以前次のような記事を書きました。
そこで私は、内田良名古屋大学大学院准教授の著書「柔道事故」を読んだうえで
>日本において、学校体育で柔道ほどたくさんの死者が出ているスポーツはほかにありません。ボクシングなども危険なスポーツですが、なんだかんだいってもアマチュア、プロとも競技人口が多いとはいえない。しかし柔道は(だいぶ競技人口は減っているとはいえ)、中学にも普通に部があるスポーツです。そのようなスポーツで、部活動の枠内でこの30年弱で100人を優に超える中学生・高校生らが死亡しているというのはなんとも怖い話です。
と紹介しました。この記事は、自分でいうのもなんですが、はてなブックマークでも280を超えるブックマークをいただきました。記事自体は、内田准教授の本の内容をかいつまんで紹介しただけですが、やはりその内容が非常にショッキングだったのだということなのでしょう。
上の記事を書いたのが2013年9月、「柔道事故」が発売されたのが2013年6月です。それで昨年12月、内田准教授執筆の次のような記事が公開されました。
柔道事故 死亡ゼロが続いていた――マスコミが報じない柔道事故問題「改善」の事実
>ここ数年で、柔道界は大きく変わりました。いまは頭部外傷の防止をはじめ、安全対策に積極的に取り組んでいます。お陰さまで、2012年から今日までの約3年間は、死亡事故ゼロになったんですよ
(太字は原文のままです。下の引用も同じ)
そして次のような記事も書かれています。
柔道の死亡 なぜ減ったのか――「頭部外傷」への関心が重大事故防止のカナメ
>結論を先に端的に示すならば、死亡事故が減った最大の理由は、死亡の原因が「頭部外傷」にあることが柔道指導者に認知され、頭部外傷に重点を置いた対策が徹底してとられたことに求められる。
そんなに早く効果が出るのであれば、それならもっと早く動いてほしかったと強く思いますが(これは内田准教授も強調されています)、ともかく動いてくれたのはいいことです。そしてそれが大きな効果を上げているのであればなおさらです。
柔道界が、世間の目からすれば意外なほど早く対策を講じるに至ったのは、「柔道事故」の出版、マスコミの報道が想像以上に効果があったということでしょうが、あと東京オリンピックが2020年に開催されることになり、さすにがこういった問題にも以前よりも熱心に取り組まざるを得なくなっているという側面もあろうかと思います。私はオリンピック開催にはずっと反対してきましたし、開催が決定した今日でも、オリンピックより優先して金を使うことはたくさんあるだろと思いますが、しかしこういったことはオリンピック開催の一つの肯定すべき効果なのかもしれません。
そう考えると、柔道でできるんだから、他のスポーツでもその気になればいろいろなことができるんじゃないのという気がします。柔道というのは、正直体罰とかそういうものは他のスポーツの平均よりもかなりひどいと思うので、柔道でいろいろなことが改善できるのなら、他のスポーツではなおさらだと考えるわけです。
いや、上の話は、「頭部外傷」の話で、体罰とかは改善されていないんですかね。そのあたりは詳らかでないですが、そういった方向も改善していかないと、柔道人口は減る一方じゃないのという気はします。最近有名柔道家の子ども(最近亡くなった斉藤仁や小川直也らの息子など)がけっこう活躍していますが、これってある意味柔道人口が減っていて柔道競技者の層が薄くなっていることがその活躍の一因ではないかい、とも思います。レスリングとか男子の体操って、親がレスリングや体操の選手、あるいはなんらかの関係を持っている人が多いじゃないですか。ボクシングなどもそのような傾向があるかもです。もちろん柔道はまだまだ競技人口が多いですが、しかし昔と比べればだいぶやる人間が減ってきているのも確かです。
いろいろ日本の柔道に関して批判的な事を私は書いていますが、そういいつつ私も、多少真面目にやった運動競技は柔道だけです。日本の柔道が安全なスポーツになってくれればとてもうれしく思います。どうか死亡事故がない日々が、続きますように。