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Channel: ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
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韓国も軍事政権末期ですでに、北朝鮮をさしたる脅威と考えていなかったのではないか(何をいまさらながら、拉致被害者家族会の安倍傾倒に心底から呆れかえる)

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先日「手紙と線路と小さな奇跡」という映画を見ました。韓国のローカル駅「両元駅」開業についてのエピソードにフィクションとファンタジーをおりまぜた映画で、私フィクションはともかくファンタジーはどうも苦手なのですが、それはともかく、映画の途中で興味深いシーンがありました。1987年ごろの話です。この年に軍事政権の全斗煥政権が終わり、大統領選挙の公正な執行による民主政治が始まります。

映画の本筋とは関係ないシーンですが、主人公が、地元の名士の娘(「少女時代」のユナ。さすがに高校生の役は無理じゃね?)の家で性的な表現のある映画のVHSビデオを一緒に見ます。VHSなので、テープがデッキに絡まる(といって、過去のことを思い出す方もいるはず。まさに歴史のことになっています)って焦るというシーンがありますが、それはさておき。その映画は、「エンドレス・ラブ」(ブルック・シールズが出演したやつ)ですが、ビデオの最初に、たぶん政府だか日本でいう「映倫(ビデ倫?)」のようなところが出す(あるいはしかるべきところの監修によろ)警告画面みたいなものがあり、そこで大要つぎのような音声が流れるのです。

「かつての子どもは、トラや天然痘、戦争などを怖がっていましたが・・・」

トラは、北朝鮮の奥地にはいるかもだし、天然痘は1970年代に撲滅されていますが(日本で最後の天然痘患者が発生したのが1955年(ほかに海外で感染した人もいます)、世界最後の天然痘患者は1977年に発見され、WHOが天然痘の根絶を宣言したのが1980年です。韓国の最後の天然痘患者がいつ発生したかについては、ざっと調べた範囲では確認できませんでしたが、かりに日本よりは後だとしても、1987年ごろよりはだいぶ前の話であって、すでに過去の話です)、それはわかるのですが、ここで注目したいのは、少なくとも軍事政権の最末期のころには、すでに韓国の子どもたちにとって、戦争というのはつね日ごろ心配する恐怖ではないということです。そしておそらくここでいう「戦争」とは、韓国の場合、まずは北朝鮮との戦争でしょう。

いや、すみません。私もこんなことよく知らないので、これが当時のVHSビデオに入っていたものそのものなのかは知りませんし、私は韓国語を全く解さないので、字幕とかもどれくらい正確に訳しているかもわかりません。だからまったく私の勘違いの可能性もある。そうだとしたらごめんなさい。

ともかく、私の上での解釈は、そんなに間違いでもなかったということを前提として以下さらに文章を進めます。

子どもが自分の頭でそういうことを考えるというものでもないでしょうから、つまりは、当時の韓国社会では、すでに韓国と北朝鮮との間で戦争が起きるというのは、現実的な恐怖ではなかったということなのでしょう。なおビルマ(現ミャンマー)のラングーン(現ヤンゴン)で、北朝鮮のテロがあって韓国高官が多数死亡したのが1983年(ラングーン事件)、大韓航空機が北朝鮮のテロにあって爆破されたのが1987年です(金賢姫による大韓航空機爆破事件)。つまり、当時の韓国内では、北朝鮮とのテロはありでも、実際に戦争が起こりうるという仮定は現実的でないという認識でいたのでしょう。そして事実、この映画の時代である1980年代終わりからみても、すでに30何年時間がたっていますが、戦争は起きてはいないわけです。軍事政権最末期ですでにそのような認識に韓国民はたっていたということです。韓国は、この映画の過程で軍事政権から民主化がすすみ、北朝鮮も金日成主席と金正日総書記の死などいろいろな事態があったわけですが、今日にいたるまで戦争にはなっていないわけです。

