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経済学の限界効用みたいなものか(所得と寿命の相関関係)

こんな記事を読みました。

適当に稼ごうが大金を稼ごうが、寿命に大きな差はない

記事のまとめの部分を引用します。

■経済的疎外がなくなってはじめて長寿社会といえる

 所得上位集団が下位集団より長生きで健康であるなら、長寿を享受するために私たちはとりあえずできるだけ多く稼ぐべきなのでしょうか。必ずしもそうではありません。所得と健康・寿命が比例関係を示すのは事実ですが、所得が増えるほどその傾きは緩やかになるからです。韓国統計学会が2017年に発刊した「国民健康保険の標本コホートDBを用いた韓国人の健康期待寿命の研究」はこれをよく示しています。

 この研究でも、明らかに所得上位層は所得下位層より平均余命と健康寿命が長くなっています。ですが中位所得(下位21%以上~上位31%以下)のグループの平均余命と健康寿命を表に加えると、グラフの傾きにはっきりとした変化がみられました。中位所得グループの平均余命と健康寿命は、上位グループと特に差はありませんでした。つまり、貧困の一定線を超えると、その後は所得の多さ・少なさが寿命や健康に与える影響は、かなり小さいということです。

 この結果の注目すべき点は、より多く稼げば寿命がより長くなり、より健康になるということではなく、人間が享受すべき基本事項の下限ラインさえきちんと守れば、人間はいくらでもより長く、より健康に生きられるということです。もしかしたら、健康に長生きする最良の方法は、他人よりも多く稼ぐために上ばかりを眺めてもがくことではなく、ほとんど人が享受することから疎外される人が出ないよう、隣りに目を配ることかもしれません。

なるほどねです。上の記事は韓国の話ですが、日本でも同じようなことが言えるのでないか。経済的に裕福になるということは、寿命を延ばすための大きなファクターではありますが、しかしある時点でその伸びがとまるということのようです。つまりは、経済学でいう「限界効用」みたいなものですかね。この限界効用というのは、

財の消費量が増えるにつれて、その財の限界効用が小さくなることを限界効用逓減の法則、または、ゴッセンの第1法則という。標準的な考え方である序数的効用の立場からは、この法則は意味を持たない。

という性質があります。つまりは下のグラフのようなものです。出典はこちら

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卑近な例を言えば、100万円の収入の人が200万円の収入になればありがたいですが、1億円の収入の人が100万円増えたって大したことはない、食べすぎれば、どんだけおいしい食べ物でも食べきれないなんていうのも、概念としてそういうものでしょう。

さてここで、次の表をご覧ください。便宜上男性のみの表で、下の方は画面ではお見せできませんので、詳細は、リンクしたサイトを直接ご覧ください。

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1965年と75年では1位から3位を東京都、京都府、神奈川県となっています。2位と3位は、京都と神奈川が入れ替わっていますが、東京は1位です。その後東京は、85年が5位、95年が20位、2005年が5位に上がりましたが、2010年が14位、2015年が11位です。京都は、10位、11位、7位、6位、3位です。神奈川は、6位、6位、3位、5位、5位です。神奈川は、長期にわたって安定していますね。

で、65年と75年では、東京と京都、神奈川が長命な都道府県であるというのは、つまりはこれらの都府県が裕福だということでしょう。医療事情が良く、都市の衛生状況もよい、ということかと思います。東京と京都が、東京大学や京都大学といった日本の医学界の元締めみたいな大学の所在地であることで明らかなように、この時代は、まだ都市と地方では、経済状態といい衛生状態といい医療事情といいそれなりの格差があったということです。1970年代に、いままで医学部がなかった県に医学部が設置されるようになり、医者も増えてきて、地方の医療事情も大きく改善、また日本社会全般の衛生事情も大きく改善されました。また自治体などの保健活動も進みました。長野県などは、減塩運動も進み、それが平均寿命の伸びにつながったと思われます。こちらの記事などを参照してください。

いまあげたのは、都道府県別の話ですが、個人もそうでしょう。人間が豊かになり、喫煙率も下がり、飲酒量も減り、食べ過ぎも控え、運動もする。そういうふうに人間もだんだんに豊かになっているわけです。やはり豊かになればなるほど人間は、平均すれば健康的な生活になるでしょう。そうすれば人間は長生きになります。しかしそういった長命化もだんだんに鈍っていき、ある段階で伸びが(ほぼ)止まるということです。

米国なんぞは、州によって平均寿命が相当に異なります。こちらの記事を引用すれば、

ハワイ州の平均寿命はミシシッピ州より9年長い

50州およびワシントンD.C.の中で、2020年の平均寿命が最も高いのはハワイ州の80.7歳、最も低いのはミシシッピ州の71.9歳であった

その結果、地域により寿命に大きな差があり、ハワイ州、カリフォルニア州、および北西部や北東部の州に住む人は寿命が特に長く、南東部の州に住む人は短いことが明らかになった。

平均寿命の長かった上位10州は以下の通り。

ハワイ州 80.7歳
ワシントン州 79.2歳
ミネソタ州 79.1歳
カリフォルニア州 79.0歳
マサチューセッツ州 79.0歳
ニューハンプシャー州 79.0歳
バーモント州 78.8歳
オレゴン州 78.8歳
ユタ州 78.6歳
コネチカット州 78.4歳

これに対して、平均寿命の短かった下位10州は以下の通り。

ミシシッピ州 71.9歳
ウエストバージニア州 72.8歳
ルイジアナ州 73.1歳
アラバマ州 73.2歳
ケンタッキー州 73.5歳
テネシー州 73.8歳
アーカンソー州 73.8歳
オクラホマ州 74.1歳
ニューメキシコ州 74.5歳
サウスカロライナ州 74.8歳

だそうです。日本では、男性に話を限りますと、こちらによれば、1位の滋賀県が82.73歳、47位の青森県が79.27歳で、3.46歳の差です。米国と比べれば、だいぶ格差が小さいわけです。なお米国で長寿の州を見ると、リベラル色の強い州が長命のようですね。短命州は、保守的な州が目立ちます。ごくおおざっぱにいうと、民主党支持の州が長命の州に目立ち、共和党支持の州は短命の傾向がある。2020年大統領選挙での選挙人獲得状況をご覧ください。前にこちらの記事でもご紹介しました。青が民主党候補(バイデン氏)、赤が共和党候補(トランプ氏)が選挙人を獲得した集です。

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いずれにせよ人間、本人の心がけ次第で、ある程度寿命を延ばすこともできない相談ではないようです。今の日本は、都道府県格差がそんなにひどいわけでもないようですから、というわけで読者の皆さまも、健康寿命を延ばして楽しい人生を送りましょう。私ももちろんそのようにとりくみます。


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