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Channel: ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
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石井一氏の主張は、とくに暴論でも突飛な意見でもない

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しばらくぶりに拉致問題関係の記事を。少し旧聞なのはご了承ください。

拉致被害者「とっくに死亡」=石井一元議員が発言

 政界を引退した民主党の石井一元自治相は29日、神戸市内で開いた自らの旭日大綬章記念パーティーで、北朝鮮による日本人拉致問題について「日本政府は(拉致被害者の)横田めぐみ(さん)その他を返せと騒ぎまくっているが、とっくに亡くなっている。違和感がある」と発言した。

 石井氏は、出席者に配布した「私の主張」と題した文書でも、「北朝鮮が一度死亡と発表した方々を改めて生存しているとする可能性は、とても低いのではないか」と指摘した。北朝鮮からの再調査報告を控えた時期だけに、関係者らの批判を招く可能性もありそうだ。
 記念パーティーには民主党の海江田万里代表も出席した。(2014/08/29-20:50)2014/08/29-20:50

このような発言をすることが、政治的な判断で妥当かどうかとか、石井氏にとって得か損か、といった議論はまた別ですが、別に石井氏の発言の内容自体はとくに暴論だったり事実誤認もはなはだしい、といったことではないと思います。世間がなかなか口にできないことをはっきり表明した、というレベルのものでしょう。

ほかにも産経新聞の記事を。

>めぐみさんめぐる発言…民主・石井一氏、改めて「帰国あり得ない」 

2014.8.30 23:20

 神戸市で29日に開かれたパーティーで、北朝鮮による拉致被害者、横田めぐみさん=拉致当時(13)=らについて「もうとっくに亡くなっている」と発言した民主党の石井一元国家公安委員長(80)が30日、産経新聞の取材に応じ、「北朝鮮が一度、死亡を認定した人が日本に戻ってくることはあり得ない、という趣旨で話した」と改めて主張した。

 石井氏は「拉致被害者の家族が『生きて帰ってきてほしい』と思うのは当然だし、帰ってくれば、それ以上にうれしいことはない」と話しながらも、「金正日(キムジョンイル)総書記が小泉純一郎首相(当時)に伝えた拉致被害者の『死亡』という事実は大きい。いったん受け入れたものを、ひっくり返せるのか。被害者家族を思えば痛ましいことだが、それはほとんど不可能に近い。国際社会としては決着がついている話だ」と同様の主張を繰り返した。

 そのうえで、「(被害者家族が)かわいそうだから返せ、と騒ぐこと自体がマイナスなことではないか」と述べ、発言を撤回する考えはないとした。

 一方、民主党の長島昭久党拉致問題対策本部長(52)は30日、産経新聞の取材に対し、石井氏の発言に関し、「元気に戻ってくることを待ち焦がれている横田ご夫妻の心を踏みにじる言語道断の発言だ。民主党の政策、方針とは全く関係がなく、直ちに撤回してほしい」と述べた。

 さらに、長島氏は「(拉致問題の進展も想定される)この時期にこういう発言をすることが国益を毀損(きそん)することはもとより、どういう利益があるのか理解に苦しむ」と話した。

拉致被害者家族「信じていない」「無視」…民主・石井一氏の発言にあきれ顔

2014.8.30 23:36

 横田めぐみさん=拉致当時(13)=ら拉致被害者の安否について「もうとっくに亡くなっている」と述べた民主党の石井一氏。拉致問題に取り組む警察庁を所管する国家公安委員長を務めた経験もある。何の根拠もなく、被害者の生死をもてあそぶような発言をした石井氏に対し、拉致被害者の家族は怒りを通り越し、あきれかえるばかりだった。

 めぐみさんの母、早紀江さん(78)は「よくあんなことを考える人がいるなと思います」とし、「あんなことは全然信じていません」ときっぱりと語った。父、滋さん(81)も石井氏の発言には根拠が全くないため、「無視するしかない」と静観する考えを示した。

