本日は、違う記事を用意していたのですが、こちらの記事をあらためて執筆しました。東京新聞の記事より。中日新聞の(準?)地元ですから、やはり詳細ですかね。
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教官に叱られた直後に無言で自動小銃を発砲 18歳自衛官候補生、殺意は否認 自衛隊員2人死亡
2023年6月14日 22時43分
14日午前9時10分ごろ、岐阜市の陸上自衛隊日野基本射撃場で、実弾を使った射撃訓練中の自衛官候補生の男(18)が、男性隊員3人に向けて自動小銃を発砲した。岐阜県警によると、2人は搬送先の病院で死亡が確認され、1人が負傷。男はその場で取り押さえられ、県警が殺人未遂容疑で現行犯逮捕した。捜査関係者によると、教官に叱られた直後に無言で発砲したといい、陸自中部方面警務隊と県警は容疑を殺人に切り替え、動機の解明を進める。
◆新隊員教育、最後の実弾訓練だった
県警によると、男と撃たれた3人はいずれも守山駐屯地(名古屋市)所属で、亡くなったのは25歳と52歳の隊員。捜査関係者によると、男は、教官だった52歳の隊員に犯行直前に叱られ、その教官を狙って発砲したという。
負傷した別の25歳の隊員は搬送時、意識があったという。
防衛省によると、男は今年4月、守山駐屯地の第35普通科連隊に入隊。この日の訓練は新隊員教育の一環だった。死傷した3人は、男を指導する立場にあった。6月末で訓練を終えて正式に隊員となるため、今回が最後の実弾訓練だった。候補生約70人と教官ら指導役の隊員約50人の計120人が参加し、銃を装備する手順などの検定を実施する予定だった。
◆殺意は否認、発砲は認める
男の逮捕容疑は、亡くなった隊員(25)に対し、殺意を持って小銃を発砲したとされる。県警によると発砲した行為は認めているが、殺意は否認している。
防衛省や第35普通科連隊のホームページによると、隊員には連射が可能な口径5.56ミリの「89式小銃」が貸与され、この日の訓練でも使用されていた。
現場の射撃場は、JR岐阜駅から北東に約5キロで、近くには住宅街が広がる。
それで、次のようにも報道されています。抜粋で。
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逮捕の候補生「52歳の教官が狙いだった」
警察の調べに対し、候補生は「52歳の教官が狙いだった」と供述しているということです。
候補生は死亡した25歳の隊員への殺人未遂の疑いで逮捕されていますが、この隊員を銃で撃ったことは認める一方で「殺害するつもりはなかった」という趣旨の供述をして殺意を否認していることが、捜査関係者への取材でわかりました。
25歳の隊員について「自分と教官の間にいて妨げになっていたので撃った」と説明しているということです。
警察は15日午前、容疑を殺人に切り替えて身柄を検察庁に送りました。
この事件の一報を聞いた時、私が思い出したのが、滋賀県警で、新人の巡査が交番での指導役だった巡査部長を職務で使う拳銃で射殺した事件です。2018年の事件ですね。
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加害者の元巡査Xは2017年(平成29年)4月に採用され、2018年1月29日に滋賀県彦根警察署に配属された後に、事件発生まで1か月足らずの2018年3月26日に現場交番に配属されて被害者Aが加害者Xの教育係を務めていた。
とあります。事件が発生したのが、4月11日で、頭と背中を撃たれて即死でした。この事件については、私も記事を書いていますね。
家族とか故郷とか、その人にとってかけがえのないものを悪く言うのもどうかと思う やはり裁判官も、警察の指導の方法はよくないと考えたということだ(制服を着た公務員の世界の闇も、ものすごく深い)(2月14日更新)犯人の少年の警察官は、逃亡して翌日未明に身柄を確保、その日の朝に逮捕となりました。その後
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大津地方検察庁は2018年5月2日に殺人・銃砲刀剣類所持等取締法違反(発射、加重所持)の各容疑で被疑者巡査Xを大津家庭裁判所に送致した。大津家庭裁判所は2018年5月15日までの観護措置と少年審判開始を決定し、滋賀県警は同日付で被疑者巡査Xを懲戒免職とした。
ということとなりました。少し飛ばしますと、大津地検は少年を殺人と銃砲刀剣類所持等取締法違反で起訴、検察は懲役25年を求刑、判決は22年となり、控訴がなかったのでこのまま確定しました。
で、この事件では、被害者側の指導に少年が衝撃を受け、それが事件のきっかけになったとされています。
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被疑者Xはこの時までに県警の取り調べに対し動機に関して「被害者Aから嫌がらせを受けていると感じた」と供述した
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被疑者・元巡査Xは動機に関して「被害者Aからの指導・扱いに不満・不遇感を持っており『Aから両親を侮辱された』と感じた」と供述しており、決定理由にはその旨が言及された。
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被告人・元巡査Xは犯行時の心境を「被害者・巡査部長Aから犯行直前に両親を侮辱されたことで『この人が死んだら楽になれる、撃ったら楽になれる』と考えて犯行に及んだ。躊躇・罪悪感は全くなかった」と述べた。
とあるわけです。
この事件では、懲役25年の求刑に対して22年の判決と、決して被告人に甘い判決ではありませんが、判決でも
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その一方で大津地裁は「異例の言及」として滋賀県警の新人警察官育成方法に関して「被害者が熱意を持って指導してもその思いがうまく被告人に伝わらず、被告人が感情を鬱憤させて犯行に至った側面もある」として再検討を促したほか、問題点として「未熟な警察官が拳銃を携帯していること」を指摘した
となったわけです。
新人あるいは見習身分である隊員(時に少年)が、教官に怒りを覚えて実弾の銃を撃つというは、そんなにたくさんあるというわけではもちろんありませんが、ないわけでもありません。フィクションですが、この映画は有名でしょう。
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訓練所を離れる前夜、営舎の便所にて、武器庫より持ち出したM14自動小銃に実包を装填して、止めに来たハートマンの命令を無視して彼を射殺、自身も銃口を口にくわえて引き金を引き自殺する。
というわけです。
今回の自衛官候補生は、自殺しようとしたかはわかりませんが(する前にすかさず身体を押さえつけられたかもしれない)、滋賀県警の警察官は、自殺をしようとしたようです。銃を持って外に出たということは、その可能性があったということです。もっともATMで金(限度いっぱいの50万円)を下ろしてもいるので、このあたりいろいろ頭が混乱しているところもあったのかもしれません。映画では、殺人をした人物は完全に精神を病んだ人間という設定ですが、おそらく滋賀県警の警官とこの自衛官候補生は、そこまでの状況ではないでしょう。
日本は警察も自衛隊も、実弾の管理がきわめて厳しいので、この種の事件は海外と比べて起こしにくいはずですが、それでも実弾を使用する限りこのような事件は必ず起きますからね。防ぐのは難しい。それにしても仕事の最中にこういう事件を起こすということ自体に、自分の仕事や組織に対するある種の抗議みたいな意味合いがあるのでしょうね。仕事が終わった後襲うというのと、訓練だか勤務中に教官や指導役を襲うというのは、もちろん襲うチャンスではありますが、相当な怒りが背景にあるはず。
今回の事件では、教官のどのような部分に腹を立てたかはまだ十分には報道されていないと思います。このあたり私も注視したいと思います。またこれは少年事件ですが、死刑が求刑されその判決となる可能性もないではない。いずれにせよかなり厳しい判決が予想されますし、また精神疾患などが認められる可能性もある。目が離せません。
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