先日読んでまた「おいおい」と思った記事を。
＞急に万引きしたくなった」…スーパーで食料品２４点盗んだ「窃盗症」の女に酌量減軽
2021/12/19 11:26
万引きを繰り返したとして、常習累犯窃盗罪に問われた福岡市の元派遣社員の女（４４）に対する判決が１７日、福岡地裁であった。板東恵里裁判官は、被告が「窃盗症」の診断を受けていたことを踏まえ、「自己の問題性と向き合い、更生の決意を新たにしている」として酌量減軽し、法定刑の下限（懲役３年）を下回る懲役１年８月（求刑・懲役３年）の判決を言い渡した。
判決によると、被告は９月３０日、仕事帰りにスーパーに立ち寄り、食料品２４点（計約６２００円相当）をバッグに入れて盗んだ。
公判で弁護側は、被告が窃盗の衝動を抑えられない窃盗症と診断されたと主張。板東裁判官は判決で「窃盗の常習性、規範意識の鈍麻は顕著」と指摘する一方、「（被告の）夫が窃盗症治療の病院を探して通院させるなど、家族として支えようとしている」と酌量減軽の理由を述べた。
判決後、板東裁判官は「今度こそ更生し、普通の生活を手に入れてほしい」と説諭した。
お金や物…なくなることへ恐怖
「急に万引きしたくなった」「（万引きを）やめられていたから、これからも大丈夫と思った」。女は公判などで犯行をこう振り返った。
検察側の冒頭陳述などによると、被告は大学卒業後、会社員になり、１０年以上前から万引きに手を染めた。窃盗症、摂食障害と診断されたことがあり、窃盗罪で服役し、２０１８年１月に仮釈放され、夫と出会った。
生活にゆとりはあり、今回の犯行時には３万円ほどを所持していた。
被告の窃盗症を知らなかった夫は証人として出廷し、「犯罪とリンクしない彼女がいる」と困惑。一方、「一日中お菓子を食べ、私より食事が多かった。予備の予備を買う癖があり、在庫が異常だった」とも証言した。
窃盗症に詳しいクレプトマニア医学研究所所長の福井裕輝医師によると、窃盗症の背景には「お金や物がなくなることへの恐怖」がある。物を捨てられない「ためこみ症」や摂食障害を併発することが多いという。
再発防止策としては、買い物の同行などが有効という。福井医師は「速やかに専門機関に相談し、周囲が精神疾患と理解した上で継続的に支える必要がある」と話している。
福岡県内では、県精神保健福祉センター（０９２・５８２・７５００）などが相談窓口となっている。
このブログでも繰り返し窃盗癖（クレプトマニア）の話を書いています。それで私がこの記事で印象に残ったのがこのくだりです。
＞急に万引きしたくなった
前にご紹介した事例では、原裕美子や、江川紹子の記事に登場した女性などは、やや精神の解離状態を感じますね。
たぶんだが、この埼玉県警深谷署の署長は、摂食障害者の万引き常習犯に近い精神状態ではないか（追記あり：「愛情では依存症は治せない」は至言だと思う）＞お菓子をとった瞬間は、「目の前が、雲がかかるように白くなって、視角が狭くなった」という以外よく覚えていない、という。カゴが体に触れた時、がさっという音がしてハッとし、お菓子をカゴに入れて精算しなければと思ったが、周囲の人がみな自分のことを見ているようで、実行するタイミングをはかりかねていた、と説明する。防犯カメラによれば、その時間は約15分。その間、そこにいる人たちが、口々に「原裕美子よ」「万引きした人ね」と言っているように聞こえた。本当にそう言われたのか、彼女の頭の中だけで響いたのかは、分からない。そこへ、店内の私服警備員の女性が声をかけ、事務所に連行した。
＞ 幸せの絶頂期。それが暗転したのは、結婚式を3週間後に控えて実家に帰った後だった。実家で母親と喧嘩になった。それが引き金になったのかもしれない。東京に戻り、職場の上司を訪ねる際の手土産を買おうとデパートに入った時、あの「吐け！」という声が聞こえた。その後の記憶はない。気がつくと、和菓子を万引きしたとして、警備員に捕まっていた。
これまでの事件も、万引きする時のことはほとんど覚えていなかった。店内のビデオを見ると、自分が商品を盗っているのは確かなのだが、どうしても状況が思い出せない。後に、2つの医療機関から「解離性障害」と診断された。摂食障害は、このように他の障害や病気と重なる場合もある。
彼女らの話が事実ならばですが、これは私には事実確認が不可能ですので、記事の記述をそのままのものとして受け取ります。印象としては東尋坊で自殺しかけた女性に近いですかね。
