければいけません。なおLCCは、酒の自弁での持ち込みは禁止しているところが多いみたいですね。なお私は、飛行機の中で酒を飲むのはあまり好きでない・・・なんて言っているわりには、フルサービスのフライトではいつも飲んでいるな。ごめんなさい、好きでないというのは撤回します。
それでは次に、景気の悪い話を。同じく東洋経済から。
>LCC「バニラ」が赤字、過熱するアジア航空競争
旅客数は増えているのに単価が大幅下落
中川 雅博 :東洋経済 記者 2017年02月08日
「第3四半期までの決算はぎりぎり赤字になってしまった」
航空大手ANAホールディングスの平子裕志CFO(最高財務責任者)は1月27日の決算会見で、傘下のLCC(格安航空会社)バニラ・エアの業績をそう表現した。数千万円単位の赤字だという。前2015年度は第3四半期までで11億円の営業黒字が出ていたことを考えれば、大きな減速である。
最大の要因は、バニラの主戦場である台湾と香港の両路線が供給過多に陥っていることにある。バニラが現在運航する国際線7路線のうち、台湾路線は成田―台北(桃園、以下同)、成田―高雄、関空―台北、沖縄―台北の4つで合わせると1日最大7便となる。また、香港路線は成田―香港の1つで1日2便だ。つまり競争の激しい路線の割合が高い。
台湾・香港路線で競争が熾烈に
航空機を増やして新規路線を設けた結果、バニラはこの第3四半期までで旅客数が前年同期比約18%増となった。だが運賃下落が著しく、単価は同2割以上落ち込んでいる。
2015年度は通期で売上高217億円、営業利益は約15億円となり、設立以来初めて黒字化を達成した。今2016年度は当初、営業利益を30~40億円と大幅な増益を見込んでいた。ただ第1四半期(4~6月期)で4億円の営業赤字を出し、上期(4~9月期)では夏の書き入れ時があるため8億円の黒字となったものの競争激化の影響で想定に届かず、中間決算時に通期予想を10億円へと下方修正した。そして10~12月の落ち込みが激しく、第3四半期累計で再び赤字となった。
(中略)
台湾と香港の路線はどれほどの競争になっているのだろうか。バニラが運航する路線でいえば、成田―台北線にはほかに現在大手のフルサービスキャリア(FSC)6社とLCC4社、関空―台北線にはFSC5社とLCC3社、成田―香港線にはFSC5社とLCC2社が就航している。多くの場合1日複数の便を飛ばしており、それだけ供給座席量は多い。
(中略)
同じ台湾勢では、大手のチャイナエアラインが昨年夏に成田―台北線を1日4便から3便へと減便した。また、米国のデルタ航空は今年5月に同路線を運休する予定だ。
(中略)
一方で香港路線は供給過剰の状態が続きそうだ。バニラが1日2便運航する成田―香港線は特にその傾向が顕著で、中国・海南航空傘下の2社が勢いづいている。LCCの香港エクスプレスは昨年10月に1日2便から3便へと増便。FSCの香港航空は昨年6月に1日2便で新規参入したうえ、11月には早くも3便へと増便した。バニラとしてはまず「マーケットシェアの確保を優先したい」(五島社長)考えだ。
2015年度はバニラ、ピーチ・アビエーション、ジェットスタージャパンという日系LCC大手がそろって営業黒字となり、いよいよLCCが「本格離陸」するかに思われた。ただバニラの現状を見ればわかる通り、需給バランスなど外的変化からモロに影響を受けてしまう。LCCの基盤はまだ確立されたとは言えない。
バニラは昨年12月に同社初の海外リゾート路線である成田ーセブ線を就航させた。「話題性があり、いいスタートを切っている」(五島社長)。国内でも、成田―奄美大島線の就航で島の観光が盛り上がった。3月からは関空からの運航も始まる。既存路線が厳しい中で、新路線の成功がより一層求められている。
台湾や香港は、だいぶ便数、座席ともだぶついているようですね。バニラエアも、香港便は、5月の連休後は1日1便になるらしい。
まあ当方としては、安い価格の飛行機に乗るのが一番いいのですが、バニラも前に乗ったソウル便は撤退しちゃいましたしねえ。あれ価格も時間も悪くなかったんだけどね。香港便も、残るフライトも、けっこういい時間に飛んでくれるので、私みたいな人間としてはありがたいのですが、これも果たしてどうなるんですかね。
いずれにせよLCCは、私のような旅大好きな人間にとってはやはり大変ありがたいものです。これからも、LCCの動向には注目していきます。