本来なら、オリンピック関係の議論は「スポーツ」のカテゴリーにすべきかもですが、昨今の状況はとてもスポーツの話ではすまないので、「社会時評」にします。
若干旧聞ですが、なかなかこれは、「よくぞ言ってくれました」ということじゃないですかね。記事を。
>「県民と選手を分け隔てする必要性はない」茨城県知事、五輪組織委の病床確保要請を拒否<新型コロナ>
2021年5月12日 14時37分
東京五輪でサッカー競技が予定される茨城県の大井川和彦知事は12日の記者会見で、大会組織委員会から選手専用の新型コロナウイルス対応病床の確保要請があったと明らかにし、「県民と選手を分け隔てする必要性はないので、お断りした」と述べた。
五輪開催の是非についても「必ずやらなければいけないということではない。場合によっては中止や延期という判断もありうる」と言及。7月4、5日に県内で実施予定の聖火リレーは、その時点で県民に外出自粛を要請している市町村の公道では行わない考えを示した。
大井川知事は「仮に大阪のような『医療崩壊』の中で五輪だけを開催するのは、日本だけでなく世界の方にも理解を得られない。そういう状況に陥った場合には、再度の延期か中止を選択肢の一つとして検討すべきだ」と語った。(保坂千裕)
もう一つ関連記事を。
>茨城県知事 東京五輪「中止や延期の判断あり得る」と初めて言及 鹿嶋市にサッカー競技会場
2021年5月12日 16時58分
新型コロナウイルスの感染収束の見通しが立たず、国内外で東京五輪開催の是非が問われる中、大井川和彦知事は12日、中止の可能性に初めて言及した。県内では鹿嶋市の県立カシマサッカースタジアムがサッカー競技の会場になっている。開催県トップの発言は中止論を加速させそうだ。
この日の定例記者会見。「これまで中止の必要はないという立場だったが、変わりはないか」と問われた知事は「場合によっては中止や延期という判断もあり得る」と踏み込んだ。
知事は、五輪開催に前向きな姿勢を示してきた。開会100日前の4月14日には、JR水戸駅前の五輪シンボルのお披露目式で「困難を乗り越えた人類の可能性をみんなで確認し合う素晴らしいオリンピックにしたい」と話していた。
それが一転し、中止を視野に入れる姿勢に転換。「場合によって」の場合には「大阪のような医療崩壊」を例示し、「医療崩壊に近い状況で五輪だけを開催するならば、国内だけでなく、世界の理解を得られない」と説明した。もっとも、現時点では「(医療崩壊が)絶対に起きないように最大限努力する。今の状況であれば、安心安全な開催は十分可能だ」と強調することも忘れなかった。
県内の新規感染者は11、12日の2日連続で70人以上と増加傾向。外出自粛などピンポイントで感染対策を講じる感染拡大市町村は12市町(13日時点)だ。
県内では7月4、5日に聖火リレーが予定されているが、知事は、外出自粛が要請されている自治体では、公道でのリレーを中止する方針を表明。五輪組織委員会から要請された選手専用のコロナ病床確保についても「県民と五輪選手を分け隔てする必要はない」との理由で断ったことを明らかにした。(保坂千裕)
なかなか感心な知事ということじゃないですかね。よくぞ言ってくれましたというところでしょう。しかしこれほとんど末期的状況ですね。茨城県知事が言うように、
>仮に大阪のような『医療崩壊』の中で五輪だけを開催するのは、日本だけでなく世界の方にも理解を得られない。
>県民と五輪選手を分け隔てする必要はない
なのは当たり前ですが、
>五輪組織委員会から要請された選手専用のコロナ病床確保
なんて、つまりは東京都の病院だけでは、病床を確保しきれない可能性があるということを組織委員会も認識しているということで、こんなのお話にもなりません。それこそ国会論戦みたいに、オリンピックと国民の保健衛生のどっちが優先なんだというレベルでしょう。そしてまた例の池江璃花子のツイートも、似たようなところがありますよね。
いつも応援ありがとうございます。
Instagramのダイレクトメッセージ、Twitterのリプライに「辞退してほしい」「反対に声をあげてほしい」などのコメントが寄せられている事を知りました。もちろん、私たちアスリートはオリンピックに出るため、ずっと頑張ってきました。ですが、↓
今このコロナ禍でオリンピックの中止を求める声が多いことは仕方なく、当然の事だと思っています。私も、他の選手もきっとオリンピックがあってもなくても、決まったことは受け入れ、やるならもちろん全力で、ないなら次に向けて、頑張るだけだと思っています。1年延期されたオリンピックは↓
— 池江 璃花子 (@rikakoikee) May 7, 2021私のような選手であれば、ラッキーでもあり、逆に絶望してしまう選手もいます。持病を持ってる私も、開催され無くても今、目の前にある重症化リスクに日々不安な生活も送っています。私に反対の声を求めても、私は何も変えることができません。ただ今やるべき事を全うし、応援していただいてる方達の↓
