あ、すみません。もっと早く記事にしなければいけなかったんですが、先日北朝鮮・拉致問題の記事を書いたので、そのつながりということで。故金丸信氏の息子である金丸信吾氏が、だいぶ以前の昨年10月に、「日刊ゲンダイ」で、次のようなインタビュー記事に登場していました。なお信吾氏は、金丸氏の次男でこの記事での紹介によると
>▽かねまる・しんご 1945年、山梨県生まれ。青山学院大卒。境川カントリー倶楽部社長。90年9月、父・金丸信元副総理が初訪朝し、自民、社会両党、朝鮮労働党の3党による日朝国交正常化交渉の「共同宣言」に署名した際に同行。その後、父の代理として訪朝を重ね、金正恩委員長の祖父・金日成主席とは7回、同父・金正日総書記とも2回、それぞれ会談した。宋日昊・朝日国交正常化交渉担当大使など北朝鮮要人と交流がある。
とのこと。
金丸信吾氏「拉致問題解決は国交正常化こそが一番の近道」 >公開日:<time datetime="2019-10-15 06:00:00">2019/10/15 06:00</time> 更新日:<time datetime="2019-10-15 06:00:00">2019/10/15 06:00</time>非常に興味深いインタビューで、拙ブログの読者の皆さまにも是非読んでいただきたいのですが、ここでは後半を紹介したいと思います。
>――日朝両政府が拉致被害者の「生死」をどう受け入れるのかが解決のポイントだと。
私は拉致被害者が生存していてほしいと心の底から思っています。とはいえ、そろそろ現実を見る時期に来ているのではないか。そうならないのは、日本政府が、北の説明が事実だった場合の家族会やメディアに対するシミュレーションを持っていないからでしょう。ただ、これはメディアにも責任があると思います。
――メディアの報道の仕方にも問題がある。
そもそも日本国内で拉致被害者の「生存説」が広まったのは、脱北者といわれる人たちの目撃情報です。「平壌で拉致被害者を見た」とかね。しかし、よく考えてほしいのは、脱北者が厳重な監視下にあった拉致被害者と遭遇する確率はほぼありません。仮に目撃したとしても、「この人は拉致被害者」と分かるはずがないのです。そういう真偽不明で、事実検証も不可能な話が「事実」として扱われ、報じられ、国民に植え付けられてきた面は否めません。
――拉致被害者の遺骨が偽物という報道も世論批判に火をつけた。
拉致被害者のものとされた遺骨は持ち帰られ、2つの民間組織に鑑定に出されました。いずれも結果は鑑定不能で、偽物とは断定されていません。それが、なぜかメディアでは偽物と報じられ、政府もいまだに否定していないのが実態です。
――遺骨が偽物でないのであれば、北は証拠を示すべきという意見もあります。
北はずっと拉致を認めず、全否定してきました。拉致自体を隠してきた国が、拉致被害者の埋葬場所を他者に明確に分かるようにするわけがない。理不尽で許せない話ですが、きちんとした墓誌も残していないでしょう。ただ、ここら辺に埋葬したということは認めていて、彼らなりに「これではないか」という場所で遺骨を収集したのでしょう。要するに北も確たる自信がないのです。
――安倍首相の「拉致問題を解決して国交正常化」という姿勢はどう見ていますか。
拉致は国家犯罪であり、許し難い国家暴力であることは間違いない。しかし、安倍さんの姿勢は順序が逆です。むしろ、私は国交正常化こそが拉致問題解決の一番の近道だと考えています。国交正常化すれば日本政府は平壌に大使館を開設できる。外務省や警察庁、防衛省の担当者を配置し、常駐すれば拉致の調査や、両国間で情報交換もスムーズにできるからです。
――北に対する今の強硬政策については。
私は北に対する圧力や経済制裁を否定するつもりはありません。強硬政策で拉致問題が一歩でも二歩でも前進するのであれば、結構なこと。しかし、安倍さんが強硬政策を始めてから、拉致問題は進まないどころか、むしろ後退している。つまり、圧力や経済制裁で拉致問題は解決しないと考えています。
――強硬政策は誤り。
