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Channel: ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
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これは金言だと思う(当然の発言であるが、それができないから不要な苦労をするのだ)

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先日ちょっと読んだ記事で(当然ではありますが)なかなかのいい言葉だと思う発言がありました。1987年に横浜大洋ホエールズ(当時)に入団、その後巨人とヤクルトスワローズで活躍した後1998年に現役を退いた大野雄次氏の発言です。大野氏は、東京・三田でうなぎ屋を経営していましたが、先月(2024年1月)いっぱいで閉店したとのこと。以下の引用で、色の変化と太字は引用者によるもの。


 現役引退後、飲食業界に参入する元プロ野球選手は多い。しかし、何年も生き残り続けることができるのは、ひと握りだ。大野はどうして成功したのか? どんな心構えで仕事と向き合ってきたのか?

「大見栄切って、単価の高い店ではなく、地道に安い単価でやってりゃ、そんなに失敗はないと思うけどね。飲食の場合、大切なのは店主として、自分がいつも店にいるかどうかということ。人任せにしたり、大儲けしようと考えたりすると失敗するんじゃないのかな?」

 そして、大野は「元プロ野球選手としてのプライド」について言及する。

「頼まれていまも野球教室をすることもあるんだけど、グラウンドでは“元プロ野球選手だ”ってプライドを持って、子どもたちを指導しているよ。でも、この店ではプロ野球選手だとかどうとかを意識したことはないよ。だって、まったく別の世界なんだから」

 新しい世界に飛び込んでも、「プライドが邪魔をしてうまくなじめない」という話はよく聞く。大野は、それを笑い飛ばした。

「オレがこの店を辞めて、ガソリンスタンドで働くとするじゃない。そこで元プロ野球選手のプライドを発揮してどうするの? ネームプレートに《元プロ野球選手・大野》って書くわけにもいかないでしょ? そんなヤツがいたらバカみたいじゃない。下手なプライドが邪魔するケースをオレもたくさん見てきたけどさ」

 大観衆が見守る華やかな世界で生きてきた人間が、そう簡単に気持ちを切り替えることができるのだろうか? そんな質問を投げかけると、社会人野球経験者の大野は鼻で笑った。

「あのね、オレは社会人で7年やってたんだよ。最初から、そんなことは理解していたよ。当然のことだよ」

大野氏は、専修大学を中退後川崎製鉄千葉に入社、社会人としてドラフト会議で指名された際は、すでに子どもさんまでいたとのこと。

で、この記事を読んで思い出したのが、昨年のちょうど今頃に発表した記事です。

元プロ野球選手のセカンドキャリアの関係もふくめていろいろ考えさせられる(入来智氏の事故死によせて)

元プロ野球選手の入来智が亡くなったのが昨年の2月10日でした。上の拙記事で引用した記事を再引用します。

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当時入来氏は浪費や離婚による慰謝料などで野球選手時代の貯金は底をつき、故郷・宮崎に戻ってもコンビニのアルバイトや酒造メーカーでの短期雇用など日銭を稼ぐその日暮らし。たまたま聡子さんが経営する美容室の前を通りがかったことで再会し、再び交際に発展。結婚することになった。

 次に入来氏が就職したのは聡子さんの兄が家業を継いで経営する仕出し弁当店。子宝にも恵まれ第2の人生を歩み始めたが、2年後に店を飛び出すことになる。から揚げの揚げ方など弁当作りで細かく注意されることが耐え切れなかったのだという。

 入来氏は「自分の中で野球やってたプライドも多少あるんですよ、やっぱり。心の調整ができなかったです」と当時を心境を口にし、聡子さんも「俺様を何だと思ってるのよ、みたいな。俺は入来やぞ、みたいな感じのところがすごく出ていた」と夫の姿勢を振り返った。

 それから仕事もせずに聡子さんの美容室に入り浸るようになる入来氏。その体たらくを見かねた聡子さんは大きな決断をする。「美容室を辞めた方がお互いに2人で頑張っていけるのかなって思って思い切って辞めました」。

 大きな起爆剤を与えられても入来氏はなかなか定職につけないまま。せっかく見つけた住宅メーカーの営業職も一時は精を出していたものの1年で退職してしまった。

 どうすれば夫は第2の人生をまっとうに歩めるのか。悩み抜いた聡子さんは「あの人は私がいない方が、ひとりで頑張れるのかもしれない」という結論に至る。そして離婚話を切り出すと、入来氏はかたくなに拒否。「野球しかしてこなかったから…。野球以外に何していいかわからない」と、これまでの苦しみや胸のうちを全て吐露し、号泣した。

大野氏は能力の高い人間であり、またご当人も語るように7年間の社会人経験がありました。おそらく彼は、社会人時代に、それ相応の経験をしていて、「野球馬鹿」ではなかったのでしょうね。入来氏も高卒→社会人(三菱自動車水島)のあとプロへ行きましたが、3年間の社会人生活では、野球しかしなかったのでしょう。それで入来のいう


自分の中で野球やってたプライドも多少あるんですよ

というのは、「多少」じゃありませんよね(苦笑、いや笑っちゃ悪いか)。おそらく彼のアイデンティティのすべて、そうでなくてもほとんどのはず。

なお記事を読んだ限りで私の感想を申し上げますと、入来兄って、発達障害めいたものもあるんじゃないかという気がしますが、実際のところはわかりません。ただそれにしても、障害があるのならその点を考慮する必要があるかもですが、社会常識というレベルで話をするのなら、「甘ったれるのもいいかげんにしろ」と言われても仕方ないと思います。が、それはともかく。

入来兄の10年間で10回転職したとかいうのもなかなかすさまじいですが、最終的にどうなったかはわかりませんが、少なくとも記事がかかれたこの当時は、大野氏のいう「下手なプライドが邪魔」した典型的なケースではないか。ほかにも具体的な固有名詞をあげるのは避けますが、下手なプライドがたたったために、よろしくない不祥事を起こしたプロ野球選手もいるわけです。

プロ野球選手とか芸能人、あるいは中央官庁の役人や政治家なんかもそうかもしれませんが、それなりに世間から注目を集めたり、あるいはそれ相応お敬意をもって扱われる仕事をしてきた人たちが、過去の威光が役に立たない仕事についたら、過去とは決別ですからね。過去のいらない記憶や栄光を引きずっても生きにくいだけです。そんなことは当然ですが、その当然のことができないと、入来兄みたいにいらない苦労をするわけです。弟の入来祐作が、二軍の用具係というシビアな立場に耐えたのも、自分の兄貴がいろいろ苦労しているところを目の当たりにして、自分はああはなりたくないと思ったということもあるはず。

いずれにせよ入来兄のようなおそらく発達障害がある可能性のある人には、親なり奥さんなりなんなりが、財布を抑えるなり、むりやりでも働かせるなりする必要がありそうですね。「自由」にさせるとろくなことがない。残念ですが、そういうことだと思います。だれもが、大野氏のようにちゃんとできるわけではない。

大野雄次氏の今後のご活躍を祈ってこの記事を終えます。


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