過日こんな記事を読みました。
>拉致事件は防げた? 横田めぐみさん拉致疑惑報道から20年
AbemaTIMES 2/26(日) 20:54配信
拉致事件は防げた? 横田めぐみさん拉致疑惑報道から20年
今から20年前の1997年2月3日、横田めぐみさんの拉致疑惑が報道された。2002年に小泉総理が北朝鮮を訪問し拉致被害者5人が日本に帰国。しかし、日本政府が第一号の拉致被害者に認定したにも関わらず、日朝首脳会談で生死が伝えられなかった人がいる。石川県出身の久米裕さん(当時52歳)だ。
高校を卒業後、建設、運送、金融など職を転々とした久米さんは1976年、東京・三鷹市役所で警備員として働いていた。北朝鮮工作員の協力者で金融業を営んでいた在日朝鮮人のA社長から金を借りていたという。
ある日、A社長は「密貿易で大儲けするうまい話があるんだ。ひとつ乗らないか?」と久米さんを誘った。金に困っていた久米さんは迷わず快諾。9月19日の午後2時頃、石川県能登町宇出津の拉致現場付近にある旅館にA社長と久米さんが到着。しかし、旅館の女将が、押し黙ったまま食事をする2人に異様な雰囲気を感じ取り警察へ通報。その後、旅館を出た2人が黒のアノラックに作業ズボンをはいており、それを不審に思い警察に2度目の通報をした。
久米さんが海岸で連れ去られ、旅館に戻ったA社長のところに金沢の県警本部公安課が到着。職務質問し、外国人登録証の提示を求めたが拒否したため、A社長は外国人登録法違反で現行犯逮捕された。
公安当局の報告書によるとA社長の自宅からは「乱数表」や「換え字表」が押収された。さらに北朝鮮の工作員から「45歳から50歳の独身の男を拉致せよ。断ると北朝鮮に住む妹のためにならない」と脅されていたことも判明。
捜査の結果、北朝鮮の関与が明らかになったため、捜査当局はA社長を、人を騙したり力づくで国外へ連れ去った者に適用される国外移送拐取(かいしゅ)罪で立件することを検討した。しかし、裁判で乱数表などが公になることや、久米さんが好きで北朝鮮へ行ったのか騙されて行ったのかの「出国時の意思」を確認できないことを理由に起訴を見送った。
さらに、2003年1月、警察庁は久米裕さん拉致事件に関し、A社長に指示を出していた金世鎬(キムセホ)工作員を国際手配。だが、その後の進展はみられない。
拉致問題をいち早く報道した元朝日放送プロデューサーの石高健次氏は「石川県警の公安課は霞が関の警察庁といろいろやり取りしていたと聞いているが、拉致についての意識がキャリア官僚にとって深刻ではなかったようだ。あの時代は拉致がとんでもないことというよりも、せっかく押収した乱数表が公になると、スパイ追跡の全容が見えなくなってしまう。スパイを捕まえるメリットを優先した」。乱数表などの解読により石川県警公安課は警察官にとって最高の栄誉である「警察庁長官賞」を受賞したが、その事実は伏せられた。
久米さんが無事なら今年で92歳になる。日本政府が北朝鮮による拉致事件であると認めた第一号事件であり、かつ捜査が最も北朝鮮に迫った事件。しかし、北朝鮮は久米さんについて「我が国に入った形跡がない」としている。
横田めぐみさんが拉致されたのは久米さんの拉致から2ヶ月。警察が事件の詳細を公表していれば、めぐみさんはもちろん、その後の拉致事件は防げたのかもしれない。(AbemaTV/AbemaPrimeより)
ちょっとこの記事読んでも「どうもなあ」ですね。40年以上前の事件について
>警察が事件の詳細を公表していれば、めぐみさんはもちろん、その後の拉致事件は防げたのかもしれない。
なんて書いたところでいまさらどうしようもないでしょう。当時の警察や検察の関係者も、みなすでに職場にいないですし。1976年に19歳だった人が2017年は60歳ですからね。ぎりぎり高卒新人で在職していた人もその年齢です。またその年齢の人はこの捜査にはたぶん関係していない。
というところでこの記事をやめてもいいのですが、では仮定としてこの事件が大きく報道されたとして、日本人拉致は防げましたかね。たぶん難しかったんじゃないんですかね。
なぜ日本人拉致が行われたかというと、工作員潜入のためというのが定説でしょう。あるいは海外で拉致された有本恵子さんらは、どうもよど号事件のメンバーの絡みで拉致されたらしい。そういった中でも横田めぐみさんの拉致は、彼女に工作活動を見られたかどうかはわかりませんが、たぶんに偶然の要素で拉致された可能性が高い。そうなると、報道したからといって拉致が行われなかったというものでは必ずしもないと思います。たぶんまるっきり関係ないというべきでしょう。
それで上の記事で扱われている久米さんの事件ですが、上の記事にもありますように、これはもともと北朝鮮の工作活動の協力者である在日朝鮮人某が、本国から工作活動の関係で日本人の誰かを紹介してくれと言われて、それで先方の条件(身寄りがないとか)に合致する久米さんに声をかけて石川県で引き合わせ、久米さんは工作員に連れられて日本海に消えたという事件です。
この事件では、在日朝鮮人某が逮捕されましたが(つまりは日本警察は、かなり前の段階で彼らをマークしていたわけです。
上の記事では、
>旅館の女将が、押し黙ったまま食事をする2人に異様な雰囲気を感じ取り警察へ通報。その後、旅館を出た2人が黒のアノラックに作業ズボンをはいており、それを不審に思い警察に2度目の通報をした。
なんて書いてありますが、つまりは旅館の人が警察の協力者だったということです)、検察は某を起訴するにいたりませんでした。その理由はいろいろでしょうが、1つには、久米さんは自分の意思(かどうかわかったもんじゃありませんが)をもって出国した可能性があるという点があります。彼はだまされたのかもしれませんが、それは第三者には判断できません。某が「それは自分は知らん。行ったとしても、それは久米さんの意思だ」と強弁しまくれば、たしかに裁判にするのは難しい部分があったかもです。
もっともそういうことを言い出したら、海外移送拐取罪なんてものが成立する余地は非常に小さくなるんじゃないのという気はします。
あとは、日本警察の手の内を北朝鮮側にさらけ出したくないとか、結果として(かどうかもわかりませんが)日本警察が久米さんを見殺しにしたという点があり、これが裁判で突っ込みまくられれば(戦闘的な弁護士なら絶対そうします)はなはだしくよろしくないことになりかねないということもあるかと思います。
そう考えると、これはどうもマスコミによって大々的に報じられるのは難しかったし、また横田さん他の拉致と比べてもかなり性質が異なるので、報道されてもそれによって拉致がどうしたこうしたなんてことはなかったんじゃないのと思います。
こうすれば・・・というのを仮定として考えるということがよくありますが、拉致問題の件でこの事件を仮定としてとらえても、横田さんその他の拉致を論じるのはそぐわないと思います。読者の方々のご意見はいかがでしょうか。
なお北朝鮮側は、久米さんの入国について確認していないとしています。たぶん私は、久米さんは日本海に放り投げられるかどうかして殺されたのだと思っています。