万引きとかの依存はここまでひどい＞女性は、万引きは悪いことだと分かっているものの、天から「盗っていい」と言う声が聞こえてきて盗んでしまうと言いました。今回も、天から「あなたが欲しいものは盗ってもいいよ…」とお告げがあり、スポーツジムで他人のバックから現金を盗んでしまったそうです。
アルコール依存症などもそういうことがあるようですが、窃盗癖などでも、長きにわたって万引きをしていない人が、何らかの理由で突然また万引きをしてしまうという事例があるようですね。その人間心理というのも興味深いにもほどがあるというものですが、
＞たとえば万引きの衝動が収まっていた女性は、かつて万引きをしている際はいつも大きなバッグを持っていて、それを防ぐため小さいバッグしか持たなかったのですが、娘さんの結婚式の際に大きなバッグを持ったら万引きしてしまった（そして捕まった）
というような場合もあるわけです。大きなバッグを持ったことが万引きのスイッチになったらしい。この女性も、なんらかのスイッチが入ったのかもしれません。
裁判官の説諭によれば
＞夫が窃盗症治療の病院を探して通院させるなど、家族として支えようとしている
とのことですが、拙記事（たぶんだが・・・）で引用した例では、
＞B子は、前科もあることから、常習累犯窃盗罪で起訴された。結婚は破談になると覚悟した。けれども、すべてを知った婚約者は、「病気なら治せばいい」と言ってくれた。彼の両親も、「娘として待っている」という言葉を伝えてくれた。
（中略）
「またやってしまったのか……」と激しく落ち込んだ。もう死ぬしかない、と思い詰めた。夫は「僕がいてもダメなのか…」と失望し、離婚を告げた。
bogus-simotukareさんがご指摘になったように 愛情では依存症は治せないということになるわけです。窃盗癖ではありませんが、過去の性犯罪を「更生した」と認めてもらってNPBにドラフト指名してもらった野球選手（堂上隼人）が、またまた性犯罪をして逮捕されて球団をクビ、実刑判決となる始末、Hysteric Blue（解散）の元メンバー二階堂直樹は、性犯罪後服役中に反省の意を表していたのにまたまた性犯罪をして実刑判決、その二階堂の行為を批判した人物は、それと並行して性犯罪をして逮捕されるといった具合で、お話にもならないにもほどがあるというものです。
性犯罪とかに関する人間の闇の部分にいまさらながら絶句するアルコール依存症でしたら、それ自体は犯罪ではありませんが、万引きとかですとそれ自体が言うまでもなく犯罪ですからね。上の記事の被告人女性も服役経験があってもやっぱり犯罪をしちゃったわけで、このような事例は枚挙にいとまがありません。たとえば下の記事で紹介したこのような事例はどうか。
＞窃盗罪で実刑が確定した後に半年以上刑務所に収容されず、その間に食品を万引きした摂食障害の女性被告（３１）に対し、さいたま地裁は６日、懲役２年２月（求刑・懲役２年６月）を言い渡した。弁護側は「収容を待つ不安と恐怖で大量の精神安定剤を飲み、心神喪失状態だった」などと無罪を主張していたが、西村真人裁判官は「障害克服に向けた努力を怠っており、摂食障害を有利に考慮するのは相当でない」と述べた。
判決によると、被告は５月、埼玉県内のスーパーで牛肉など１０点を万引きした。別の万引きで昨年１０月に実刑が確定し、服役を待っている間だった。今回の判決が確定すれば、前の刑の懲役１年２月が加算される。
（中略）
被告は判決前の１日、さいたま拘置支所（さいたま市）で取材に応じ、「自分の意思だけでは万引きをやめられなかった。少しでも前を向けるようになるため、治療で摂食障害と盗癖を治したい」と語った。
１０代で食べては吐くことを繰り返す摂食障害になり、同時に食品などの万引きを重ねた。拘置支所でも症状は改善せず、吐いたものを再び口に詰め込んだこともある。
吐いたものを再び口につめこむなんて、鬼気迫るものがありますが、これがまさに摂食障害の極端なものなのでしょうね。このような人物が更生できるのか。どうやったら更生できるのか。更生できないということはなくても、本当に文字通りの一生の過程です。油断するとその瞬間にまた再犯になる可能性がある。まさに一生をびくびくしながら過ごすわけです。依存症というのは、なったら治すことはできませんからね。それを再発することを防ぐことしかできません。まさに愛情だけでなく全方向で自分を守らなければいけません。なかなかそれも大変だと思います。
あらゆる人間が不快になり、迷惑をする救いのない話もう少しこういう人たちを支援するシステムが必要ですね。それもなかなか大変ですが、遺憾ながら個人の力では限界があります。これはもちろん窃盗癖にかぎりません。