先日こんな記事を読みました。
>万引癖を克服できず、相談もついには無視され「孤独」 30代女性、決意した死【東尋坊の現場から】
2021年6月12日 午後7時00分
コロナ禍による「孤独」が新たな社会問題になっており、日本でも英国に続いて孤独担当相が置かれ対策に乗り出しましたが、この長引くコロナ禍の生活になじめない女性や若者による自殺者が例年になく増加していると社会問題になっています。ここ福井県坂井市の東尋坊でも特に女性による自殺企図者の増加が見受けられ、5月中には3人の女性による自殺企図者を発見・保護しました。
■万引癖が治らず…
5月下旬のある日、日没を迎えようとしている時間でした。小雨が降る中、傘もささず30歳代・女性が一人で岩場に向かって行く姿を発見したため思わず声掛けしました。相談所で話を聴いたところ、「小学3年生の時に適応障害と診断され、以来精神科医の入退院を繰り返しています。現在A型の障害者施設で働いていますが、万引き癖が治らず、これまでに5回ほど店員に見つかり警察沙汰にもなりました」と打ち明けました。
女性は、万引きは悪いことだと分かっているものの、天から「盗っていい」と言う声が聞こえてきて盗んでしまうと言いました。今回も、天から「あなたが欲しいものは盗ってもいいよ…」とお告げがあり、スポーツジムで他人のバックから現金を盗んでしまったそうです。警察の取り調べを受けている最中で、このことで作業所のケースワーカーに相談しましたが無視され「辛くなり自殺しに来ました…」。女性は「天からのお告げ」を受けての万引き癖を克服することに困難を抱えていました。
(後略)
もう1つ万引き関係で悩んでいる人も紹介されているのですが、その人は継続的な万引きでない内容ですので、紹介は略します。
それにしても
>天から「盗っていい」と言う声が聞こえてきて盗んでしまうと言いました。今回も、天から「あなたが欲しいものは盗ってもいいよ…」とお告げがあり、スポーツジムで他人のバックから現金を盗んでしまったそうです。
ねえ(呆れ)。
以前の私なら、「なにを馬鹿なことほざいているんだか」と呆れかえるばかりでしたが、最近はそうもばかりも言っていられなくなりました。過日にこのような記事を書きました。
たぶんだが、この埼玉県警深谷署の署長は、摂食障害者の万引き常習犯に近い精神状態ではないか(追記あり:「愛情では依存症は治せない」は至言だと思う)そこで紹介した江川紹子の記事に、こんなくだりがありました。前記事では紹介しなかった部分も追補して引用します。
>もう私は大丈夫……そう思っても、自由に食べ物が手に入る環境に戻ると、症状はぶり返した。「吐いちゃいけない」と思うと、余計に吐きたい衝動にかられる。どこからか「吐け!」という”悪魔のささやき”が聞こえた。その”声”は、万引きへと彼女を突き動かすスイッチにもなった。
>結婚式の直前に……
幸せの絶頂期。それが暗転したのは、結婚式を3週間後に控えて実家に帰った後だった。実家で母親と喧嘩になった。それが引き金になったのかもしれない。東京に戻り、職場の上司を訪ねる際の手土産を買おうとデパートに入った時、あの「吐け!」という声が聞こえた。その後の記憶はない。気がつくと、和菓子を万引きしたとして、警備員に捕まっていた。
これまでの事件も、万引きする時のことはほとんど覚えていなかった。店内のビデオを見ると、自分が商品を盗っているのは確かなのだが、どうしても状況が思い出せない。後に、2つの医療機関から「解離性障害」と診断された。摂食障害は、このように他の障害や病気と重なる場合もある。
B子は、前科もあることから、常習累犯窃盗罪で起訴された。結婚は破談になると覚悟した。けれども、すべてを知った婚約者は、「病気なら治せばいい」と言ってくれた。彼の両親も、「娘として待っている」という言葉を伝えてくれた。
(中略)
裁判は、一審が懲役2年の実刑判決だったが、控訴。結婚後に立ち直った姿を見せて、控訴審で執行猶予をつけてもらうことを目指した。
ところが……。
反省や決意や誠意では克服できない病
勤務先が北関東に変わった夫との新婚生活が始まった。環境の激変で、ストレスがたまり、またもや食べ吐きの衝動を抑えきれなくなった。ある日、買い物に出掛けると、また「吐け!」の声が聞こえた。
はっと気がついたら、警備員に捕まって、店の事務所に連れて行かれていた。カバンにパンやお総菜を詰め込んでいたのだった。
