先日次のような記事を書きました。
自殺じゃなくてもやはり過日の事件と不可分ではないか(村田兆治の死)その記事で私は、次のような指摘をしました。
>ただこのような自己嫌悪を原因とする精神的な問題というのは、他人が対応するのも難しいですからね。非常によろしくない。過日記事にした悪質な詐欺に引っかかって自殺した女性も、たぶん借金の返済という直接的な問題より、学生時代の知人に騙されたとか、詐欺師連中の理不尽な話をこちわれなかった自分の弱さなどへの自己嫌悪が自殺の大きな原因ではないか。
詐欺というのは、現在から過去へ逆算していけば、だれも引っかからない(が、その場での判断を余儀なくされるのが厳しい)なお自殺した女性(川上穂野香さん)の遺族である母親の佐永子さんが、関係者を提訴しています。記事を。
>投資詐欺被害に悩み娘自殺 母親が勧誘者ら3人を提訴 「悪質さ知ってほしい」
2022年11月3日 06時00分 警視庁が昨年11月に摘発した投資詐欺事件で、150万円の被害に悩んで自殺した学校職員川上穂野香ほのかさん=当時(22)=の母、佐永子さえこさん(55)=大阪府豊中市=が、勧誘した男性ら3人を相手に、被害金の返済と慰謝料など計約1200万円の賠償を求めて2日、東京地裁に提訴した。記者会見した佐永子さんは「一人でも多くの人に悪質な詐欺を知ってもらいたい」と声を振り絞った。当初は匿名で訴えていたが、広く被害を知ってもらうため実名を明かした。 訴状によると、川上さんは2020年8月、海外の投資ファンド「ジュビリーグループ」が販売する金融商品を高校同級生の男性から紹介され、150万円を借り入れして出資した。 直後に詐欺だと気づき返金を求めたが、応じてもらえずに苦悩。佐永子さんと警察へ相談に行く予定だった同年10月初旬、大阪市内のホテルで自殺した。「若い命を絶つという状況まで追い込まれるに至ったのは、被告らの行為が原因。原告の精神的苦痛は計り知れない」と主張している。 現場に残された遺書には「お母さんへ。22年間、ずっと私を育ててくれてありがとう。投資詐欺の件でたくさん迷惑を掛け、心配を掛けてしまってごめんなさい ごめんなさい」とつづられていた。佐永子さんは「娘の悔しさ、無念を晴らすことだけを考えてやってきた」と話し、勧誘した男性らに「きちんと責任を取ってほしい」と訴えた。 警視庁などによると、ジュビリーグループは19年以降、10万件以上の会員登録から約650億円を集めていたとされる。被告3人のうち、グループリーダー格の1人は金融商品取引法違反(無登録営業)罪で執行猶予付き有罪判決が確定し、もう1人も略式起訴されて罰金刑を受けた。 金融商品への投資を巡る被害は若者の間に広がっており、代理人の杉山雅浩弁護士は「投資話を勧誘して損害を与えれば、刑事、民事で責任に問われる可能性がある」と警鐘を鳴らしている。(奥村圭吾) 【関連記事】「投資詐欺」を苦に娘は命を絶った…勧誘した男は開き直り、略式起訴どまり 残された母「加害者に法律は甘い」提訴は当然ですし、ぜひ勝訴していただきたいのはやぶさかでありませんが、ただやはり「だからといって自殺までしなくてもいいだろう」という気はします。穂野香さんが自殺した背景には、借金を抱えた苦しみよりも、拙記事で指摘したように
>たぶん彼女は、具体的な返済に悩んだというより、騙された自分に対する自己嫌悪が自殺する決定的な理由になったんじゃないんですかね。
ということではないかと思います。
そしてそれは、これも私が何かというと記事にする佐藤忠志氏にも当てはまるのではないか。佐藤氏の死因は明らかになっていないようですが(よって自殺の可能性も否定はできません)、死の直前に佐藤氏を取材した記事によれば、
>佐藤さんは、人生に対する希望をすっかり失っていた。無理もない。世間の注目を集めた時代は遠い昔に過ぎ去り、自らの放蕩で財産もみんな失った。何より、長年連れ添った妻はもういない。残されたのは、心身の耐え難い苦痛だけ。幾度となく漏らした「早く死にたい」という言葉は、佐藤さんの紛れもない本心だった。