そう考えてみると、日本の一部反北朝鮮活動家・運動家・文化人がほざいている「北朝鮮早期崩壊論」などというものは実に現実性がありませんね。そもそもそんなものは、1990年代から主張されているわけで、今日に至るまで北朝鮮は崩壊していないのだから間違いにもほどがあるというものですが、韓国と北朝鮮が建国したのが1948年であり、この映画はだいたいそれから40年後を舞台にしています。この記事を書いている現在は2022年で、そこからさらに34~5年後くらいです。つまりは、映画の時代を起点としたとしてもまだ折り返しには来ていませんが、もはやポスト軍事政権の1987年からさえ35年もたっているわけで、そんなに韓国と北朝鮮がドンパチする時代でもないでしょう。ましてや巣食う会や家族会の主張するような「北朝鮮の政治混乱時における特殊部隊派遣による拉致被害者救出」なんて、馬鹿も休み休み言え、デマデタラメもいいかげんにしろ、無責任にもほどがあるというものでしょう。北朝鮮の政治混乱なんてものが起きるかも疑わしいし、起きたら起きたで、その時点で拉致被害者の所在なんてわかるわけもありません。まああとは、お亡くなりにならないことを神に祈るくらいのことしかできることはないのではないか。

それにしても家族会の無様さというのもひどいですよねえ(呆れ)。連中は、あそこまで安倍晋三のことを頼りにして当てにして支持してきたのに、安倍が、イデオロギーでなくろくでもない連中との付き合いのために恨まれて殺害されるなんて、馬鹿にもほどがあるというものじゃないですか。暗殺された安倍もそうだし、そんな人間をやたら支持してきた家族会もです。だいたい有本恵子さんの父親である有本明弘氏など、2019年の段階ですら、

>この6年半、拉致問題は進んでいないが…、北朝鮮にモノが言える政治家は安倍首相しかいない

とまで言っていたくらいですからね。そして翌年安倍は首相を辞任、そのまた2年後には恨みを買って殺害されたわけです。

なんとも無様で無残な話だと思う(拉致被害者家族の有本明弘氏)

だいたい記事の中ですら、

>自らに言い聞かせるように語る。

のだそうですから、ご当人が本気でそんなことを考えているかも疑わしい。

いったい何がどうしてここまでひどい事態になるのか。そもそも安倍なんぞを支持してそれが家族会のプラスになったのか(ならなかったでしょ)、安倍は、拉致被害者救出のためにどのようなことをしたのか。せいぜい米国大統領とかに話をしてもらうくらいのことしかしていないんじゃないんですかね。家族会や巣食う会からすれば、「それこそが我々の望んだことだ」なんてことなのかもですが、このブログでくりかえしご紹介する金大中韓国大統領や林東源韓国統一相らのほうが、はるかに実質のあることをしてくれたし、また拉致被害者帰国に役立ったのではないか。日本の政治家や役人だって、安倍より小泉純一郎首相や田中均アジア大洋州局長の役割のほうが安倍など比較にならんでしょう(以上、肩書はすべて当時)。

米国のキューバへの対応から、日本の北朝鮮への対応を考えてみる

けっきょく安倍を無理に支持しちゃった付けをたっぷり払うはめになっているわけで、それは連中の不徳のいたすところで仕方ありませんが、こういう連中がやれ平壌に連絡事務所を置くなとかめちゃくちゃなことを要求するわけです。はっきりいってこんなのはほぼ悪い冗談のレベルの愚劣な光景でしょう。そんなもん無視すればいい話ですが、安倍はもちろんその後任の菅とか岸田といった人たちもそういう根本的な問題から逃げまくっている。逃げまくれば家族会からうるさいことを言われないという事なかれ主義で行動しているのだから当然です。安倍晋三が、日朝国交回復でもすればほかはともかくその件では評価できますが、そんなことをする度胸も力量もなかった。けっきょく安倍は、菅も岸田も同じようなものでしょうが、米国が北朝鮮を何とかしてくれないかとしか考えていなかったのではないか。そして家族会は安倍をやたら支持し、安倍を批判した蓮池透氏は会を追い出される。産経新聞などは、拉致被害者家族の横田さんの夫が死んだことを契機に、「正論大賞」の特別賞なんてものまで受賞(2021年)させる始末。つまりは、反北朝鮮運動に動いてくれたことを表彰しているわけで、これまたこんな愚劣な光景見たことがない。お話にもなりません。こんなものを産経新聞なんかから受け取るなんて末代までたたる恥ですが、いずれにせよ家族会も横田さんの一家もまともではありません。まったくひどいものです。


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