「またやってしまったのか……」と激しく落ち込んだ。もう死ぬしかない、と思い詰めた。夫は「僕がいてもダメなのか…」と失望し、離婚を告げた。
控訴審での執行猶予はもちろん認められず、新たな事件も合わせると、服役期間は3年半と決まった。人生のどん底だった。
というわけです。手に負えないとはこのことでしょう。
たぶんですが、たぶん福井の女性も、なんらかの解離性障害の類いがあるんじゃないんですかね。めったなことはいえませんが、幻聴が聞こえてそれで精神に何らかのスイッチが入って万引きに走るというのは、やはりそれ相応の精神障害があると解釈して問題はないのではないか。
たとえば私なんか、「吐け!」と幻聴をきいたって吐きはしないし(=万引きもしないし)、「盗っていい」という声がきこえたって「いや、盗っちゃまずいでしょ」と思います。当然でしょう。ところがその「当然」が通用しないのが、このような世界のわけです。本当に困ったものです。
実際、同じく私が前記事で引用した原裕美子の万引きの話の、引用した前の部分をちょっとご紹介してみます。なお引用文中「昨年」とは、2017年のこと。
>治療は一定の効果を見せていたが…
捕まるたびに、罰金の額が増えるなど処分は重くなった。そして、昨年11月、宇都宮地裁足利支部で懲役1年執行猶予3年の判決を受けた。この裁判中から、専門病院に入院して治療を受けていた。一通りのプログラムが終了し、退院したのが昨年暮れ。食べ吐きの症状は続いていたが、万引きの衝動はなくなっているのを彼女自身も感じていた。
裁判官と約束したように、買い物は家族と行くように努め、1人で外出する時にはバッグは持たず、財布だけを持って出るようにしていた。
そんな今年1月中旬、新聞のネット記事の中で自分のことに触れられているのをたまたま目にした。「裁判は終わったのに、まだマスコミは自分のことを追いかけているのか…」と思った。常に誰かに見られているようなストレスが高じて、まもなく退院後初めての万引きをした。
上の記事が事実であれば、執行猶予付きとはいえ懲役判決を受けて、しかも専門病院に入院までしていたにもかかわらず、
>退院したのが昨年暮れ
>1月中旬・・・まもなく退院後初めての万引きをした。
というわけであり、彼女が万引きをやめていたのは、せいぜい1か月くらい、多分それ未満でしかないわけです。いやはや、万引き依存というのはどれだけ人間を狂わせるのかです。だいたい
>「裁判は終わったのに、まだマスコミは自分のことを追いかけているのか…」と思った。常に誰かに見られているようなストレスが高じて
といいますが、それならなおさら万引きなんかしちゃだめじゃないですか。まさに自殺行為だし、事実そうなったわけです。そこまで万引き依存というのはひどいわけです。
ただこういうのを読んでいると、なら自分でどうにかしろという感もしますね。すぐ医者と弁護士に電話し、「精神的にまずい状況にある」と説明して入院の手配を頼み、家族には「万引きしそうなので、入院するまで絶対外出しない」とか宣言して、ベッドに身体を縛り付けるくらいのことをしたらどうか。「そこまでするか?」って? そこまでするのです。この時点で原裕美子が仕事をしていたのかどうか知識がありませんが、していたとしても職場に事情を話して、しばらく休ませてもらうしかないでしょう。クビだと言われたら仕方ないじゃないですか。もはやそんなことを言っている場合ではない。仕事を失うよりまた万引きをして社会的信用を失う方がよっぽどまずい。そこまでは言わずとも、万引きしそうになる際には、それを阻止するためにいろいろなことをするというのは、下の本にも書かれていました。
こちらの本はすごいですよ。読み応えがあります。万引き依存症に興味のある方は必読の本かも。たとえば万引きの衝動が収まっていた女性は、かつて万引きをしている際はいつも大きなバッグを持っていて、それを防ぐため小さいバッグしか持たなかったのですが、娘さんの結婚式の際に大きなバッグを持ったら万引きしてしまった(そして捕まった)とか、すさまじい話が満載です。
