あ、すみません。「社会時評」というほどでもありませんが、いろいろ考えさせられる報道がありましたので。まずは、たぶん著作権には問題がないと思うので、郡山市の報道発表を。
>令和4年3月23日療養休暇を不正に取得していた元職員の刑事告訴にかかる記者会見(総務部)
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更新日:2022年3月24日更新
3月23日に郡山市役所郡山記者クラブにおいて、柳沼英行総務部長、宗方成利人事課長、遠藤尚孝職員厚生課長が療養休暇等を不正に取得していた元職員の刑事告訴について記者会見を行いました。
要旨
本市元職員が在職中、医師による診断書等を繰り返し偽造して、市に提出し、不正に療養休暇等を取得していた件について、本日付で、警察へ刑事告訴いたしました。
社会秩序を守るべき立場の公務員が、こうした不正を行うことは、絶対に許されない行為であり、郡山市職員に対する市民の皆様の信頼を損なう事態となりましたことを深くお詫び申し上げます。
なお、概要については、以下のとおりです。
概要
対象の元職員
50代女性の元主査(令和元年12月に自己都合による依願退職)
事件の概要
元職員は、在職中、医師による診断書、病状説明書、医療費の領収書を繰り返し偽造して、市に提出し、不正に療養休暇等を取得していました。
また、偽造した医師の証明書を用いて、福島県市町村職員共済組合から支給されている傷病手当金を不正に受給していました。
不正の内容
元職員が偽造した書類:診断書48通、病状説明書8通、証明書9通、医療費の領収書45通の合計110通
不正が行われていた期間:平成24年6月から令和2年6月までの約8年間の間、断続的に不正が行われた。
不正に取得した療養休暇等の日数:療養休暇553日間、病気休職771日間の合計1,324日間
不正に対する対処
全容の判明後、令和3年2月に元職員へ、不正に療養休暇等を取得していた期間分の給料(約1,660万円)を全額返納するよう請求しました。
併せて、在職中における懲戒免職に相当する悪質な行為であることから、支給済の退職手当(約1,070万円)を全額返納するよう請求しました。
これに対し、元職員は令和3年10月に給料と退職手当の全額(計約2,730万円)を市へ返納しました。(共済組合から不正受給した傷病手当金約181万円についても全額返納。)
再発防止策
療養休暇の承認にあたり、医療費の領収書について、所属長は、原本を直接確認の上、休暇の承認を行うこととします。
これまで以上に、長期間の療休者・休職者について、職員厚生課・人事課の職員が診察に同行する等して病状等を直接確認することとします。診察への同行が困難な場合は、市が直接、医療機関に対して病状等を問い合わせることができるよう職員へ同意書の提出を求めることとし、適切に事実確認を行ってまいります。
質疑応答
質問
全額返納されているが、それでも刑事告訴した理由は?
回答
返納すればよいというものではなく、今回の不正行為は、公務員として許されない行為であるため、刑事告訴した。
質問
療養休暇、病気休職いずれも給料は発生するのか?
回答
療養休暇については有給。病気休職については、1年間は8割。2年間は無給。
質問
勤務していた所属はどこか?
回答
所属名まで公表すると元職員が特定されてしまうことや、全額返納し、反省の意を示していることから、所属名の公表は控えることとした。
質問
氏名を伏せている理由は?
回答
郡山市職員の懲戒処分の指針では、氏名は、原則、公表対象外となっている。
元職員が反省の意を示し、給与相当額及び退職手当について全額返納し、既に制裁を受けていることなどを踏まえ、氏名の公表までは行わないこととした。
質問
2019年12月に退職したとあるが、不正行為を行っていたのは2020年6月までとなっている。退職後も不正行為をしていたのか?
回答
退職後も、共済組合に傷病手当金を請求することができるが、この請求時において不正行為があった。
質問
休んでいる間に公務員と民間企業を兼業していたということはないのか?
回答
把握していない。本人からそのような申し出はない。
質問
平成24年6月から行われていた不正だが、見抜くタイミングはなかったのか?
回答
巧妙に偽造されていただけでなく、病気の内容に合わせた演技がなされており、見抜くことができなかった。
質問
長期の病気休暇の場合、調査することもあるかと思うが、郡山市は調査していないのか?
回答
診察に同行することも行っている。ただし、同行が難しい場合は、個人情報なので、本人からの同意書が必要。
今後は、診察への同行が難しい場合、同意書の提出を求め確認していきたい。
質問
反省の意を示しているとのことだったが、具体的にどういったことを本人は述べているか?謝罪の弁というのはあったのか?
回答
「迷惑をかけてしまって申し訳なかった。」「市民の方にも迷惑をかけてしまった。本当に申し訳ございませんでした。」という謝罪があった。
質問
偽造した診断書等の病院は行ったことがある病院か?
回答
実際に通院していた病院も、通院したことがない病院もある。
質問
療養休暇は何日まで取得できるのか?
