報道によれば、9月14日に行われるという自民党総裁選挙は、菅義偉内閣官房長官でほぼ決まりのようですが、仮にそうなるとして、私が興味のあることの1つが、では北朝鮮による拉致被害者家族連絡会はどう出るかということです。
菅氏は現在拉致問題担当大臣も兼ねていますので、仮に彼が首相になったとしても、おそらく安倍政権における北朝鮮対応、拉致問題対応からそんなには外れないのではないかと考えます。いや、もちろんわかりませんけど。ただ今回出馬する石破茂は、平壌における連絡事務所開設を訴えています。
【石破氏出馬会見】(4)拉致問題解決へ「平壌で連絡事務所を開設」
>前回の総裁選挙でも申し上げた。東京、平壌で連絡事務所を開設する。それは政府として公式に、責任をもった立場で拉致問題をどのように解決するかということに対応していかねばならないからだ。拉致問題の解決。安倍政権で実現できなかった大きな課題の一つだ。政府として主体的に取り組んでいく。
上の引用であるように、石破は前回の総裁選でもこれを述べています。ってことは、彼はこの件でそれなりの考えをもって対応する気なんですかね。
いや、これも拙ブログでもご紹介しましたように、日本政府も北朝鮮に平壌に連絡事務所を置くという打診をしているという報道もありました。これが2018年の10月にされた報道で、これは上で石破が言及する前回の総裁選のすぐ後のものです。
もし実現するのなら大変いいことだ(平壌に、日本の連絡事務所を開設する動きがある)(あともう一つ、荒木和博の真意を見きわめたい)当時の報道を再引用しますと、
>2018.10.15 05:01
平壌に連絡事務所設置、日本政府が北朝鮮に打診
北朝鮮による日本人拉致問題を巡り、日本政府が北朝鮮との非公式接触で、被害者帰国と真相解明を図るため平壌に連絡事務所を設置したいとの意向を打診していたことが14日までに分かった。
連絡事務所を拠点に交渉を続けながら、本人と確認された被害者を順次帰国させることも視野に置いているという。複数の日朝関係筋が明らかにした。また、2020年東京五輪・パラリンピックでの北朝鮮選手団の受け入れ協力や植民地支配を巡る「過去清算」の用意など、関係改善に向けた数項目の取り組み方針も伝えているという。
この報道が完全なガセネタならしょうがありませんが、でもさすがに政府でも、連絡事務所くらい平壌に設置しないとしょうがないよなあくらいの考えは、まともな人間なら持つでしょう。それで現在に至るまで連絡事務所なるものは設置されていませんが、やはりこういったことをきっちりやって行かないと、北朝鮮との交渉などとてもとてもできるものではないでしょう。
それで上の報道がある程度は事実を反映しているのであれば、それは首相の安倍晋三の意志であり、また菅氏が拉致問題担当相になったのが2018年10月2日からですので、上の報道の2週間前です。それ以前から内閣官房長官なのだから、どっちみち彼がこの件で蚊帳の外のわけはありませんが、菅氏が首相になったらその程度には動くのか。菅氏は、安倍政権のやり方を踏襲すると述べていますが、彼は次の自民党総裁選で勇退する可能性もあるし、選挙で負けて辞任することもあり得る。どのみちコロナウイルス対策で大忙しで、独自のやり方を発揮するまでにはいくらかのタイムラグが必要でしょう。おそらくですが菅長期政権にはならないと思いますが、ただ首相になるのなら、ぜひ連絡事務所の設置くらいはしてほしいですね。その可能性は低いでしょうが、しかしこれは、早く設置されればそれに越したことはない。北朝鮮には、理由はともかく(親から連れられて行ったのか、だまされて行ったのか、自分の意志で行ったのか、拉致されたのか、いちおう北朝鮮出国の自由はあるのか、それがないのか)何らかの事情で北朝鮮に滞在している日本人がいます。彼(女)らの中には、日本に帰りたい、あるいは一時的ででもいいから日本の土を踏みたいと考えている人たちがいるはず。彼(女)らの保護のためにも、連絡事務所の設置は有効でしょう。
