このニュースを初めて知ったとき、「うわ、これやばそうだな」と思いました。地元の京都新聞の記事を(2記事ともです)。
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柔道訓練で23歳女性巡査が意識不明の重体 乱取り中に頭強打か 京都府警
2024年7月12日 14:30
京都府警の警察学校(京都市伏見区)に初任科生として入校中の女性巡査(23)が、柔道の練習中に頭を強打し、意識不明の重体になっていることが12日、府警関係者への取材で分かった。現在、入院中で重篤な状態という。
府警関係者によると、女性は1日午後5時40分ごろ、警察学校の柔道場で、柔道の授業中に同僚の初任科生と技を掛け合う乱取りをしている際に投げられ、頭部を強打し、救急搬送された。緊急手術したが、術後も意識が戻っていないといい、重篤な状態が続いている。
府警関係者の説明では、女性は今年4月に府警に警察官として採用され、柔道は初心者だった。授業には初任科生約50人が参加し、教官3人が指導していた。授業開始時、全員に体調に問題がないかを確認し、女性に異変はなかったという。
府警は「武道の訓練中、事故防止に細心の注意を払っている。授業の管理や監督上の問題があったかなかったか調査している」としている。
それでこのような最悪の事態になってしまいました。
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【速報】意識不明だった23歳女性巡査が死亡 「大内刈り」で後頭部強打 京都府警で柔道練習による死者4人目
2024年7月13日 18:01
京都府警の警察学校(京都市伏見区)で初任科生の女性警察官が柔道の練習中に頭部を強打して意識不明の重体になっていた事故で、府警は13日、女性が急性硬膜下血腫で死亡したと発表した。
府警によると、死亡したのは23歳の巡査。1日午後5時40分ごろ、警察学校の柔道場で、柔道の授業中に同僚の20代女性巡査と技を掛け合う「乱取り」をしていた際に「大内刈り」で倒されて後頭部を強打した。救急搬送されて緊急手術したが、意識が戻らない重篤な状態が続いていた。
府警の説明では、巡査は今年4月に警察官として採用された。乱取りした双方ともに柔道は初心者で、頭部を守る柔道用ヘッドキャップを装着していたという。府警は、再発防止に向けて検討チームを立ち上げた。
警務課の堀田英克次席は「お悔やみ申し上げる。今回のようなことが二度と起こらないよう再発防止を徹底していく」と話した。
府警は、公務中の殉職として巡査を1階級昇任の巡査部長とした。府警で柔道の練習による死亡事故は1969年の男性巡査部長=当時(25)=以来、今回で4人目となる。
お亡くなりになった女性警察官の方は、まったく気の毒としか言いようがないですね。ご冥福をお祈りいたします。
私はもう11年も前の発表になりますが、次のような記事を書いています。
柔道が危険なスポーツなのではない、日本の柔道が危険なのだ我ながら挑発的な題名だと思いますが、日本の柔道が、世界的にも事故が多いという問題について論じた名古屋大学の内田良氏の本「柔道事故」を書評というより紹介した記事です。
内田氏は学校での部活動などでの柔道事故を中心として論じていますが、今回は警察学校での初任科の生徒による柔道訓練です。部活動ですと先輩による無茶な稽古や顧問の無茶な指導といったものが大きな要因としてあげられるでしょうが、これは公務員の職務の一環としてのものであり、また
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頭部を守る柔道用ヘッドキャップを装着
とあるわけで、それ相応の安全策を施しています。また
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授業には初任科生約50人が参加し、教官3人が指導していた。授業開始時、全員に体調に問題がないかを確認し、女性に異変はなかったという。
とあるわけで、これは私の勝手な推測になりますが、おそらく指導の際における不備みたいなものはなかったんじゃないんですかね。もちろんわかりませんが。
