このブログは、わりと拉致問題のことをいろいろ記事にしてきたので、その関係で遊びに来てくれる読者が多かったのですが、ここ最近は拉致問題にこれといった動きがなく、私もあまり記事を書くにいたりませんでした。この記事を書く前の拉致問題関係の記事は、横田さんたちがお孫さんに会った際に書いたものです。3月19日の日付で16日の更新です。
で、しばらくぶりに私の拉致問題関係の記事がまとめて高いアクセス数を得ました。
読売新聞 5月29日(木)18時47分配信
北朝鮮による拉致問題をめぐり、安倍首相は29日、拉致した可能性がある全ての日本人を対象に北朝鮮が全面調査を行うと約束したことを明らかにした。
首相官邸で記者団に語った。ストックホルムで26〜28日に行われた日朝政府間協議を踏まえ、両政府が正式に合意した。北朝鮮は、これまで「拉致問題は解決済み」としてきた主張を撤回したことになる。
首相は記者団に、「安倍政権にとって拉致問題の全面解決は、最重要課題の一つだ。全面解決へ向けて第一歩となることを期待している」と述べた。
菅官房長官は29日、緊急記者会見を開き、北朝鮮が調査を始めた時点で、日本が北朝鮮に独自に科している〈1〉人的往来の規制〈2〉政府への報告が必要な送金額(300万円超)や、届け出が必要な現金の持ち出し額(10万円超)の規制〈3〉人道目的の北朝鮮籍船舶の入港禁止措置――を解除していくと発表した。商業目的の船舶入港や航空チャーター便の乗り入れ禁止などは解除対象外とするほか、国連安全保障理事会決議に基づく制裁措置は続ける。
最終更新:5月30日(金)1時21分
これって、福田康夫氏が首相だったときにやろうとしたこと、と根本的には違いはありませんよね。ってことは、それ以降の自民党政権も、民主党政権も、政権復帰後の安倍政権も、やるべきことをやっていなかった、っていう解釈でよろしいんですかね?
でもですよ。これは私は自信をもって断言できますが、たぶん安倍以外の誰かが首相で同じことをしようとしたら、「巣食う会」とか「家族会」の一部は、口を極めて罵るんじゃないんですかね。そこまでいかずとも(たぶんいくと私は思います)、相当厳しく批判するのは間違いないでしょうね。産経新聞もご同様。こういった連中は、ほかはともかく安倍晋三のすることには逆らわないから(なぜかは不明)我慢していますが、でもとくに当事者の「巣食う会」とかの連中は「安倍の野郎、われわれを裏切りやがって」と思っているでしょうね。つまりは実質的に安倍は巣食う会を見限ったということでしょう。もっとも今後も見限り続けるかはこれからですが、たぶん安倍(あるいは菅官房長官などのブレーン)は、巣食う会の政治力、社会的影響力などにすでに往年の力はないと踏んで今回の発表をしたでしょうから、基本はこの路線になるのではないかと思います。そしてそれはたいへん結構であり良いことだと私は思います。「巣食う会」の連中の主張していることは、反対をする方が拉致問題もまえむきに進むし、北朝鮮との交渉も進むというものでしょう。
ところでこのような記事も発表されました。
>北朝鮮へ6月にも職員派遣 政府、平壌常駐も視野
2014.5.31 11:02政府は、日朝が日本人拉致被害者らの再調査実施で合意したことを受け、外務省など関係省庁の職員を早ければ6月にも平壌に派遣する方針を固めた。政府関係者が明らかにした。日本は北朝鮮と国交がなく、北朝鮮に大使館機能がない。政府は、再調査の進捗(しんちょく)状況を踏まえて、職員の常駐や平壌での拠点設置も視野に入れる。
日朝の合意文書は、再調査の進捗状況を確認するため「日本側関係者による北朝鮮滞在、関係者との面談、関係場所の訪問を実現させる」と明記している。
北朝鮮は、3週間後をめどに特別調査委員会を設置することになっていることから、政府は、関係する職員を派遣して北朝鮮側と再調査についての情報共有を進める。
ただ、特別調査委員会の作業に日本は関わらないこともあり、職員の滞在は当面、一時的にとどまる。
実現するかはわかりませんが、
>職員の常駐や平壌での拠点設置も視野に入れる。
というのも非常にいいことですね。日本人妻とか、あるいは何らかの理由(拉致に限らず。つまりは、よど号関係者などもふくむ)で北朝鮮に滞在する日本人、あるいは短期の入国者らの権利その他を保護するためにも、日本政府の役人が平壌に常駐することは必要でしょう。
そんなことを考えていたところ、荒木和博のブログを読んで「おや」と思いました。
>5月24日の拓殖大学国際講座で当日時間がなくていくつかの御質問に答えられませんでしたので、Facebookとブログでお答えしています。質問の内容については同様のものがあるのでまとめたり加筆してあります。ご了承下さい。
(質問)第2次朝鮮戦争が起こる可能性はあるか?南北統一はあり得るか?
