「おいおい」という報道ですね。
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ソラシドエア 乗客34人を乗せず出発 誘導路途中で引き返す
2024年3月11日 17時28分
11日朝、羽田空港で熊本空港に向かうソラシドエアの航空機が乗客34人を駐機場に残したまま出発しましたが、誘導路の途中で引き返し乗客を乗せて再び出発するトラブルがありました。
ソラシドエアの11便は、11日午前7時15分に105人の乗客を乗せて羽田空港から熊本空港に向かう予定でした。
しかし、羽田空港でこのうち乗客34人を乗せないまま駐機場を出発し、滑走路へ向かう誘導路の途中まで移動しました。
そのあと、乗客を運ぶバス会社からの連絡で乗客の一部が乗っていないことが分かり、駐機場まで引き返して残されていた乗客を乗せ、32分遅れて出発しました。
ソラシドエアによりますと、乗客をターミナルから駐機場まで運ぶ3台のバスのうち乗客34人を乗せた2台目のバスが誤った駐機場へ向かい到着が遅れたことが影響したしています。
ソラシドエアは出発前の確認が不十分だったとして詳しい状況を調べています。
ソラシドエアは「お客様ならびに関係者の皆様にご迷惑とご心配をおかけしたことを深くおわび申し上げます。本件の発生を猛省し、確実な再発防止策を実施することで信頼回復に取り組んでまいります」とコメントしています。
ソラシドエアは、宮崎県宮崎市に本社がある航空会社であり、スカイマークやAIRDOと同様の、フルサービスエアと格安航空会社(LCC)の中間に位置するエアです。私も数回、羽田と宮崎館、那覇→福岡間などを利用したことがあります。で、この記事を書いている2024年3月12日時点で、早くもWikipediaに、この件が記されています。
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羽田空港に於ける見切り出発2024年3月11日、羽田発熊本行き11便(定刻:午前7時15分発、ボーイング737-800型機、機体番号JA805X)が乗客105人のうち34人を乗せずに出発し、スポット(駐機場)へ戻り再出発するトラブルがあった。報道によると乗客105人に対しバス3台手配し、スポットに向かったが34人を乗せた2台目運転手が手渡されていた紙に記載されたスポット番号と機体番号を取り違え「805」の駐機場へ向かい、3台目のバスは機側に到着し乗客が搭乗しバス運転手から最終バスと伝えられ11便は定刻2分遅れの午前7時17分に出発した可能性があり、その後すぐ2台目バスからの無線報告で34人の未搭乗が機内と情報共有され、離陸前の地上走行引き返し、2台目のバスの34人も乗せて、定刻より32分遅れとなる午前7時47分に再出発し、熊本には25分遅れの午前9時35分に到着した。
105人の予定された乗客のうち、34名もの人間が未搭乗となると、実に1/3弱もの乗客が機内にいなかったというのでは、これ客室乗務員らは不審に思わなかったというのが非常に不可解ですね。直感的におかしく感じなかったのか。さすがに満席で34人不在では、「変だ」となるでしょうが、こちらによれば、席数は174席あるいは176席ということで、ということは6割前後の搭乗率です。実際には71人しか搭乗していなかったわけで、となると4割強しか乗客がいないわけで、いくら何でも客室乗務員も「ひどい」という誹りを免れないでしょう。
で、この件について私が見るに、この事件発生の一因は、この会社の定時運行へのこだわりではないですかね。いくつか記事をご紹介。日経新聞から。
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ソラシドエア、定時到着率で世界首位 英データ会社調査
2022年1月27日 20:20
ソラシドエアは英国の航空データ分析会社による格安航空会社(LCC)部門での定時到着率で、2021年分で世界1位に認定されたと発表した。ソラシドエアは自社をLCCとは位置づけていないが、各空港での作業時間の管理など定時性向上の取り組みを継続的に進めているという。
定時到着率は運航便数全体に対する、定刻から15分未満の遅れで到着した便数の割合をいい、ソラシドエアは97.9%だったという。同社は定時運航へ18年に社内プロジェクトを立ち上げ、利用者に手荷物をまとめる袋の使用呼びかけや、機内に座席位置を案内する表示を設けるなどの取り組みを進めているという。
もう1つ。
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機材ほぼ全稼働のキツめダイヤでなぜ「定時運航率世界一」に? ソラシドエアの工夫がスゴい件
2022.02.22 乗りものニュース編集部
一般的には「遅延しやすい」環境?
