こんなニュースを読みました。
>万引き止められぬ高齢者の実情 罪悪感覚えながら抑制できず
福井新聞ONLINE 3月25日(水)8時13分配信
福井県内の万引による摘発者のうち、4割近くを65歳以上の高齢者が占めている。初めて手を染める高齢者も少なくない。堅実に生きてきた彼らが、なぜ罪を犯すのか。動機や背景を追った。
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作業台に山と積まれた洗濯挟みを、作業服姿の20人余りの男たちが一つずつ手に取って検品していく。彼らの多くが白髪交じりで、手には深いしわが刻まれている。私語は一切ない。じゃらじゃらじゃら、とプラスチックの乾いた音だけが室内に響く。ここは福井刑務所の「第七工場」。高齢や身体が不自由な受刑者が平日の午前4時間と午後3時間、作業に従事している。
県内で65歳以上の高齢になってから犯罪に手を染める人が後を絶たない。県警によると2013年の65歳以上の摘発者は280人。平成に入ってから実に10倍に増え、このうち初犯は半数を占める。
最も多い犯罪が万引で、同年183人(初犯81人)。万引で摘発された未成年者90人の倍以上になる。
万引全体の摘発者数は02年をピーク(1093人)に、13年は44%(476人)にまで減った。しかし高齢者の摘発者数は高止まりし、08年に未成年者を逆転した。
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「また入れた」
店員のささやく声が男性の耳に確かに聞こえた。振り切るように足早にスーパーの出口に向かったが、呼び止められて観念した。
服の下に隠したのはホウレンソウ、菓子、パンなど計5千円分。財布にお金はあった。万引で見つかったのは8回目。昨春、75歳の男性は窃盗の罪に問われ、福井刑務所で初めて服役した。
建築塗装業を営み、仕事一筋で生きてきた。妻と2人の子どもがいる。しかし仕事を辞めた後は生活が一変。収入源を失い、月5万円の国民年金だけが頼りとなった。小遣いは月1万円。千円貯金するのがやっとだった。
再就職も試みたが、働き口はなかった。サラリーマンの息子と同居し、家に借金があったわけでもない。ただ、漠然とした将来への不安が常に頭にあった。「持ち家だし土地もあるが、先々無事に暮らしていけるかどうか…」
ある日立ち寄ったスーパーで、気が付くと食品を一つレジを通さずに持ち帰っていた。「それまで万引はおろか、スーパーに行く機会もなかったのに、何か糸が切れた状態になってしまった」
それからは、週1度ぐらいの頻度で罪を重ねた。盗んだのは野菜や菓子類のほか、ホームセンターでくぎを盗んだこともある。
初めて店にばれた日、妻は交番で涙を流して謝ってくれた。それでも盗み癖は直らず、息子に「家を出て行け!」と罵倒された。家族の前で土下座し、5分間頭を下げ続けた。「二度と迷惑はかけまい」と、そのときは心底から誓ったはずだった。
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刑務所に入って数カ月間、家族との連絡が途絶えた。見放されたのか―と不安を募らせていたある日、妻と息子が突然、面会に来てくれた。「体は大丈夫?」。持病の腰痛を気遣う言葉に、涙が止まらなかった。以来、妻と手紙のやりとりを始めた。最近妻が大病を患い、手術したことが気がかりだ。
所内で取材に応じた男性は、捕まる前からずっと罪悪感を覚えながらも、自分を抑えられなかったという。「それなのに、妻は『何年でも待ってるから。心を入れ替えて、真っ正直になって戻ってきて』と言ってくれたんです」。取材の最後に、男性は震える声を絞り出した。「しっかり罪を償い、家族の元に帰りたい」
.福井新聞社
いろいろ考えますが、上の記事のような人(たち)は、本当に困りますよね。前に私はこのブログで、このような窃盗を繰り返す人たちについての記事を何回か書いたことがあります。
窃盗症(クレプトマニア)について知ってほしい あらゆる人間が不快になり、迷惑をする救いのない話この記事を読んでいても、
> 建築塗装業を営み、仕事一筋で生きてきた。妻と2人の子どもがいる。しかし仕事を辞めた後は生活が一変。収入源を失い、月5万円の国民年金だけが頼りとなった。小遣いは月1万円。千円貯金するのがやっとだった。
再就職も試みたが、働き口はなかった。サラリーマンの息子と同居し、家に借金があったわけでもない。ただ、漠然とした将来への不安が常に頭にあった。「持ち家だし土地もあるが、先々無事に暮らしていけるかどうか…」
ある日立ち寄ったスーパーで、気が付くと食品を一つレジを通さずに持ち帰っていた。「それまで万引はおろか、スーパーに行く機会もなかったのに、何か糸が切れた状態になってしまった」
それからは、週1度ぐらいの頻度で罪を重ねた。盗んだのは野菜や菓子類のほか、ホームセンターでくぎを盗んだこともある。
とありますから、別に生活に困っているわけではないですよね。野菜や菓子やくぎを万引きすることが家計の足しになるわけでもないし、これはやっぱり精神の病なんでしょうね。
こういう犯罪は、店が困るのはもちろん、捕まえる警察も、起訴して裁判にする検察官も、裁く裁判官も、弁護する弁護士も、犯罪を犯す人間の周囲の人も、そして不徳のいたすところとはいえ犯罪を犯した本人も、不快にもほどがあります。万人が迷惑をし、不快になる犯罪です。犯罪というのは万人が不快になるのは当然ですが、このような犯罪はやる必要性も(当たり前ですが)ありません。このような窃盗常習者は、前に紹介したような事実上刑務所が保護施設化しているような知的障害者というわけでもない。じゅうぶん精神障害者なのかもしれませんが、窃盗癖というのはやはり精神医学のアプローチでどうこうするしかないのでしょうね。
アルコール依存症やニコチン依存症なら罪にはならないし(未成年でなければ)、ギャンブル依存もそれ自体なら罪にはなりませんが(ただし世の中の凶悪犯罪をみると、ギャンブルによって多額の借金を抱えてそれが犯罪の引き金になったケースはたくさんある)、これは文字通り犯罪をすることに依存しているわけだから、お話にならないのにもほどがあります。上で私は、
>窃盗癖というのはやはり精神医学のアプローチでどうこうするしかないのでしょうね。
と書きましたが、精神医療にも限界がありますしね。窃盗はそれ自体が罪になるものですが、ひどい窃盗癖の人間は、こちらの記事で紹介したように、実刑判決を受けて服役の待機中にすら窃盗をするくらいです。そこまでしなくったっていいだろうと思いますが、やってしまうわけです。悪質さの次元は違いますが、世の中強盗殺人で奪った金ですぐパチンコ屋に行く人間すらいるくらいですから(つまりは完全なギャンブル依存のわけです)、正直究極のところはどうしようもないと思います。自分は当事者にならないのは当然として、自分が迷惑を受けない立場でもありたいものだと思います。