— 池江 璃花子 (@rikakoikee) May 7, 2021期待に応えたい一心で日々の練習をしています。オリンピックについて、良いメッセージもあれば、正直、今日は非常に心を痛めたメッセージもありました。この暗い世の中をいち早く変えたい、そんな気持ちは皆さんと同じように強く持っています。ですが、それを選手個人に当てるのはとても苦しいです。↓
— 池江 璃花子 (@rikakoikee) May 7, 2021長くなってしまいましたが、わたしに限らず、頑張っている選手をどんな状況になっても暖かく見守っていてほしいなと思います。
— 池江 璃花子 (@rikakoikee) May 7, 2021池江がどうしてそういうような話に巻き込まれたかというと、1つには彼女が、オリンピック開催のイベントにフロントとして顔を出したからではあります。記事を。
>「1年後、希望の炎を」 池江璃花子、国立競技場に立つ
清水寿之 2020年7月23日 20時56分
新型コロナウイルスの影響で来夏に延期となった東京オリンピック(五輪)の開会式1年前となった23日、東京・国立競技場で記念イベントが行われ、白血病からの復帰をめざす競泳女子・池江璃花子選手(20)が自らの境遇を重ねながら、世界に向けてメッセージを発信した。
「大きな目標が目の前から突然消えてしまったことは、アスリートたちにとって言葉にできないほどの喪失感だったと思います。私も、白血病という大きな病気をしたからよく分かります。思っていた未来が、一夜にして、別世界のように変わる。それは、とてもきつい経験でした」
本来なら24時間後に開会式があるはずだった国立競技場は無観客で、華美な演出もない。フィールドの中央で一人、池江選手は願いを込めて言った。「1年後、五輪やパラリンピックができる世界になっていたら、どんなに素敵だろう」
五輪批判に向き合った池江 選手の覚悟は空気を変えるか
昨年2月に白血病と診断されたとき、東京五輪に出なくてよくなったと安堵(あんど)するほど重圧を感じていた。メッセージ後に流れた3分間の映像のなかでは、「でも、それが無くなって、自分はどうしようもなくこのスポーツが好きなんだと(アスリートたちは)心の底から思ったはず。私もそうだった」と明かした。
池江選手は2024年パリ五輪をめざし、5月から本格的な練習を再開している。世界のアスリートたちも、さまざまな制約がある中で練習を続けている。「希望が遠くに輝いているからこそ、どんなにつらくても、前を向いて頑張れる。私の場合、もう一度プールに戻りたい、その一心でつらい治療を乗り越えることができました」。そして、「1年後のきょう、この場所で、希望の炎が輝いていてほしいと思います」と結んだ。(清水寿之)
以下メッセージがあるのですが、それは有料会員限定なので、省略します。よそから引っ張り出すことも可能かもですが、そこまでする必要もないでしょう。こういっては身もふたもないですが、彼女がこのようなイベントに出なければ、彼女がピンポイントで「辞退してほしい」なんていわれることはなかったのではないか。
いうまでもなくオリンピックなんて、池江が出たいと言ったからといって開催されるわけではないし、彼女が「中止してほしい」といって中止になるというものではないわけで、上のイベントだって、オファーがあれば彼女に辞退する選択肢はないか難しかったとは思います。しかしこういうものに出ちゃうと、やっぱり世間の目は冷たくかつ厳しくはなりますね。もちろんそれは、病み上がりの人間を持ち出す側の見識の問題でもありますが、いくらイベント当時成人したばかりの年齢とはいえ(彼女は、2000年7月4日生まれ)、やはりそれなりに何らかの負債は抱えてしまうと思います。ただその彼女も、現在の段階では、上のツイートにもあるように、「何が何でもオリンピックを開催してほしい」とは言っていない。現段階では、最低レベルの常識があれば「ここでそういうことを言ったら損だ」くらいの判断はつくわけです。昨年7月の時点では彼女も上のようなイベントで開催を熱望することを語れましたが、現在ではとてもできない相談です。
それで、このようなイベントに出たアスリートですら「何が何でもオリンピックを開催してほしい」とは主張しかねるというのは、これもかなりの末期的段階ではないですかね。彼女に限らずかなりのアスリートが「ここでオリンピックを開催するのは相当な無理筋だ」と考えているのではないか。ぜひ開催してほしいと願うという気持ちと、それはまた違う理性の次元で。最近のこのような報道はどうしたものか。
>東海大柔道部、55人コロナ感染 150人同じ寮で生活
新型コロナウイルス
2021年5月14日 10時21分
東海大学は13日夜、湘南キャンパス内(神奈川県平塚市)で活動する男子柔道部員55人が、新型コロナウイルスに感染したと発表した。男子柔道部員は約150人全員が同じ寮で生活していたという。
大学によると、10日に部員1人の感染を確認。翌11日にも別の部員1人の感染が分かったため、この日のうちに練習を打ち切った。12日から部員、コーチ、スタッフらにPCR検査を実施したところ、同日に新たに部員1人、13日には部員52人が感染していることが判明した。感染が確認された部員55人は全員無症状だという。当面の間、活動を停止し、部員やスタッフの外出を禁止している。