宮崎県を拠点とする航空会社ソラシドエアが、航空データ分析を提供する英国CIRIUM社より、定時到着率部門「The On-Time Performance Awards」で、2021年LCCカテゴリーで世界ランキング1位の認定を受けました(ソラシド自体は「LCC」を名乗っていない)。また、2020年1-3月期から、国土交通省「特定本邦航空運送事業者に係る情報」でも、3期連続でトップの定時運航率をキープしています。なぜ同社はここまで「時間通りに目的地に着く航空会社」になったのでしょうか。
CIRIUM集計では、ソラシドエアの定時到着率(定刻に対して遅延15分未満に到着した便の全体に占める比率」を示す)は「97.9%」を記録しました。ただ同社は、一般的にそこまで定時性を保ちやすい環境で就航しているわけではありません。ちなみに、2018年度の国交省集計の定時運航率は87.2%。これは国内航空会社でも下位の方でした。
というのも、本州の拠点となる羽田空港は混雑することも多く、おもに就航している九州地域の空港も、運用時間の制限が多いなどの制約があり、便間を長く取りづらいのだそうです。
また、高い定時率をうたう航空会社のなかには、予備の旅客機をスタンバイさせ、トラブルの際にすぐに代替できるようにしているところもあります。実はソラシドエアの“凄さ”はここにあります。同社の担当者によると「14機を保有していますが、予備機がスタンバイしているケースは、うち1機あるかないか」とのこと。つまり、飛行機を“寝かせない”効率的な機材繰りをしつつも、遅延も発生させない――というのがポイントで、この点はCIRIUM社からも高く評価された点だとしています。
高橋宏輔(「高」は「はしごだか」)代表取締役社長は「このギリギリの厳しいダイヤでありながらも、現場社員の努力で達成できました。本当に現場が頑張ってくれたんだなと思います。ある意味、(普段の稼働率の高い)厳しいダイヤに鍛えられていたのかもしれません」と話します。
(以下略)
2つ目の記事での社長のコメントにもあるように、つまりはこの会社は、定時運行をしていることを大変誇りに感じているということです。それは当然だし、自慢することになるでしょうが、そのためには社員にもいろいろ有形無形の圧力がありませんかね。それが、この件のような、基本中の基本、最低レベルの不備につながったのではないか。無関係ということもないでしょう。たとえば定時運行ができなかった場合における担当クルーへの人事評価の扱いが、他航空会社とくらべて厳しいとかそういうところもあるのかもですね。いや、もちろん詳細は知りませんが。
日本の、フルサービスエアとLCCとの中間の立場にあるエアは、2015年に民事再生法適用を申請し受理、AIRDOは2002年に民事再生手続を開始、当のソラシドエアも2004年6月より産業再生機構の経営支援を受けました。つまり90年代以降新規参入したエアは、スムーズに経営が成り立っているわけでもない。そういうところでいろいろなところにセールスポイントを作ったりして経営が継続する努力をしているわけですが、けっきょくパイロットやキャビンクルーなどにもいろいろ負担がかかっていそうです。そしてそういうことがセキュリティの問題にもかかわってくる。さすがにまともなLCC(ソラシドエアは、自分たちをLCCとはみなしていません)なら、ほかでコストカットしてもセキュリティはしっかりしていますが、こういった乗客の誘導などの運用の問題で思わぬ落とし穴があるということです。飛行機に限らず公共交通は運航会社や、飛行機なら航空管制に命を預けているわけで、このような基本的な問題が不備では困ります。私もいろいろなエアを利用しているわけで、ここはきっちりとした対応を求めたいところです。