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Channel: ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
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スコットランド独立の下地がだいぶできてきているように思う

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過日執行されました英国の選挙(下院、あるいは庶民院。日本の衆議院)で、事前の予想では、与党の保守党も野党の労働党も単独過半数は難しいのではないかというのがもっぱらの予測でしたが、結果は保守党が単独過半数で勝利をおさめました。

それで今回私が注目したいのは、スコットランドの話です。今回労働党が予想外に議席を取れなかった理由はいろいろですが、大きな理由の1つが、労働党が非常に強かったスコットランドで惨敗したことです。なにしろスコットランドの選挙区はScottish National Party 、訳が一定しないので、この記事では以下「SNP」)がほぼ完全に制覇したのですから、正直労働党が勝てるわけがない。Wikipediaの記述を借りれば

>2015年5月、イギリス議会選挙でSNPはスコットランド選挙区に割り振られた59議席の大半である56議席を得るという結党以来の躍進を果たした。

というわけです。

スコットランドというと、話題になったのが、昨年行われました独立(2016年)を問う住民投票です。これは、反対が約55%、賛成が45%と事前の予測よりだいぶ差が開いたと報じられましたが、同じ英国でも北アイルランドのような不安定な立場でもないし、他の欧州のバスクやコルシカのようにテロとかが起きていたようなわけでもないスコットランドで独立を問う投票で10ポイントしか差がなかったというのは、けっこう凄まじい話のように思います。

実際、このときに投票を棄権した、あるいは独立反対票を投じた人たちの中にも、独立に賛成するが、2016年の独立はあまりに拙速にすぎ賛成しかねる、という有権者もかなり多いはずで、そういう人たちも、こんど住民投票を行う際は、独立に流れる可能性はかなりあると思います。おそらくですが、スコットランドの経済状態が良ければ、では独立に、という票がだいぶ増えるはずです。悪ければ、では英国の一員である方がいいとなるでしょう。このあたりは、SNPの今後の腕の見せ所かもしれません。

このまま行けば、5年以内とまでは言わずとも、20年くらいのスパンでそれなりの経済状況をスコットランドが継続できれば、ほんとに独立まで行くかもですね。英国の選挙はご存知のように小選挙区ですので、民意の反映に問題はありますが、スコットランドの有権者は、SNPに国政でも期待しているわけです。いままでSNPは、労働党と協力関係をもつため国政では労働党に議席をゆずっていた面があったわけですが、昨年の住民投票で(当然ですが)労働党が反対を表明したために、もはや国政も労働党にゆずる段階ではないという判断があったのかと思います。スコットランドでのSNPの力の強さを考えれば、独立はしなくても、SNPはスコットランドの半独立的な地位を獲得して行くんじゃないんですかね。もしこのままSNPがスコットランドの選挙区を押さえていけば、労働党は今後の選挙でも非常に苦しくなりそうです。

そうなると、英国で行われる予定の、EU離脱の国民投票はいろいろ興味深いですね。さすがに離脱はないんじゃないのという気もしますが、ほんとに離脱したらスコットランドは英国を見放す可能性もあります。英国は、なかなかスコットランドを見放すことはしないでしょうが。スコットランド独立を阻止するために、さまざまなスコットランドへの好条件や自主独立性を提起したり容認することになるかもです。たぶんそうなると思います。英国がEUを離脱しなくてもです。

それで、国政でも現在のSNPの強さを見ると、スコットランドでは相当に独立への下地は整っているように思います。2014年の住民投票はまだ時期尚早だったとしても、否決後も着々と準備は整ってきている。今後は、スコットランドが相当ひどい不景気になるとか、保守党、労働党などによりSNPの牙城が崩れる、というようなことがあればどうかですが、このまま行くとスコットランドはやはり独立の方向へシフトするんだろうなと思います。スコットランドの有権者が、イングランドに世話にならなくてもやっていける、と考えれば、スコットランドの独立は時間の問題です。その日が来るかどうかはわかりませんが、今回の選挙の結果は、その日が近づいたのだと思います。もちろん今後はわかりません。しかしこの選挙の結果は大きな一歩でしょう。

それにしてもやはり経済の力はすごいですね。つまりは、北海油田の存在がスコットランド独立をあと押しているわけですから。Wikipediaの「スコットランド独立運動」にも、

>1970年代、スコットランドに近い北海油田が開発され、イギリスに莫大な利益をもたらす一方で、スコットランドのナショナリズムを刺激した。スコットランド議会は1707年のイングランドとの合併以来、ウェストミンスター議会に統合されていたが、独自の議会設置を求める声が高まった。1979年の議会設置の是非を問う住民投票では、賛成派の投票者が過半数を超えたが、結果的に否決された。しかし1997年に、スコットランド出身のトニー・ブレア政権の下で再度住民投票が行われ、今度は可決された。

とあります。それにしても、労働党がスコットランドの自治を推し進めたことが、スコットランド独立問題に火をつけて、それが労働党の首を絞める結果になったことは、世の中そんなものだとは思いつつもいささか皮肉なことではあります。

今後のスコットランド独立問題がどうなるか、拙ブログなりに見て行きたいと思います。なお、写真は2011年のSNP内閣です。


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