先日読んだ記事を。
>「おかしくなりそう」福岡市の商業施設殺害事件、遺族が苦悩する少年法の壁
2022/6/26 6:00 (2022/6/27 11:03 更新)
この記事自体も、いろいろな観点から論評が可能かと思いますが、今回私が注目したいのがこちらです。
>殺人などの罪で起訴された少年の初公判は7月6日、福岡地裁で成人と同じ裁判員裁判が開かれる見通し。せめて公開の法廷で多くの事実が明らかになってほしいと願っている。
つまりこの事件の初公判が、この記事を発表する本日だということです。この事件については私も注目しておりまして、かつてこのような記事を書いています。
発達障害があまりにひどくてさらに家庭環境などの問題があると、ここまでひどい人間になりうるこの記事を発表したのが2021年1月13日です。Wikipediaからこの事件の概要と裁判を引用しますと(ほぼ全文の引用となります)、
>概要
2020年8月28日午後7時ごろ、福岡県福岡市中央区の商業施設「MARK IS 福岡ももち」の1階の女子トイレで、被害者の21歳の女性は、刃物を持った15歳の少年に、左胸や首などを複数回刺され死亡。少年は、近辺にいた幼児に馬乗りになった直後、その場で警備員らに取り押さえられ、銃刀法違反容疑で現行犯逮捕された。少年は逮捕時、刃物を2本を所有しており、同店舗から盗んだものとみられる。被害者はいずれも少年とは面識がなかった。福岡県警は30日、少年を銃刀法違反容疑のほか、取り押さえられる際、6歳女児を包丁で脅したとして暴力行為等処罰法違反容疑で福岡地検に送検し、9月9日に殺人容疑で再逮捕した。少年は取調べに対して、「殺すつもりで刺した」と容疑を認めている。
裁判
少年は約3カ月間の鑑定留置を受け、12月24日、検察は少年を殺人などの非行事実で家庭裁判所に送致した。2021年1月18日、鹿児島家庭裁判所は「少年院などで資質上の問題性を改善するのは著しく困難」であるとして少年の逆送致を決定した。16歳未満の逆送は極めて異例のことである。鹿児島地検は22日、事件を福岡地検に移送した。2021年1月28日福岡地検は、少年を殺人罪などで福岡地裁に起訴した。
となります(注釈の番号は削除)。上の記述にもあるように、いくら人を殺したとはいえ、16歳未満の少年の地検への逆送というのはそうそうあることではありません。つまり家裁としても、きわめてよろしくない事件であり、よろしくない態様であると判断したということです。それで、少年の家庭環境というのもどうもよろしくなかったようです。こちらの記事より。
>九州の小さな集落で3人兄弟の末っ子として生まれ育った少年。
その家庭環境は「普通」ではなかった。
少年から手紙を受け取った男性:
(母親が)息子に対して、包丁振り回したり、息子が、朝ご飯をせがんだら「何で起こすんだ、くそガキが!ぶっ殺すぞ、お前」って(母親に)言われたらしい。家の中では愛情もくそもなかったね
少年は小学校でも孤立していた。
少年から手紙を受け取った男性:
学校でも上手くいかないで、目立って、暴れたりとか、授業もちゃんと受けない。先生が嫌いだから、施設に入った方がいいんじゃないかって。先生が「また、あんた嘘ついたね」とか信じてくれなかったとかあったみたい。それで、もう先生の言うことも聞くのが嫌になったりとか
少年は小学校の高学年になる前に児童養護施設に送られたが、「暴力行為」が原因で施設を転々とする。
その間に両親は離婚。
そして、施設で職員に暴力を振るったとして2019年、少年院に送られた。
少年から手紙を受け取った男性:
先生とかにすごいいじめられたって。それで手をあげたみたい。すごいいじめられたって、押さえつけられたりとか。あいつは向かっていくタイプだから、怖いとかそういうのない。母親も、もう手に負えないと思ってるからさ
家庭、学校、施設。
どこに行っても“少年の居場所”が見つかることはなかった。
どうもこれも、このブログで何回もご紹介する附属池田小事件の犯人宅間守同様、ご当人の素質の悪さと同時に、遺伝的な問題もそうとうありそうですね。たぶん宅間もそうだったのでしょうが、あまりにこの少年の態度ほかが悪すぎて、親なども激怒せざるを得ない側面もあったのではないか。いずれにせよここまでくると、親も学校も施設も、ほぼ対応できないというレベルのように思います。彼は、18歳未満ですから、死刑にはならない(死刑は、18歳以上の人物に科されます)。どのみちいつかはわかりませんが、また社会に出てきます。その時点で彼は、ある程度はまともな人間になっているのか。
上の拙記事でも紹介しましたが、私の同級生に、たぶんこの少年と同質の人間がいました。それこそ教室を授業中に徘徊、弱い者いじめは毎日、年がら年中奇声をあげたり、中学2年生にもなってひらがなすら満足に書けませんでした(助詞の「は」や「へ」を「わ」「え」と書いたくらいです)。けっきょく家出をして(今にしてみると、家で相当家庭内暴力を受けていたのではないかと思います)間もなく保護されて、その後教室には戻ってきませんでしたが、彼は、たぶんこの少年ほどひどくはなくても、似たような人物だったのでしょう。まともに生きていけるような人間ではなかったのでしょう。知的障害と精神障害がかなりひどい人物だったのでしょう。とても素人の手におえる人間ではない。生きていること自体で他人に迷惑をかけるような手合いです。
私の同級生のことはともかく、この少年は裁判でどのようなことを語るか、それが非常に興味深いですね。まともな話ができないかもしれない。ご遺族(母親の方)は、
>せめて公開の法廷で多くの事実が明らかになってほしいと願っている。
とのことで、それは当然の話ですが、現実問題としてはそれもなかなか難しいかもしれません。犯人の少年も、ほとんどろくな考えもなく衝動的に犯行をした可能性も高そうだし(私は、そうだろうと考えています)、反省をしているかもどうかだし、そういった自分の気持ちを言語化して伝えることができるかどうか。あまり期待できないと思いますが、しかしともかく可能な限りそういったことを追求することも必要でしょう。
この件にまた進展がありましたら、再度記事にしたいと思います。