ここ最近将棋についての話題が割と多いですが(しかしそれがあまり良い話題でないのがうれしくないですが)、これは時代の変化を象徴するものかと思います。旧聞ですが記事を。
>森内がB級1組へ降級 A級22期
毎日新聞2017年2月26日 00時51分(最終更新 2月26日 05時50分)
佐藤天彦(あまひこ)名人(29)への挑戦者を決める第75期名人戦A級順位戦(毎日新聞社、朝日新聞社主催)の最終9回戦4局が25日、東京・将棋会館で指された。稲葉陽(あきら)八段(28)と森内俊之九段(46)の対局は、千日手による差し直しの末、稲葉が勝った。降級争いをしていた佐藤康光九段(47)が勝ったため、名人8期で十八世名人の資格を持つ森内が、22期(名人在位を含む)保ってきたA級の座を初めて失った。
第60期から第71期までは羽生善治王位(46)と名人位を分け合う存在だったが、第73期のA級で4勝5敗と、順位戦に参加して以来初めての負け越しを喫した。その後も不振が続き、前期は最終局で敗れると降級の可能性があった。今期も開幕から4連敗と不振だったが、年明けから不戦勝を含む2連勝で残留の可能性を高め、最終局に勝てば残留決定までこぎつけた。しかし、最終局で自身が敗れ、佐藤康が勝ったため降級が決まった。
千日手指し直し局に敗れた森内は、終局直後に報道陣から降級を知らされ、「今期だけでなく、ここ2、3期、内容も結果もあまりよくなかったので、結果は仕方がないのかと。(B級1組では)また新たな気持ちでやっていきたい」と話した。【山村英樹】
3年前私はこのような記事を書きました。
時代の変化と、2020年前後以降の羽生善治らの動向が興味深い上の引用記事に出てくる森内は羽生と同年齢、佐藤は1歳上です。記事にも年齢は書かれていますが、私はこの世代がA級順位戦でB級1組への降級が現実化するのは前の記事のタイトルにもあるように、2020年前後かなと予想していました。その記事で私は、中原誠の
>大山康晴先生も私も、50歳を過ぎるととたんに苦しくなりました。
という発言を引用したうえで、
>中原の談話にあるように、やはり「50歳」というのが大きな壁のようですね。それを乗り越えるのは、まさに中原、谷川レベルの棋士ですら非常に難しいというか大変だということです。そうなると、私が興味があるのが羽生善治の世代です。(中略)
ほかに、同じような年齢で抜群に強い棋士が何人かいる。彼らが、2020年ごろから先どれくらい活躍できるか(できないか)ものすごく興味があります。羽生らの世代は50歳前後の壁を破れるか破れないか、羽生は将棋史にのこる別格の実力者ですから、これはどうなるのかなかなか面白そうです。
と書きました。しかし17年で森内のような実力者が降級したのは、ちょっと意外というか早いなと思いました。同世代で、過日谷川浩司が不祥事の責任を取って辞任した新連盟会長に就任した佐藤も降級直前ですから、来年はかなり厳しいと思います。会長職を続けながら現役を続けるのは、谷川も語るように
>対局への影響は言い訳にならない。現役棋士として対局しながら運営にあたっていることで、応援してくれる方も多いと思う
というわけで、言い訳にはできないとはいえ苦しいことは確かです。
で、森内の談話が、3年前の谷川の談話とよく似ています。当時の谷川は、
>厳しい戦いが続いたので降級は仕方がない。残る対局でいい将棋を指して(B級1組での)来期につなげたい
と語っていて、結果は仕方ないと覚悟していたことがわかります。負けたのは非常に悔しくても、それが今の実力だと認めざるを得ないということでしょう。
そう考えると、50を過ぎて降級した谷川はやはりすごい棋士だし、いまだ複数(この記事執筆時点で3冠王)のタイトルを保持している羽生という人は、これをはるかに凌駕する特異な天才なのでしょう。将棋指しは程度の差はあれみな天才でしょうが、羽生の天才ぶりというのは格が違うのでしょう。
となると、45歳~50歳の間というのが大きな谷間なのかもですね。谷川は51歳、中原は52歳、米長邦雄は54歳でA級から落ちました。羽生はどうなるか、大山康晴のようになれるか。羽生以降の世代はどうか。私もそんなに将棋界の動向を追っているわけでもないのですが、これからも注目していきます。
ところで加藤一二三九段が引退ですね。彼についても後日記事を書きたいと思います。