最近つくづく表題のことを考えます。すなわち
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(どういうわけかわからないが)トンデモな主張をする連中というのは、スーパーパワーの持ち主の存在を前提とする
です。
半藤一利氏を例に挙げてみましょう。彼は、日本海軍のナチスドイツ傾倒を、その理由として
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「日本海軍はなぜ親独になったのですか?」とずいぶん関係者に聞いたんです。するとみなさん「どちらもほぼ単一民族だし、規律正しいし、後進国家であったし」などととってつけたようなことばかり言う。ところがあるとき某海軍士官がポロッと漏らしたんです。「ハニー・トラップだよ」と。つまりドイツに留学をしたり、駐在していた海軍士官に、ナチスは女性を当てがったと言うんです。
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そういえば当時、「海軍はなぜあんなにナチスドイツに傾斜してしまったのですか?」と、これは何人かに聞いたのですが、「どうしてだろうねえ」などとみなさん口を濁していました。長らくこれが謎だったのですが、この十数年のち、ある取材で元海軍中佐がペロッとしゃべった。「あれはハニートラップにかかっちゃったんだよ」と。
駐在武官としてドイツに滞在しているあいだナチスは美人のメイドを日本の海軍さんに派遣したそうな。それでいつの間にかナチスの色仕掛けに籠絡され、気がついたらナチスびいきになっていたというわけです。
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某海軍士官がポロッと漏らしたんです。「ハニー・トラップだよ」と。つまりドイツに留学をしたり、駐在していた海軍士官に、ナチスは女性を当てがったと言うんです。
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それを聞いてから、ドイツ留学やドイツ駐在をした人に次から次へと尋ねたところ、半分以上は否定しましたけれど、三分の一くらいは認めましたね。どうやらアメリカとイギリスはそういうことはなかったようですがね。親米英か親独か。あるときからなだれを打って親独になった裏には、そんな情けない事情もあったんです。
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ところがあるとき、海軍中佐だった千早正隆氏があっさり真相を語ってくれたんですね。つまり、ドイツに行った海軍士官はみんな女をあてがわれて、それで骨抜きにされたんですよ。
なんていう与太を飛ばしているわけです。しかもこんなキチガイ沙汰の話を、座談会本や歴史素人との対談本、さらには青少年向けの新書でまでほざいている(呆れ)。マジで私、この人、気が狂ったのかと思いました。そしていまでもそう思っています。
それにしても半藤氏の意見もばかばかしいですよねえ(笑)。当時のドイツが、メイドの名目で、日本海軍の駐在武官のもとへ美女を送り込んだのは事実としましょう。そしてそれを楽しんだ海軍武官もいたということも事実としましょう。でもそれ、
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ドイツに行った海軍士官はみんな女をあてがわれて、それで骨抜きにされたんですよ。
とか
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ドイツへ行った武官はみんなすごくいい思いをして帰ってきた。それで、ドイツはいい国だと。
なんてことあるわけないでしょうに(笑)。
これは私も前記事で指摘しましたように、海軍武官のすべてがメイドと遊んだというものでもないでしょうし(そういうものが大っ嫌いという人もいるでしょうし、嫌いじゃないが、メイドとは不可という人もいたはず)、遊んだが割り切った人もいたはずです。遊んでメイド(ナチスやドイツにあらず)にメロメロになった人がいても、さすがにそれは、ナチスドイツ支持→軍事同盟の締結なんてことにはつながらないんじゃないんですかね。別にドイツ駐在武官の意見だけでそういうことが決まるものではないし、そのようなことが事実あったとしたら、海軍中枢だって「おかしい」「変だ」ということになって調査をするでしょう。遊ばなかった、あるいは遊んだが節度は守った武官らからも、いろいろな通報はあるはず。
そもそもそんなこと、
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気がついたらナチスびいきになっていたというわけです。
なんかの理由にならんでしょう(笑)。こんなのは、まさに私が前に書いたことを繰り返せば、
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「馬鹿も休み休み言え」「デマデタラメもいいかげんにしろ」「うそ八百ほざいてんじゃねえよ」「素人や青少年にフェイク吹き込むのもたいがいにしろ、嘘つきクズ野郎」
でしかない。が、半藤氏は、そんな「ハニートラップ」なんてアホな話を持ち出して、それを無敵なものとして持ち出すわけです。どんだけ頭がいかれているんだか。
だいたいもし半藤説が事実なら、ならドイツ以外の国もそういうことをするよなあですが、半藤氏はそれに対して
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どうやらアメリカとイギリスはそういうことはなかったようですがね。