が、しかしですよ、たとえば某右翼活動家はこういうわけのわからないことをほざく始末(このサイトは、先方の都合で現在閉鎖中の模様)です。
>拉致犯罪や国際テロを行い、国内で人権弾圧という言葉ではとても語れない収容所体制・密告体制を敷き、しかも麻薬から偽札まであらゆる犯罪に手を染めてきた国の大使館が、国交正常化したら治外法権の場として東京のど真ん中に置かれるのですよ。
いや、冷戦下でも、米国とソ連は、大使館を持ち合いましたから。あえていえば、この某右翼活動家が例として挙げているようなことは、日本が平壌に連絡事務所を置くことによるメリットとは比較にならないくらいどうでもいいことです。実際米国とキューバ、旧ソ連とイスラエルなど激しく対立しあっている(いた)国々でも、裏でいろいろ交渉、つながりはあります。最近イスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)が国交を樹立するというニュースが流れましたが、イスラエルとアラブ諸国だって、エジプトとヨルダンが和平を結んだあと新たなる和平を結ぶ国家は長きにわたって出ませんでしたが、言うまでもなくいろいろと交渉、付き合い、第3国を経由した交易などをやっています。特に湾岸諸国は、イスラエルと直接に領土問題などがあるわけではないので、可能ならイスラエルと和平を結びたいという意思は明らかです。
もっともそういうことを言い出せば、日本には朝鮮総連という事実上の北朝鮮の出先機関があるわけで、かつての日本政府や政治家は、それこそ自民党も社会党(当時)もうまく彼らと付き合っていたのですが、それをぶち壊しちゃいましたからね。それでほかにうまいルートがあるのかよというと、どうもないようなのだから、お話にもならないとはこのことです。ともかく対北朝鮮の交渉機関として、連絡事務所は非常に有効でしょう。
しかしここで出てくるのが、拉致被害者家族会なんですよねえ。横田めぐみさんの弟さんである横田拓也氏は、次のように述べます。
救う会:★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2019.05.07)家族会・救う会・拉致議連訪米4横田拓也さん訴え
>拉致被害者達を帰国させず、双方の国に事件究明の為と称する連絡事務所の設置や調査委員会の立ち上げと言う「聞こえの良い隠蔽工作」には絶対反対する立場を私達は貫きます。
いや、連絡事務所の設置は何ら隠蔽工作ではないでしょう。そういうものを一切拒否するなんて言う態度を取っていて、それで拉致問題が解決すればいいけどさ、けっきょく安倍晋三は何もできませんでした。いくら横田さんたちが安倍をかばったところで、それが厳然たる事実です。
それでですよ、仮に菅首相が実現したとして、菅首相が拉致問題にこれといって動いてくれなくても、家族会の人たちは、安倍同様「動かない人が批判したら卑怯だ」みたいなことをいうんですかね(苦笑)。それとも動いてくれないと罵るのか。あるいは、その逆に、連絡事務所設置に動いたら、やっぱり「裏切者」とかなんとか罵るのか。
そういう意味では、安倍晋三にぜひ平壌における連絡事務所設置をしてくれればよかったなと思いますね。そうなった場合の拉致被害者家族の反応が非常に興味深い。怒るのか、受け入れるのか、どうなのか(苦笑)。まあ安倍は、そんなことをするような人間でもないのでしょうが。
ともかく2012年12月以来、7年半強の長い年月にわたって1人の人間が首相を務めていたわけですが、それが変わるわけで、新首相の家族会への対応もそうですが、家族会も、新首相への新たなるアプローチを必要とします。やはり安倍晋三に対するものと態度が違うのか。このあたり私もまた観察していきたいと考えます。