依存症のすさまじさは、もちろん万引きに限りません。自宅をリバースモーゲージのような形で売って得た金で1億円の車を買って、それから何年かして近所に100円を恵んでもらうような生活状態に陥り、生活保護受給者になりまもなく孤独死した元予備校講師である佐藤忠志氏(浪費癖、ほかにアルコール依存などもあり。彼餓死の直前にひどくやせていたのは、多分酒ばかり飲んでいてまともな食事をしていなかったからです)、社会人野球時代に性犯罪(家宅侵入の模様)をして会社を追われ、ドラフトからも忌避、独立リーグで努力して認められてせっかくNPBに入団させてもらったのに、またまた性犯罪をしてしまい実刑判決となった堂上隼人(多分性依存症)といった拙ブログに繰り返し登場した人たちもいるし、またほかにもいろいろな人たちがいます。彼(女)らは、正直「手に負えない」「始末に負えない」「依存症は死ななきゃ直らない(これ冗談じゃなくて、ある程度の真理です)」「お話にもならない」「どうしようもない」人たちです。依存症を治すためには、ご当人がそれ相応の覚悟をしなければいけないわけですが、たぶん前出の佐藤氏などは、とてもそんな治療や入院などするつもりはなかったのでしょうね。ある段階で、死へまっしぐらだったのでしょう。
もういいとおっしゃるかもですが、こちらの記事はどうか。
元ヒスブル・ナオキ、性犯罪再犯事件公判での検察官の激しい追及と応酬
Hysteric Blue(現在解散)のリーダーだった二階堂直樹(改姓した模様)が、性犯罪で懲役12年の判決を受けて服役、服役中にも更生の意思を月刊誌に手記としてよせていたのですが、出所4年ほどでまたまた性犯罪を起こしてしまったという最悪・最低にもほどがある事件です。それで上の記事からちょっと印象に残ったことを抜粋して引用します。
>予兆とカウンセリング
被告人は、あくまでも尾行がメインで、一瞬さわって逃げようと思ったのは最後の瞬間だと説明したが、検察官は、前の事件の時も背後から近づいたことや大声を出されて逃げたことがあった、今回も同じではないかと詰め寄った。
初公判で弁護側は、今回の事件はあくまでも痴漢行為であって、強制わいせつ目的ではない、と主張した。それに対して検察官が反撃したのが今回の公判だった。
私は逮捕翌日にもナオキに接見したし、その後も話を聞いていたが、事件を起こした当日の前から何度か女性の後をつけたりしていたことは知らなかった。本人は「尾行した時点で再犯と重く受け止めるべきだったのに、事件当時は、これぐらいならと考えてしまっていた」とその日も証言していたが、そういう行動が何度か続いたというのは考えるべきことであったことは確かだろう。
以前接見した時に「予兆があったのでカウンセリングを受けようかとも思っていた」と語っていたが、今回の公判でそういうことだったのかと思った。
今回の検察側との応酬を含めて、ナオキの行動をどう考えるべきかは、性犯罪の再犯を考えるうえで大事なことだ。今後、情状証人の出廷を含めて裁判はまだ続けられる。
樹月さんの感想と取り組み
帰り際、樹月さんと話をした。樹月さんは「R3で学ぶリスクマネジメントの観点から言うと、深夜に外出すること自体が避けるべき行動だし、まして酩酊するほど飲酒するなどもってのほかだ」と語っていた。「R3は、刑務所で学習して完結するものではなく、社会生活の中で実践し、知識を血肉化させるところまでもっていかなければ、実際に再犯を防ぐことはできない」とも話す。
樹月さんも性犯罪で長期の服役を経て出所した人だが、現在も定期的にカウンセリングを受けている。そして、性犯罪の再発防止のために何か活動ができないかと、いろいろ考えているところだった。
樹月さんは一方で、ナオキの証言を傍聴していて、「かつて裁判に臨んだ時の過去の自分を見せつけられているような感じがした」とも語っていた。「自分がそうだっただけに、どうして彼がああいう話し方、ものの考え方をしてしまうのかもよく理解できる」とも言う。
(後略)
記事に出てくる「樹月さん」という人物は、二階堂と同様に性犯罪をした人間で、現在更生中です。その人が
>深夜に外出すること自体が避けるべき行動だし、まして酩酊するほど飲酒するなどもってのほかだ
とおっしゃるのは、まさにごもっともとしかいいようがないですね。堂本も、入団時は禁酒していたのですが、理由はともかくなし崩しで酒を飲むようになったという話もあります。犯行時では酒は飲んでいなかったらしいという話も聞きますが、やはり酒を飲むようになったことに代表される精神のゆるみが、彼の性犯罪再犯につながった要素の1つであるのは確実だと私は思います。万引きでも、万引きを再犯する人は、自分への戒めがだんだんにゆるんでくるところがあるという趣旨のことは、前掲書にも記されています。
いずれにせよこのような事件は、まさに損得などということとは次元が違うのですからひどいですね。自分はしなくても、夫奥さん子ども親ほかがする可能性もある。いろんな意味で困ったものです。