例によって例のごとくの産経お得意の論法ですが、次の記事を。
【主張】ベルリン慰安婦像 河野談話の撤回が必要だ - 産経ニュース
そこで毎度おなじみの産経の主張を。
>像の台座には「第二次大戦中、日本軍はアジア太平洋地域の無数の少女や女性を強制連行し、性奴隷にした」と記されている。決議は、慰安婦募集の強制性を認めた平成5年の河野洋平官房長官談話を引用している。
このまま放置すれば、慰安婦とは強制連行された「性奴隷」であるという歴史の捏造が欧州の主要国ドイツで広まってしまう。到底看過できない。
河野談話を作成した際の日本政府の調査で強制連行を裏付ける資料は一切なかったことが明らかになっている。平成26年には朝日新聞が強制連行説の根拠となった「吉田証言」が虚偽だったと認め関連記事を取り消し謝罪した。
日本政府はこれらの経緯を広く発信し、像の撤去を実現させなければならない。虚偽が含まれ、日本を傷つけるだけの河野談話は白紙撤回すべきである。
いいかげん「河野談話撤回」なんていう実現性のない主張は引っ込めたらどうですかね。安倍晋三だって首相になる前、復活する前は、さんざんえらそうなことをほざいていましたが、けっきょくそれはできませんでした。いや、骨抜きにしようとはしたのかもですが、首相をやめたときも、「改憲」とは言っていますが、「河野談話撤回にむけて努力したい」「そのような方向でありたい」などという趣旨のことは述べていない。安倍としても、「改憲」のほうが「河野談話撤回」より可能性が高い、思い入れがあると考えているということでしょうが、ともかく安倍ですらほとんどできなかったことを今後の首相がするかというと、まず難しいんじゃないんですかね。
だいたいどうも産経は、意図的にそういうことをだまっていますが、河野談話を撤回したら、世界中から抗議が出て、慰安婦像がますますつくられることになるでしょうね。慰安婦像について、各国政府がそれを撤去させるための説得論法の1つが、「日本政府も河野談話という反省の弁を述べているので、そういうものを設置して挑発するのは逆効果である」という趣旨のことです。さすがにどこの国も、「従軍慰安婦なるものに日本政府は何の責任もない。よってそのようなものを設置するのは不当である」なんていう日本擁護はしていない。当たり前ですけど。産経新聞が主張しているようなことをまさか外国政府が主張するわけがない。それをやったのが、あの悪名高いワシントン・ポストに出した意見広告「The Facts」です(2007年)。それやったおかげでかえって安倍の立場が悪くなったわけです。まったくどうしようもない。
おそらく産経新聞とかの連中にとって「河野談話否定」というのはレゾンデートルのたぐいなのでしょうが、こんな勝ち目のないことしたってしょうがないでしょうに。産経は、具体的にこうすれば河野談話を撤回できるとか、撤回した後こうすれば慰安婦像の設置を阻止できるとかの見通しがあるのか。ないでしょ、そんなの。上に私が書いたように、「河野談話を撤回したら、ますます世界中に慰安婦像がつくられる」という主張に、それは間違っている。これこれこういう理由でそれはないとか反論できるのか。bogus-simotukareさんがお書きになっているように、
>慰安婦問題は「過去の問題」であり一度は自民党も「河野談話で非を認めた話」です。
ということです。安倍晋三が撤回に失敗したということを少しは重大視するべきです。
なおこの記事は、上に引用したbogus-simotukareさんの記事をヒントを得ました。感謝を申し上げます。