同部は日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長や柔道男子日本代表の井上康生監督らが輩出した名門。大学は14、15日を臨時休講とし、23日まで同キャンパス内への入構を禁止する。
どこから感染したのか定かでありませんが、オリンピックを開催するとして、こういう事態が全く発生しないとは考えにくいですね。選手にでなくても、役員、ジャーナリスト、もしくは推薦枠で来日する人間もいるでしょう。彼(女)らを完全に管理できるわけもない。そしてそうなったら、日本だけでもすまないでしょう。世界中どこの国でも感染者を完璧に封鎖できるものでもない。そうなったらIOCなり日本政府なり東京都なりJOCなり組織委員会は責任とれるのか。とれっこない。とらないって居直ればすむってものでもないでしょう。だいたい最近では、ちまたで言われる「オリンピック開催を中止したら経済的に大損する」という話すら怪しいという見解も現れています。inti-solさんの記事を参照してください。
その記事に引用されている記事が下です。
東京五輪〝損切り〟中止せよ! 経済打撃は限定的「テレビの買い替えくらい」
その記事のコメント欄に、拙ブログの常連コメンテイターであるnordhausenさんが、オリンピックばかりでなく万博やカジノなどもそうではないかと指摘されていますが、経済的損得よりもオリンピック開催などが優先されるというのではもはやまともな議論が通用しないというレベルでしょう。平時なら「国威発揚」とかいう文言が錦の御旗かもしれませんが、現状とてもそんな状況ではない。しかしオリンピック開催をこの期に及んで支持している連中は、やはりいまだに「国威発揚」に固執しているんでしょうね。それは私と所詮考えが違うということなのでしょうが、現段階やめたほうがよっぽど日本は世界で評価されると思いますがね。
だいたい1984年のロサンゼルス大会は、76年のモントリオール大会の大赤字がたたったせいもあり、公金を使わないで商業主義にして開催費用をまかなうオリンピックという形式としました。ところがその後は、東京に限った話ではありませんが、莫大な公金を支出してそれで商業主義も全力では、成功すればまだいいですが(私は、そういうことで金儲けを大々的にするというのは好きではないですが、それはこの際どうでもいい話)、失敗したら目も当てられないとはこのことです。だいたい復興五輪なんてのはとっくの以前にいわれなくなりましたが、人類がコロナに勝った証なんてのも、現状「馬鹿も休み休み言え」のレベルじゃないですか。さすがにこれも、いまやいう人もいなくなりましたが(笑)。それでもなんでも開催するというのでは、これでは「戦死した英霊に申し訳ない」とか称して戦争を継続した連中を批判したり笑えないじゃないですか。もはや「昔はそうだったが、いまはちがう」とかいえたものではない。
それにしても仮にこのまま開催を強行したとしても、おそらく2028年のロサンゼルス大会以降の開催都市への立候補は激減するでしょうね。inti-solさんがコメント欄でお書きになっているように
>ある意味、今回IOCが守銭奴的対応に徹すれば徹するほど、将来は真っ暗になっていくだろうと思います。利益はIOCのもの、リスクは開催都市(と国)のもの、ではねえ。
でしょうね。だいたい2004年のアテネ大会だって、その後ギリシャが経済破綻した理由の1つが、この時の負担の大きさでもあったわけであり、IOCや関係企業はともかくとして、自治体ばかりでなく国すらもその負担に耐えきれなかったというのではお話にもなりません。つまりは、IOCも相当な路線変更、見直しをして行かざるをえないでしょう。そしてそれはそれで悪いことではありません。
というようなことを考えていると、安倍晋三とか、猪瀬以降の東京都知事もろくでもないですが、東京オリンピックを最初にぶち上げた石原慎太郎の責任は、私は切腹物のひどさだと思いますね。あの男がこんなつまらんことを言い出さなければ、こんなひどい事態にはならなかった。それはその時点で石原がそんなことを予想できたはずもありませんが、あまりに事態が悪すぎる。「石原には責任がない」なんていう話ですむものでもないでしょう(笑)。これは、石原だけの問題でもなく、都知事選で石原に投票した東京都の有権者や、彼を直接投票した有権者以外で石原を支持した人間にもそれ相応の責任はあると思います。そして石原は昨今コメントほか顔を出していない。認知症とかいう可能性もありますが、どうなんですかね(苦笑)。どちらにせよ無責任きわまりない野郎です(笑)。
石原ほどではないにしても、東京オリンピックを大々的に支持したりした人間も、石原ほどじゃないにしてもそれなりにご反省願いたいなと思います。そういった連中の問題と比較すれば、上の池江璃花子なんてかわいいものです。批判すべき連中はほかにいろいろいる。
なおこの記事は、上に引用したinti-solさんの記事を参考にしました。感謝を申し上げます。またコメントを引用させていただいたnordhausenさんもありがとうございます。また拙記事の一部をinti-solさんの記事に投稿したコメントから流用しました。