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アメリカへ行った武官は、そんなことはまるでなかった
と予防線を張っているわけです(呆れ)。うんなことに米国や英国が、ドイツより紳士的だったなんてことあるわけないでしょうに。これは日本やソ連、フランス、中国などもご同様。当時の中国共産党はどうだか知りませんが、中国国民党がそんなことに紳士であるわけがない。半藤氏も、どんだけ嘘つきで馬鹿なんだか。
さすがにこんな非常識極まりない与太を真に受ける人がそんなに多いとは思いませんが、こんな馬鹿な話を青少年向けの新書にも書いているなんてことは、キチガイ沙汰にもほどがあるというものです。ちくまプリマ―新書の編集者は、「先生、こういう話は違うところで書きましょう」くらいのことを半藤氏に話さなかったんですかね? 話したが半藤氏が突っぱねたのか。どちらにせよあまりに非常識すぎてお話にもなりません。
これは本多勝一氏や、本多氏に変な本や変な説を吹き込む進藤栄一氏もご同様。本多氏は、米西戦争ほかをもちだして、
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そういう歴史的ないろいろな状況証拠から考えれば、真珠湾攻撃も謀略だと疑わざるを得ないわけですけれども。
と書いて(語って)いますが、そんなん戦争の規模も事由も米国の位置づけも時代も全然違うのだから、一概に言えるものではないでしょうに。だいたい本多勝一氏が支持する「ルーズヴェルト陰謀論」なんて、決定的な証拠は何もないし、仮に本当にルーズヴェルトが真珠湾攻撃を日本がするよう仕向けたのなら、それこそ真珠湾の艦船を退避させて真珠湾をからにして、日本軍への大迎撃作戦をすればいいじゃないですか。本多氏は、
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しかしワシントン政権が日本に真珠湾を攻撃「させた」とき、自国の米軍将校(引用者注:「将校」は原文のまま。将校以外にも戦死したはず)約三〇〇〇人の生命が無視されたことを思えば
とまで書いていますが、そんな無駄なことをする必要がない。日本軍が攻めてきた時点で米国民も米国議会も「日本許さん」の大合唱になり、たちまち日本を倒すためにあらゆる軍事動員や作戦が行われるでしょう。で、しかし本多氏は、そういう指摘をしたら、「敵愾心をあおるために、真珠湾の犠牲はルーズヴェルトにとって必要だった」とか与太を飛ばすんでしょうね。ルーズヴェルトは、日本との戦争は覚悟していたようですが、しかし南方での開戦を予測していたようだし、日本側にとってもハワイ攻撃はリスキーでした。たまたま成功しましたが、失敗した可能性も少なくなかった。
ところが本多氏らのお考えでは、米国(ルーズヴェルト)は、日本を実に的確に操作し、真珠湾に攻撃をさせることを確定させ、しかもそれをハワイには伝えなかった(そして米国民の日本に対する敵愾心をあおった?)ということなのでしょう。そしてしかしその証拠は、それから何十年もたっても、一向に出てこない(封印されている?)。前にも書きましたように、ルーズヴェルトはそんな天才ではない。そんなことが本当にできたら、ルーズヴェルトは古今に例を見ない戦略天才でしょう。そんなことはありえない。
ただbogus-simotukareさんもご指摘のように、真珠湾陰謀論(ルーズヴェルト陰謀論)を唱える本多氏は、どうしてそんなことを言い出すんですかね? 櫻井よしこらのような極右がこういった与太に飛びつくのは、馬鹿だとは思いますが、ただ戦争責任を相対化し、東京裁判などを否定したい連中の考えにはそぐいますから、理解しないではありません(まともな人間なら、こんなのはあまりに筋が悪すぎて、たとえ極右でもかかわりませんが、櫻井や田久保忠衛らはまともな人間ではありません)。ただ本多氏は、そういう人間ではないでしょう。米国帝国主義を批判するにしたって、別に真珠湾なんぞを持ち出す理由がない。ほかでいくらでも批判できるでしょう。
そしてこれとは全くの別件ですが、本多氏がやたら支持している東洋医学はどうか。いや、これは東洋医学というより、本多氏がやたら傾倒しているS氏(≒境信一氏)の唱えるデタラメ東洋医学ということですが。S氏(≒境氏)曰く。
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もし病人になにか異常が起きれば、それは「副作用」ではなくて「誤用の結果」であり、Bには葛根湯がもつ発汗作用ではなくて、解肌(肌をととのえる意味)作用をもたらす薬が必要なのです。医者の失敗を「副作用」などにされてはたまりません。
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「漢方薬には副作用がない」というヘンな神話がありますね。この”安全神話”をつくったのも西洋医学の側ですよ。もともと「副作用」という概念が漢方にはないのですから。あるとすれば「誤用」であって、病態(証)に合っていれば副作用的なものなどないし、合っていなければその薬の効果が別の形で出てきます。それは漢方薬の誤用ですから、副作用ではない。
それを受けて本多氏も曰く。
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いうまでもなく,ある種の漢方薬には副作用的なものもあるが,それは複雑な有機的人体に的確な薬を選ばなかったことによる誤用の場合がほとんどだ。つまり西洋医学でいう副作用とは次元の異なる現象とみるべきであって,決して医療の本質にかかわるものではない。そして,東洋医学には基本的に副作用がないばかりか,逆に「副産物」たるいいことがある。
