過日の産経新聞に、私のような物好きにとっては非常に興味深い記事が発表されました(魚拓)。
>2015.8.8 05:01
【主張】日朝外相会談 政府の「本気」が問われる
(前略)
安全保障関連法案をめぐる国会審議で、朝鮮半島有事の際の拉致被害者について問われた安倍晋三首相は、「米国が拉致被害者を救出することが可能な状況が生じた場合も想定しながら、被害者の情報を提供し、安全確保をお願いしている」と答弁した。
悲しいかな、これが現実である。自衛隊は拉致被害者を救出することはできない。交渉による奪還を急ぐしかないのだ。
(後略)
いやー、ついに産経新聞も、自衛隊による拉致被害者救出とかいうことはできないと認めたのですね。慶賀の至りです。正直「なにをいまさら」とか「福田康夫氏や菅直人氏が同じこと主張したら、お前ら口を極めて罵るんじゃないの」と思いますが、でも「できない」と認めたということは大変良いことです。
もっともこの産経の社説も矛盾していて、(後略)としましたが、この記事の最後は、次のようにまとめられています。
>制裁強化などの行動を伴ってほしい。
おいおい、交渉するのに「制裁強化」はないだろう(苦笑)。
先方と交渉するにあたって、「おれはお前に対する制裁を強化する。しかし交渉はしよう」なんてふざけた話はないでしょ(笑)。何をこんな馬鹿なこと書いているんだか。まあ産経新聞の本音はわかって、これはこれで興味深いですけど。
いずれにせよ、こういう社説を発表したんだから、産経新聞は今後「自衛隊による拉致被害者救出」なんて話はしないんでしょうねえ。いや、安倍が首相を辞任したらまた話は変わるんでしょうか。ここは興味深く動向を見守りたいところです。いずれにせよ、産経は明々白々に社説で、拉致被害者の自衛隊による救出を不可能であると書いたわけで、これは言質となります。今後もし産経がそのような世迷言を主張したら、この社説を持ち出して、産経を攻撃できるわけです。だいたいこれも年がら年中同じことを書いていていいかげん私も飽きていますが(でも仕方ないよね。巣食う会も家族会も十年一日(実際は10年以上です)で同じことを主張しているんだから)、拉致被害者の所在がわからないんだから自衛隊による救出なんて論外だし、それ以前として拉致被害者の生存すら確認できないんだから、議論するのも馬鹿馬鹿しいにもほどがあるというものです。巣食う会の連中はともかく、家族会の人たちは、よくまあこんな与太に長年つきあっているものだと思います。
それでですよ、安倍晋三にすら国会答弁で自衛隊による拉致被害者救出はできないといわれてしまい、お友達の産経新聞にすらできないと書かれてしまって、巣食う会や家族会は、今後どうするんですかね。これはさすがに引っ込めるか、それともしばらくおとなしくしていて、安倍が首相を退陣したらまた主張を始めるのか。それとも今後も主張を続けるのか。
上の産経新聞の社説のタイトルにもあるように、日朝は外相レベルで折衝を行っています。事務方による協議とちがって、大臣(政府高官)のたぐいが前面に出てくると、容易には引き返せません。そのあたり、安倍は覚悟ができているんですかね?
読者の皆さまご存知の通り、私は安倍晋三という男が大っ嫌いです。どれくらい嫌いかといえば、私の浅田真央への嫌い方なんて、安倍と比較すればかわいいものであるくらいです。しかし北朝鮮・拉致問題に関しては、私は安倍にそれなりに注目しています。何回も書いているように、右翼も産経新聞も自民党も安倍には極甘ですから、ほかの人間ならできないことも安倍ならできてしまいます。つまり北朝鮮との関係改善は安倍だからできる可能性があるということもいえるわけです。
しかしそうなると、さすがに巣食う会とか家族会は、行動の整合性があまりにとれませんよねえ。増元照明氏が次世代の党から衆議院選に出馬したくらいで、安倍への不満はかなり高まっているのではないかと愚考しますが、このあたりどういう態度で出るのか、いろいろ面白そうです。
なお荒木和博は、
>現実は何も変わっていません。万に一つ、「報告」が早まったとしてもそれが全拉致被害者の帰還に通じる可能性はさらに万に一つ、つまり「億に一つ」でしょう。北朝鮮のみならず外務省の交渉への過大な期待はもはや捨てるべきです。
と書いていますので、交渉には否定的なようですね。ところで本来ならほかで確認しなければいけないのですが、荒木のブログによると、上の産経記事でも触れられている安倍の答弁というのは、
> ・拉致被害者を救出することはわが国はできない。特に相手国の同意が必要であり北朝鮮がそれをするとは考えられない。
・だからアメリカに頼んでおり拉致被害者の情報も渡している。
・拉致被害者を救出したアメリカの船が攻撃されたとき守れなくてはいけないからこのたびの法整備を行っている。
というものだそうです。そりゃ安倍だって、「はい、自衛隊を出動させて拉致被害者を救出します」なんて答えるほど馬鹿で非常識じゃないでしょうけど、安倍の答弁も変てこですよね。なんてはっきり「拉致被害者の所在が確認できないので、自衛隊を出動させることはできない」といわないんですかね。そういっちゃうとあまりに身もふたもない、ってことですかね。ごく当然の真理だとおもいますけど。それを言ったら、荒木らと絶交することになるってことかな。まともな人間が荒木みたいな人間と付き合いたがるとも思いませんが。法的制約とかそんな話以前のことでしょ。
ところで西岡力は、産経新聞の記事によると
>2015.8.5 16:15
【名古屋「正論」懇話会】「拉致被害者の生存情報を持っている」 西岡力氏が対話と圧力を支持
(前略)
昨年5月のストックホルム合意に基づき設置された北朝鮮の特別調査委員会が今年に入り、拉致被害者以外の日本人に関する報告書発表を打診してきたが、安倍晋三首相が一蹴したことを評価、拉致問題最優先で「圧力と対話」を重視する政権の方針を支持した。
西岡氏は「拉致被害者の生存情報を持っている」とし、今回の日朝交渉が拉致被害者を取り戻す「最後のチャンスだ」と強調。「10月10日の党創建記念日までに大きな動きがあるかもしれない。また、戦後70年談話への反応の度合いで、北朝鮮の交渉姿勢が見えてくる」と指摘した。
とありますので、安倍路線をそれなりに支持するスタンスのようですね。だから産経新聞主宰の会合で講演もしたし産経も記事にしたということですが、あるいは巣食う会も路線の違いが明白になるんでしょうか。だって西岡の言う
>10月10日の党創建記念日までに大きな動き
ってのは、これがガセがほんとかはともかく、安倍の交渉路線によって導かれるものですからね。これも事態の推移を私なりに見守りたいと思います。読者の皆さまも、ぜひ注目していただければ幸いです。
なお今回の記事も、bogus-simotuakreさんの記事をいろいろ参考にしました。感謝を申し上げます。