回答
療養休暇は生活習慣病、がん、精神疾患については一疾病につき最長180日間。
会見時資料
上にも書きましたように、全文コピーして引用します。役所の公の資料ですから、たぶん著作権ほかに問題はないはず。
役所側のこの元職員への対応にもいろいろ問題があるでしょうが、まずはこの職員のやらかしたことをちょっと考えてみたいと思います。
>不正の内容
元職員が偽造した書類:診断書48通、病状説明書8通、証明書9通、医療費の領収書45通の合計110通
不正が行われていた期間:平成24年6月から令和2年6月までの約8年間の間、断続的に不正が行われた。
8年間で、提出した診断書が48通ですか・・・。ってことは、平均すれば1年6通? 福島民友新聞の記事より。
>市によると、女性職員は2012(平成24)年6月~20年6月の約8年間、脳腫瘍や胃がんなどを患ったと偽り、診断書や医療費の領収書など計110通を偽造。療養休暇553日、病気休職771日の計1324日を不正に取得した。
(中略)
20年6月、同組合から市に「女性が保険証を使った記録がない」と調査依頼があり発覚。女性は自宅のパソコンで診断書などを偽造しており「精神疾患を理由に休むと周りの目が厳しいと感じ、身体的な病気であればと考えた」と話しているという。
しかも病気が、「脳腫瘍」とか「胃がん」とかの重病ですからね。市役所側もあるいは良性の脳腫瘍とか胃がんとかとみなしていたのかもですが、これまたずさんな対応です。ただこの女性もねえ、
>精神疾患を理由に休むと周りの目が厳しいと感じ、身体的な病気であればと考えた
って、そんな理由で精神疾患をいやがって診断書ほかを偽造しなくったっていいと思います(苦笑、いやもちろん笑っている場合ではありません)。こういっては何ですが、これ自体が完全な精神疾患というものでしょう。まあでもそういう事態になってもまだ職に固執するというのがご当人の重大な問題なのでしょうね。これではどうしようもない。ほんと馬鹿だよね、この人。もっといくらでも悪くない状況の対応ができたでしょうに。
ところで郡山市役所の答弁ですが、
>返納すればよいというものではなく、今回の不正行為は、公務員として許されない行為であるため、刑事告訴した。
というのと
>所属名まで公表すると元職員が特定されてしまうことや、全額返納し、反省の意を示していることから、所属名の公表は控えることとした。
(中略)
郡山市職員の懲戒処分の指針では、氏名は、原則、公表対象外となっている。
元職員が反省の意を示し、給与相当額及び退職手当について全額返納し、既に制裁を受けていることなどを踏まえ、氏名の公表までは行わないこととした。
というのでは、話がそぐわないのではないか。私もこのような件で積極的に氏名を公表する必要があるのかというのは議論の余地があるかと考えますが、刑事告訴するということは、内部での処分では済まされないと認識したことですから、そうであれば
>元職員が反省の意を示し、給与相当額及び退職手当について全額返納し、既に制裁を受けていることなどを踏まえ、氏名の公表までは行わないこととした。
ということを鑑みる段階ではもはやないのではないか。すでに制裁を受けているのなら、告訴は見送ってもいいし、告訴するというのなら、制裁が不十分と認識しているということでしょう。そういう対応を「いい」とはいいませんが、こういうのも「武士の情け」「元同僚に対する情け」の類なんですかね。
さてさて、ここからは違う問題の話となりますが、こういうのはどんなものか。
>全容の判明後、令和3年2月に元職員へ、不正に療養休暇等を取得していた期間分の給料(約1,660万円)を全額返納するよう請求しました。
併せて、在職中における懲戒免職に相当する悪質な行為であることから、支給済の退職手当(約1,070万円)を全額返納するよう請求しました。
これに対し、元職員は令和3年10月に給料と退職手当の全額(計約2,730万円)を市へ返納しました。(共済組合から不正受給した傷病手当金約181万円についても全額返納。)
こういうのを読むと、「日本的な対応だなあ」と思いますね。もはや四半世紀も前の話ですが、1997年に山一證券の野澤正平社長が、記者会見で
>24日は月曜日だったが、勤労感謝の日の振替休日で休業日だった。午前6時から臨時取締役会が開かれ、自主廃業に向けた営業停止が正式に決議された。会社創立から100年目という節目の年に、山一證券は廃業という社史で幕を閉じた。午前11時30分に社長の野澤、会長の五月女、顧問弁護士の相澤光江が東京証券取引所で記者会見に臨んだ。記者会見が2時間ほど経過し、記者からの「社員には、どの様に説明するのですか?」と質問したところで、野澤は「私らが悪いんであって、社員は悪くありませんから」と立ち上がり号泣しながら述べ、その様子は報道機関によって大々的に報じられた
としたというのが世間でもだいぶ話題になりました。引用は、山一證券のWikipediaより、太字も原文のまま。それでこの記者会見を見ていた韓国人だったかが大要「韓国だったら、こんな記者会見なんか開かない。金をまとめて逃げている」というようなことを述べたという趣旨の記憶があります。なおこれは私の記憶ですので、「韓国人」とか「韓国」とかいうのは、あまりあてにならず出典も示せないのでこうご容赦。
で、世界的に見ても、こういう時は財産をまとめて逃げるというのは、かなりスタンダードな対応だと思います。今は事情があって出国にいろいろ差しさわりがありますが、たとえばカルロス・ゴーン氏の逃亡なども、そのような対応の一環ということになるでしょう。上の郡山市の職員にしたって、やや危険になりそうな雰囲気になったら、海外に出国することもできたのではないか。今は出国にいろいろ問題がありますが、たぶん彼女には出国が可能でもあまりそういうことをする意思が大きくなかったのではないかという気がします。けっきょく彼女は、そういう時に居直って返納を逃げるとかいうことをする人間ではなかったのでしょう。返納すれば刑事事件にならない、あるいはなった際にある程度の情状酌量の材料となるという考えがあったのかもですが、おそらく世界では、海外に出国するといった手段をとるのがかなり一般的な光景でしょう。そうそうあっさりと金を返すとは思えない。
日本人は、戦前や戦後しばらくの日本共産党の関係者(野坂参三とか徳田球一、伊藤律など)らを除くと、あんまり海外に亡命するといったものを見かけませんね。極端な話、麻原彰晃ですら出国することは多くとも、死刑を避けるため海外に亡命あるいは海外で行方不明になって逃げるということはしませんでした。
そう考えると金を返してさらに刑事告訴されるというのは、かなり日本的な光景だと思います。それを悪いとは言いませんが、ともかくそう思います。