という状況だったようですからね。たとえ自殺ではなくても、その自暴自棄の態度はほぼ「緩慢な自殺」といってもいいのではないか。
これだって奥さんが出て行って生活保護受給者になった時点で、「これではいけないな」と、煙草と酒をやめて、また可能な範囲で予備校講師稼業を再開するということもできないことではないはずですが、それをこの時点での佐藤氏に望むのは、できない相談というものなのでしょう。佐藤氏は1992年に常勤の予備校講師をやめているようなので、それから30年弱(27年?)どうやって生計を立てていたのか詳しくありませんが(タレント稼業では、一時期はともかくそれ以外はとてもやっていけるものでもないでしょう)、それでも非常勤ながら断続的にそっちの方の仕事もしてはいたようなので(Wikipediaの注釈による)、とりあえず生計を立てるくらいのことならできなくもないと考えますが、体調を崩したとかいろいろあったのでしょうが、あるいは認知症などもあり、そちらの方も難しくなっているということはあったのかもですね。この辺はしょせん当て推量になってしまいますが、そのあたりは乞うご容赦。
佐藤忠志氏は、あるいは酒の飲みすぎで認知症あるいは感情の制御がさらに難しくなっていたのかもしれないかなり同情の余地のある穂野香さんと、あまりにひどすぎてとても同情などできる代物でない佐藤氏ではずいぶん話は違いますが、急激な事態に対応できなかった穂野香さん、長きにわたって放蕩をつづけて最終的に生活保護受給者になった佐藤氏、どちらも自殺、あるいは緩慢な自殺を防ぐのはかなり難しかったでしょうね。穂野香さんの場合、周囲もまさか彼女が自殺するなんて想像もしていなかったわけだし、佐藤氏に関しては、奥さんばかりでなく彼の近くにいた友人・知人・取り巻きたちも、佐藤氏も避けるようになったし、またとても近くにいられる心境ではなくなったということもあったのでしょう、どんどん彼のもとを去ってしまいました。佐藤氏に親身になって忠告する人もいなくなったし、また佐藤氏自身他人の話を聞けるような人間では最初からなかったのでしょうが、それがさらに悪化した。どちらもなかなか家族をふくむ他人が対応するのは難しいかと思います。
言うまでもなく人間に対してそんなに他人が介入するわけにもいかないしすることもできないあるいは難しいものがありますが、一応周囲は、そのあたりについての注意は払ってもらえればと思います。とくに、穂野香さんのように、あれよあれよという間に自殺することとなってしまったような人に対する対応は、きわめて厳しい、難しいと思いますが、佐藤氏の場合、一応長期にわたって非常識な人生を送っていたとなると、奥さんで手が負えなければ、佐藤氏の母親あたりが力づくでも佐藤氏の更生に動ければよかったのですがね。それができなかったのは、佐藤氏が極端な発達障害のところがあったということもあるでしょうし、母親の方もそういうことをするのが難しい性格だったのかもしれないし、子どもがいなかったことも痛かったと思います。理由はともかく非常に残念ですね。下の記事も、よろしければお読みになってください。
子どもがいなかったことが、河井克行・河井案里夫婦の暴走をさらに後押ししたと思う(たぶん佐藤忠志氏らもご同様)それにしても借金なら、返済計画を練る、分割返済、利息軽減などを交渉する、破産も視野に入れるなど、専門家をも交えていろいろ対策ができるし、生活困窮なら生活保護の受給も考えるなどいろいろ対策もありますが、「自己嫌悪のために生きていくのがつらくなった」というのは、内面の問題なので、非常に面倒です。他人の助けも、ご当人に届かないことが多くないか。ましてや佐藤氏のように重い発達障害があると思われる人物ではなおさらです。
いろいろ大変なことですが、ともかくやるだけのことをやるしかないのでしょう。あまり前向きな結論にならなくてすみません。