関係を進展させるには、対話と協調しかありません。対話の重要性は米朝首脳会談でも証明されたはず。歴史をみれば、ああいう独裁体制の国が未来永劫、続くわけがない。かといって、ここ数年で崩れるわけもない。そうであれば、「ケシカラン」と拳を振り上げるばかりではなく、理解して付き合っていくしかない。隣国なのですから。
――安倍首相は拉致問題解決のために「あらゆるチャンスを逃さない」と言っています。訪朝の際に政府から親書を託す依頼や接触はありましたか。
何もありません。一民間人に親書を託すなど、国会議員としてのプライドが許さないのでしょう。そもそも、外交というのは、信頼が基本ですが、安倍さんは「対話と制裁」と言いながら、実際は制裁だけです。これでは、信頼関係は生まれません。今回の訪朝でも、帰国すると羽田の税関で参加者は皆、土産品没収です。数十、数百万円分の土産品であれば、経済制裁に反した行為と指摘されても仕方がない。しかし、500円の菓子や1000円の朝鮮ニンジン入りクリームを没収してどうなるのか。それでいて「無条件の首脳会談」は無理です。それに「前提条件なし」という表現も良くない。お茶を飲みに行くわけではあるまいし、無条件の会談は現実的にあり得ません。平壌宣言の精神に戻り、原点からもう一度話し合おう、と言えばいいのです。
――安倍政権は本気で北朝鮮問題を解決する気があると思いますか。
少なくとも私にはそう見えません。昨年10月末の訪朝時、私が個人的な提案として、超党派の国会議員が訪朝の意思を示した場合、あなた方(北)は受け入れるのかと質問すると、喜んで受け入れると答え、確約しました。そこで自民党の二階幹事長に「あなたが団長として超党派で訪朝してほしい」と頼んだのですが、二階幹事長は「官邸と相談」と言って、その後はウヤムヤ。北も「安倍首相の真の目的は憲法改正で、そのために拉致問題を解決すると言ってパフォーマンスしている」と見ていますよ。
――日朝関係進展のカギは何でしょうか。
これだけ拉致問題が長期化し、混迷してしまうと、もはや日朝関係解決の方法は見つからない。だから、私は北に対して米朝関係を進めた方がいいと言っています。米朝関係改善に重点的に取り組み、両国で平和条約なりが成立すれば、日本は米国に黙って従うでしょう。
これは、金丸氏もよくここまで発言したと思うし、また「日刊ゲンダイ」もよくこれを掲載したなと思いますね。私としては、金丸氏および「日刊ゲンダイ」に敬意を表したいと思います。
ただたぶんですが、こういう金丸氏の主張が「日刊ゲンダイ」というタブロイド紙に掲載されるようになったということ自体、ある程度「家族会」とか「巣食う会」の神通力がなくなってきたということでもあるのでしょうね。私の知る限りですが、私のような素人ネット論客以外で、大要拉致被害者が亡くなっている可能性を現実問題として考えないといけないと述べる人は、そんなにいません。和田春樹氏などごく少数かと思います。和田氏のご意見については、こちらをお読みになってください。
それで金丸氏のおっしゃるこちらの件は大きなポイントですね。
>私は北に対する圧力や経済制裁を否定するつもりはありません。強硬政策で拉致問題が一歩でも二歩でも前進するのであれば、結構なこと。しかし、安倍さんが強硬政策を始めてから、拉致問題は進まないどころか、むしろ後退している。つまり、圧力や経済制裁で拉致問題は解決しないと考えています。
金丸氏のこちらのご発言は、私のこちらの記事にもつながります。
米国のキューバへの対応から、日本の北朝鮮への対応を考えてみるこの記事で私が指摘しているように、
>北朝鮮へ経済制裁ほかの圧力をかけることにより(屈服させることで)、北朝鮮から譲歩を勝ち取り、拉致被害者帰国を実現したしこれからも実現することを可能とする、みたいな主張をしています。しかし私は、そのような主張を立証する第三者の発言その他を読んだり見たりした記憶がないですね。