そんなん完全な循環論法じゃないですか。ていうか、こんなことが事実なら、まさに医学の歴史をひっくり返す偉業です。S氏(≒境氏)は、その偉業を論文にして発表(もちろん査読付きのちゃんとした雑誌にですよ。当然の話)したらどうか。決して冗談じゃなくて、ノーベル賞だって夢ではない。世界中の医学者、医療関係者、医薬品メーカーなどが飛んできて、S氏(≒境氏)とともに共同研究をするはず。
が、当然ながら、そんな事態にはならないわけです。なぜそうなのかと考えれば、つまりはS氏(≒境氏)などまともに相手にするに値する人間ではないからにほかならないでしょう。本多氏に「なぜなんですか」と聞いたら、愚にもつかない詭弁をろうしてS氏(≒境氏)をかばうだけでしょう。特殊詐欺にあっている人に、「おかしいんじゃないんですか」「息子(娘、孫、甥、姪ほか)さんに確認した方がいいんじゃないんですか」と話しても、怒り出したり泣き出したり「嘘でもいいから払う!(嘘みたいな話ですが、実際にこういうことを怒鳴った人はいます)」とか言う被害者に近いものがあります。本多氏は、
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ぜひともS先生ご自身でわかりやすく独自の著書をまとめ、多くの読者の前に刊行してください。それをもとにした批判・反批判をへて、さらに東洋医学が大きく発展してゆくことを期して待ちます。
と書いていましたが、たぶん彼に、S氏(≒境氏)への批判を許す度量はない。
つまりこれも、東洋医学者を名乗る詐欺師(と言ったらひどいと思われるかもしれませんが、東洋医学に副作用はないなんて主張をする人物は、「詐欺師」と言われても仕方ないと思います)を無敵な能力の持ち主などと誤解するからこうなるのです。まったく無様で無残たらありはしない。
あるいはですよ。これでもうやめますが、「システム」なるものを信じ込んでいる(いた?)らしい、こちらの方はどうか。
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ここでも巧みな心理操作が行われています。例えば、私がテニスクラブに入ろうとしたとします。私は最寄のテニスクラブを電話帳で探し電話をかけます。システムは私が電話帳でテニスクラブを探し始めた時点で、特殊ターゲットがクラブに入りたがっているからもうすぐ電話がくるだろうという情報を流します。すると本当に私から電話がかかっています。システムは私の人相、家族構成、キャリア、服装、最近の居住地その他をテニスクラブのオーナーに教えることができます。すると本当にシステムの情報通りの人物がテニスクラブにやってきます。テニスクラブのオーナーはシステムの情報がことごとく現実化するので、システムの情報を信じるようになるのです。そして私がテニスクラブに行って、過去に経験があるとか、週に一回ほどやりたいとか、娘と一緒に練習したいとか、ついでにラケットも買いたいとか、システムの情報通りの話を始めます。さらに付合いが深まると、お寿司が好きだとか、巨人ファンだとか、妻が海外留学しているとか、すべてシステムの情報通りのことを私が話し始めます。この段階でオーナーはシステムの情報はいつも正しいと信じるようになります。システムはこれらの情報の中に黒いウソを少し溶かし込み始めます。今までの情報が正しかっただけに、真実の中に紛れたウソに気がつかず、オーナーはシステムのウソを信じてしまうのです。
この人はちょっと完全にまずい状況にあるかと思いますが、それでご当人
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私自身、よくこんな状態で発狂もせずに生き続けているなと思います。
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不思議なことに自殺する気が起こらず発狂もしていきません。
と主張しています。これではどうしようもないでしょう。他人に迷惑をかける事態にならなければいいのですが。
いずれにせよ半藤氏といい本多氏といい、最後に取り上げた人と言い、トンデモの程度に差はあるかもですが、思考様式は酷似していますね。他も同じようなものです。ユダヤ、フリーメイソン、イルミナティ、あるいは、アポロの月着陸は嘘だったと堂々と主張した副島隆彦などは米国政府をそのような無敵・無双・オールマイティなものと考えている。まったく思考様式がきわめて類似していますね。他人様の頭の中身にまで責任は持てませんが、ほんと困ったものです。心の底からうんざりします。
なお上での引用文は、下の記事からのものです。
「ハニートラップ」なんてことで、そのような歴史の話を解釈するのはよろしくない(半藤一利氏って、こんなトンデモだったのという気がする)(上) 「ハニートラップ」なんてことで、そのような歴史の話を解釈するのはよろしくない(半藤一利氏って、こんなトンデモだったのという気がする)(下) やっぱり半藤一利氏ってトンデモじゃんとあらためて思った(追記あり) この人たち(本多勝一氏と進藤栄一氏)大丈夫かと本気で思った(デマ本を真に受けて、ルーズヴェルト陰謀論を本気で信じている馬鹿な人たち) 妙な陰謀論やトンデモ科学にはまると、なかなか逃れられない(ルーズヴェルト陰謀論についての入門書を読んで勉強したい)(追記あり) けっきょくこれらの本を読めば、本多勝一氏の東洋医学の本など根本から崩壊してしまう(高橋晄正氏の著書) どうもねえ(2)