今回の件は、非常に当たり所が悪くて、それでいけなかったという可能性が高いのではないかと思います。女性の死因である急性硬膜下血腫というのは、頭部を強打したことによって生じます。ボクシングや柔道、ラグビーなどでの死者はこれによるものが多いようです。Wikipediaリング禍を参照してください。昨年末の試合で意識不明になり、今年2月2日に亡くなった穴口一輝も、「右硬膜下血種」だったとのこと。彼は、ついに意識の回復がありませんでした。で、ちょうどその試合についての見解が発表されました。
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4度ダウンした日本タイトル戦後に死亡、試合続けたJBCとレフェリーの判断「問題なし」
2024/07/11 09:16
日本ボクシングコミッション(JBC)は10日、昨年12月の日本バンタム級タイトル戦後に右硬膜下血腫で手術を受け、2月に23歳で亡くなった穴口一輝選手の事故検証委員会の報告概要を明らかにした。試合でのJBCの対応に大きな問題はない、と結論づけている。
ボクシング・日本バンタム級タイトル戦で堤聖也(左)と対戦した穴口一輝(2023年12月撮影)
試合は穴口選手が堤聖也選手(角海老宝石)と対戦し、4度のダウンを喫して判定負け。JBCが3月に法律、医学などの専門家による検証委を設置し、事故を調査した。報告では「穴口選手による異常な挙動はなく、最後まで続けさせたJBCとレフェリーの判断に大きな問題は見られない」とした。
再発防止に向け、JBCに不適切な減量方法の危険性の周知などを求めている。
これらの見解について異論を唱える向きもあるかもですが、おそらく今回の柔道事故では京都府警側にこれといった問題は見当たらないというのが実情でしょうしね。今回の事故の場合大内刈りをかけられて後頭部を強打したとのことで、大外刈りなど背中から倒れる技というのはこういった危険があり、初心者の柔道では大外刈りはやばいという説もあります。「大外刈りのない柔道なんて柔道じゃない」と考える人も多いでしょうが(私も柔道経験者なので、そう思っています)、しかしこういった事故が起きると、やはりそういったことも考慮せざるを得ないでしょう。
そう考えると、やはり柔道もそうですが、スポーツというものが内在的に持つ危険さというものをあらためて考えざるを得ませんね。たまたま次のようなHPを目にしました。日本ラグビー協会のものです。
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(通達)2024年度 安全対策強化のお願い
2024.2.29 (木)
大会・試合通達
【安全対策】
2023年度は2023年2月末時点で重症事故報告が16件届いており、死亡事故も2件発生しております。皆様におかれましては、あらためて安全対策の強化を目的として以下の4項目への取り組みをお願いいたします。
自転車競技での事故や、トライアスロンでの遠泳での事故、素人のものであってもマラソン大会での事故(松村邦洋氏など、東京マラソンで心肺停止になったくらいです)などもある。格闘技やラグビーなどの「いかにも」の競技ばかりが危険なわけではない。
そう考えると、こういっては身もふたもないのレベルになりそうですが、前記事とは言っていることが違うということになりそうですが、スポーツの持つ潜在的な危険さというのは、もう少し考慮すべきなのかもですね。ていいます、事故多発と新型コロナの蔓延のせいもあり、さすがにひところほどは行われてはいないと思いますが、組体操なんてものが運動会(体育祭)でやたらされていたのもひどい話です。下のようなものをやっていれば、事故にならないほうが奇跡です。
大中ピラミッド(大阪府八尾市立の中学校における組体操事故)
「感動」とは安全に優先するものではないと思う(そもそも「組み体操」で「感動」なんか私はしない)(1)ところで女性警察官の死を伝える記事で、京都府警における柔道練習での4人目の死者というのを読んだ際、「え、そんなに亡くなっているの?」と驚いたのですが、前回が1969年ということを知り、なるほど、半世紀以上死者は出なかったのだなと思いました。救急医療の発達や、さすがにセキュリティ面での配慮がすすんだということでしょうが、ともかくいろいろなことが発達・進化してもこのような事故を防ぎきることはできない、困難ということであり、ご遺族はもちろん関係者ともどもいろいろ複雑な心境になりそうです。とくに今回の犠牲者の女性警察官と乱取りをした人は、一生のトラウマになります。正直警官を続けるのも困難ではないか。「心のケア」なんて言い方もされますが、本当に心配です。