私はいままで、拉致問題に関してさまざまな本を読みましたし、新聞、雑誌、ネットなどのさまざまな記事を読みました。また拉致について特集したテレビ番組などもたくさん見ています。それで、それらの中で、上に書いたように、圧力によって北朝鮮側の譲歩を勝ち取れたということを具体的な証拠をもって説明した記述や報道は、私は知らないですね。巣食う会や家族会、その関係者や支持者(櫻井よしことか)がそのような主張をしているのは数限りなく読んだり見たりしていますが、その主張を立証するものは知りません。
というわけです。予想の範疇でしかありませんが、この記事を書いて4年弱経過した現段階、「このような証言(記事、番組)があった」という指摘など皆無です。
ただけっきょくこういう話は、bogus-simotukareさんがご指摘のようなことになってしまうかと思います。
>ただしこの主張は「拉致解決を最優先するならば国交正常化が必要」と言う話です。
つまり「拉致解決よりも大事なもの(打倒北朝鮮?)がある」なら話は別です。
そして「拉致が解決しようとも、拉致解決よりも大事なもののために国交正常化など出来ない」というのはもはや「客観的に正しい、正しくない」と言う問題ではなく「価値観の問題」「主観的な問題」です。「1プラス1は2」のような客観的な話ではない。
それが「正しいと思う人間(金丸氏や俺)」にとっては「正しい」し、「間違ってると思う人間(救う会や家族会)」にとっては「間違ってる」(まあ大抵の政治問題はそうでしょう)。
ただし「国交正常化しなくても拉致は解決する」というのは「事実認識の問題」として「事実に反する間違い」だと思います。
巣食う会が、打倒北朝鮮を優先させるというのは、いいとは思いませんが、理解はできます。連中は、そういうことにしか興味はないでしょう。しかしですよ、家族会がそのような巣食う会に完全従属して、国交どころか連絡事務所の設置すら絶対反対というのは、これはいったいどういうことなんですかね。いつも出す疑問ですが、巣食う会同様、拉致被害者なんかどうでもいい、北朝鮮現体制の打倒こそがすべてである、ということなのか。あるいは、そんなことすらどうでもいい。自分たちの今のスタンス(外務省ほかの役人、政治家らが最大限自分たちを丁重に扱ってくれる、そういう立場)を失いたくないというのでしょうか。たぶんそういうことなのでしょうが、前者については、それって現実性がないじゃないですか。私が何回もご紹介する反北朝鮮の連中がほざいた北朝鮮体制の今後なんてものは、多くの人間がさほど遠くない時期に北朝鮮現体制は崩壊するなんて主張していましたが、そういう主張をした人物が北朝鮮崩壊前に死ぬ始末です。まったく無様な話です。後者については、馬鹿もいいかげんにしろというレベルでしょう。
20年前の、対北朝鮮強硬派の考えや意見を再度ご紹介(なにが「常識人の常識」だか) 北朝鮮が崩壊する前に亡くなったという話(恵谷治氏)(追記あり)それで、上の金丸氏のご意見について家族会の人たちに「どう思うか」と聞いたらどうなるか。たぶんお答えはないんでしょうねえ。拉致被害者の有本恵子さんの父親は、
>この6年半、拉致問題は進んでいないが…、北朝鮮にモノが言える政治家は安倍首相しかいない
と語ったそうですが、上の金丸氏の発言
>北も「安倍首相の真の目的は憲法改正で、そのために拉致問題を解決すると言ってパフォーマンスしている」と見ていますよ。
についてはどう考えるのか。金丸氏の発言は間違っている、北朝鮮の代弁者だとでもいうのか。たぶん公然とそう発言はしなくても、スタンスとしてはそういう態度を続けるのでしょうが、金丸氏の発言と有本氏の発言、どっちが現実性があるのか。議論するだけ野暮でしょう。
いずれにせよ、金丸氏のこのようなご意見が日本全体にもっと知れ渡り賛同されるようになればいいと思います。賛同されなくても、けっこう多くの日本人がそれなりにこのような意見に耳を傾ける時代にはなってきたのではないかなと、ここは前向きに考えてもいいのではないでしょうか。
なお、拉致問題に関しては、もう1つ書きたいネタがあるので、今週中に記事を発表したいとおもいます。