 拉致被害者らの再調査結果が9月上旬にも北朝鮮から伝えられるのを前に、被害者家族は期待と不安のさなかにいる。

 有本恵子さん=同(23)=の母、嘉代子さん(88)は「向こう(北朝鮮)と交渉している今は一番大切な時期なのに」として、「ようあんなこと言っているなという感じです」とあきれた様子。父、明弘さん(86)は石井氏の発言が自身の旭日大綬章受章記念パーティーで出たことに触れ、「(石井氏が)どんな功労者かは知らんけれど、こんなことをいう人に章を出しっぱなしでいいのか」と述べた。

>めぐみさんの母、早紀江さん(78)は「よくあんなことを考える人がいるなと思います」とし、「あんなことは全然信じていません」ときっぱりと語った。

信じる、信じない、という感情論の問題じゃありませんから。石井氏は、

>金正日(キムジョンイル)総書記が小泉純一郎首相(当時)に伝えた拉致被害者の『死亡』という事実は大きい。いったん受け入れたものを、ひっくり返せるのか。被害者家族を思えば痛ましいことだが、それはほとんど不可能に近い。国際社会としては決着がついている話だ 

と氏なりの論拠をもってその主張をしているのですから、それを批判するのなら、その論拠に基づいて批判すればいいでしょう。拉致被害者家族がそのような反応をするのはある意味当たり前かもしれませんが、別にその反応自体は、石井氏の主張が妥当でないことを論証しません。だいたい信じないなんて話は、小泉首相が最初に北朝鮮を訪問した2002年からずっと言われていることじゃないですか。

といいますかそもそも、安倍晋三は最初に首相だった際、横田さんたちに、めぐみさん生存は絶望的だという趣旨の話をしたという説もあるんですけどね。私も以前この件で記事を書いています。

空しい話

この記事で、私は吉田康彦『「北朝鮮」再考のための60章―日朝対話に向けて』という本の記述を一部引用しました。再引用します。

>「拉致問題の解決なくして国交正常化なし」が安倍前首相のワンパターンの方針だった。「解決とは何か」と二〇〇七年二月に訪日したチェイニ−米副大統領に問われた安倍は、?被害者全員の救出、?実行犯引渡し、?全容の解明、の三点を挙げた。
 同時に安倍は、横田滋・早紀江夫妻に会い、「めぐみさんが生きている可能性は九九%ないが、政府としては”生きている”という前提で北に圧力をかけるから同調して欲しい」と求めたという。拉致被害者家族を長年取材し、官邸にもパイプをもつ新聞記者の証言である。(248ページ) 

この記述が事実かどうか、その真偽を私は(当然ながら)知りませんが、私の知る限り安倍も横田さんたちも、この記述について出版社や著者に抗議はしていないような・・・。すみません、していたら追記・訂正しますから、いまコメント欄を閉じているので、知っている方はmccreary@mail.goo.ne.jpにご連絡ください。個人的には私は、上のような会話はたぶんあったのではないかと推測しています。

正直私も、石井氏の主張する

>金正日(キムジョンイル)総書記が小泉純一郎首相(当時)に伝えた拉致被害者の『死亡』という事実は大きい。いったん受け入れたものを、ひっくり返せるのか。被害者家族を思えば痛ましいことだが、それはほとんど不可能に近い。国際社会としては決着がついている話だ

という意見は、きわめて「ごもっとも」という以上の話ではないと考えます。「そうであってほしい(あるいはほしくない)」という願望をあんまり触れ回るのはよくないでしょう。結果として横田めぐみさんが本当に日本に帰ってきたら、それは奇跡といってもいい話でしょう、というか、そもそも帰国した日本人拉致被害者らの存在自体、私は奇跡のようなものだったと思います。

それで、政府(官房長官談話)などでも、石井氏の発言への批判は避けているような・・・。内閣改造とかとかぶっていたので言及する余裕がなかったのか、あるいは言及したらかえってやぶへびになると考えたのか、そのあたりの理由はともかく、拉致問題というのはやはり風化したのでしょう。石井氏が現役の国会議員なら、ここまでつっこんだ発言はしなかったのでしょうが、もうそんなに話題を得るテーマでもないのでしょう。

今回も、bogus-simotukareさんの記事をいろいろ参考にしました。感謝を申し上げます。


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