(お答え) 南北の間に全面戦争が起きる可能性はほぼゼロだと思います。南北ともに相手を制圧する能力がなく、また後見人である米中もそれを許さないからです。ただし局地戦なら常に起きやすい状況が続くでしょう。(以下略)
え、荒木ってそういうお考えだったの、って大変私は驚きました。1998年の時点で、荒木は次のように主張していたからです。
1998年時点での対北朝鮮強硬派の予測する北朝鮮の将来(1)
>3:戦争はおこるか、おこるとすれば、いつ、どんな形か
荒木和博:金正日の立場があやうくなったとき、韓国国内でのテロに始まり、直接の南侵へと展開するだろう。
その後彼がこの見解をひっこめたような雰囲気もなかったので、私は(本気でそう考えているかどうかはともかく)荒木は北朝鮮は現在にいたるまで常に南進をめざしていると主張すると考えていたんですが、現在は、上の見解は現実性がないと考えて放棄したんですかね。真相は、荒木さんの頭の中を見てみなければわかりませんが、そうだとしたらそれは大変結構なことです。今年で金日成がこの世を去って20年です。朝鮮戦争の休戦からも61年、だいぶ時代も違います。なお上の荒木の見解の中で、韓国は北朝鮮を制圧する能力がない、という彼の考えには私は賛同しかねますが、でもそんなに極端に非常識な意見ではありません。
それにしてもこの荒木の回答すらも、たとえば
>玉城 素:おこる。1年半後ころ非正規戦先行の打ち上げ花火型。
関川夏央:全面戦争でなければ1、2年以内に。あるいは金正日の精神・肉体が危機的となったとき。
などと比べればはるかにまともなのもどうかです。玉城はすでに故人ですが、関川は生きているんですから、このような見解についてはさすがにそれなりに自己批判をした方がいいんじゃないかと思います。彼はこの見解を公表する場で、
>北のみにとどまらず、長くコリア全体を見つづけ学んできた民間研究者たちの見方を、ここで日本政府にも端的に示しておきたいという意図もひそんでいる。読者は、これら執筆者の北朝鮮の将来へのクールな展望とともに、日本外交への強い危惧の念をも感じとって驚かれることだろう。しかし、それこそが常識人の常識であると知っていただきたいのである。
とまで書いたのですから、それなりに自分の言論に責任はあるでしょう。北朝鮮言論から身を引いたことが、自らの誤りを認めた、ということなのでしょうか。いずれにせよデマゴーグにもほどがあるというものです。
しかしですよ。いまだこんな世迷事をほざく連中もいます。引用文中西岡とは西岡力、惠谷とは恵谷治のことです。
>★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2014.05.30-2)
以下は、5月23日に、東京・文京区民センターで実施した東京連続集会79
のご報告です。
(中略)
◆救出作戦が法律上可能でないと、装備は買えず演習もできない
西岡 惠谷さんに聞きたいんですが、先ほどもいいましたが、自衛隊を使って被
害者を助けることでAとBがあるわけです。金正恩政権あるいは朝鮮労働党独裁
政権が健在であり、治安が維持されている中で、特殊部隊を使って日本単独で助
け出す作戦Aと、混乱事態が起きた時に米韓軍が動き、もしかして中国軍も出動
しているかもしれない、北朝鮮に内戦が起きているかもしれないような中でどう
助けるかというBと二つあります。
それらについて、法律のことは置いとくとして、今の自衛隊の実力で、これは
日本政府の情報機関の実力も含めてですが、助けることは可能ですか。
惠谷 まず作戦A、つまり平時において、例えばめぐみちゃんの居所が分かった
ということで救出作戦をしても実施は非常に困難です。それは模擬実験なども色
々やって、平時は基本的に無理だという結論です。
しかし作戦B、有事の場合、何らかの混乱状態が北朝鮮で起きた場合、あるい
は南に侵攻しそうだというような場合、つまり北朝鮮に混乱が予想される場合、
これもシナリオを書いて考えたことがありますが、これは十分に可能だと私は考
えています。
現状は法的な制約がありますが、しかしそれでも、現状のままでも、軍事的、
技術的に可能だと思います。
法的ばかりでなく、軍事的、技術的にも論外の沙汰でしょう。毎度おなじみの議論ですが、拉致被害者の居場所の特定なんかできるのかです。
>つまり北朝鮮に混乱が予想される場合、
これもシナリオを書いて考えたことがありますが、これは十分に可能だと私は考
えています。
どこの馬鹿がそんなシナリオを十分可能だなんて判断するのか見当もつきませんが、別に軍事機密でもないでしょうから(この人たちのお遊びでやっているだけでしょう)、どういうシナリオなんだかぜひ読んでみたいですね。
荒木ですら、全面戦争の可能性は低いと公言しているのにこの現実性のなさはすさまじいですね。大学の講座と右翼団体の集会(って、「巣食う会」の本来の立場は右翼団体ではないんですが、これは事実上極右の集会でしょう)の違いと、聴衆の違い、なのでしょうが、これまたなんとも他人を馬鹿にした連中です。
今回も、bogus-simotukareさんからさまざまな資料や考えのヒントをいただきました。感謝を申し上げます。