あまり世間では話題にならなかったと思いますが、昨月(7月)に、北海道の大雪山系トムラウシ山で、遭難事故がありました。産経新聞の記事より。
>2015.7.8 12:31
トムラウシ山で登山者死亡 北海道、宮城の男性か
8日午前6時半ごろ、北海道大雪山系のトムラウシ山で男性が倒れているのを登山者が見つけ、登山ガイドを通じて110番通報した。男性は北海道の防災ヘリで運ばれたが、約3時間後に死亡が確認された。
道警旭川東署は、所持品から宮城県の男性(68)とみて身元を調べている。
トムラウシ山の遭難というと、なんといってもこの2009年の事件が有名です。
ツアーガイドをふくむ9人の遭難死亡者がでるという、まれな大規模な山岳遭難事故です。なお、このツアー登山を企画したアミューズトラベルは、この事故後も経営を続けましたが、2012年に中国の万里の長城で3人の死者を出す遭難事故を起こして、廃業を余儀なくされました。
トムラウシ山の遭難では、ツアーガイドが会社から嫌な顔をされたくないので救援を呼ぶタイミングを逃したとか、同じツアーの客が山小屋に入るので、天候が悪いのに強行出発してそれで遭難したとかいろいろ言われましたが、そのあたりの詳細はともかくとして、トムラウシ山の大量遭難は凍死によるものですが、今年の事故もやはり凍死のようですね。
それで私がいろいろ勉強させていただいているブログさんに、次のような記事がのりました。
トムラウシで68歳の男性が凍死 その2 その記事に、読者からのコメントとして次の2つのコメントが引用されていました。 >そこにいました (peaks100)こんにちは。
この時トムラウシを超えて南沼キャンプ場で幕営していました。
5日昼過ぎ層雲峡より入山、4泊5日で富良野岳まで縦走予定ではいりました。5日には7日の荒天は予報でわかっていたので我々も警戒して必要なら停滞予定でした。6日3時トムラウシを超える頃には黒雲が拡がり、6時頃には大粒の雨になり、風もそもそも強かったのがテントがバタバタするほどになりました。そこから夜通し、テント紐が切れるほどの暴風雨となり、我々は停滞を決定しました。その調子で7日まるまる暴風雨、気温も下がり続け、正確にははかっていませんが明け方には5センチの霜柱、テント内も霜だらけでした。事故っているかもしれないとはなしていましたが、現実となったようで身の縮む思いでした。 で、すごいと思ったのが、もう1つのコメントです。 >7/9ひさご沼に行きました (sin6009)
こんにちわ
私は7/8-10朝日岳からトムラウシ山まで縦走しました。3日とも快晴でした。途中で出会った人の話では、7/7は朝から大雨でひさご沼避難小屋で停滞していたが、亡くなられた方は大雪荘を予約してあるからと、皆が止めるのを聞かずに雨の中を出て行ったそうです。雨具ではなくポンチョを被って出て行ったとも聞きました。翌朝ひさご沼避難小屋からすぐの天沼付近で倒れているのを発見されたたとの事でした。 >途中で出会った人の話では、7/7は朝から大雨でひさご沼避難小屋で停滞していたが、亡くなられた方は大雪荘を予約してあるからと、皆が止めるのを聞かずに雨の中を出て行ったそうです。
ブロガーの方は、
>それにしても強引に出発した理由が「大雪荘を予約してあるから」ですか・・・
と、絶句されています。
さらに、ここは非常に参考になるところだと思いますので引用させていただきますと、
>よくある識者のコメントだと「大雪荘を予約してあるから無理をした」とか言い出しそうですけど、本人は無理だと思っていないんですよ。死ぬと思っていないから、周囲が説得してもムダなんです。ヒサゴ沼避難小屋の玄関を開けたら10メートル先に怒り狂ったヒグマが仁王立ちしていた、ぐらいの明確な危険があれば旅館を予約しているからといって出発するはずがありませんけど、悪天候というものは「頑張ればイケる」と勘違いしやすいものだと思います。
ほんとそれはそうですよね。死ぬ危険性があると思えば誰だってそんなことしないわけですから。そんなことすれば死ぬとわかっていれば誰もそんなことはしません。まさに悪天候というものは、無知であれば
>頑張ればイケる
と思っちゃうものなのでしょう。それで亡くなっていたら、文字通り目も当てられません。ましてやこの遭難者の方は、周囲が(たぶん)必死に止めたようですから。亡くなるというか意識を失う直前は、すでにまともな思考ができる段階ではなかったでしょうが、あるいていど思考ができる段階では、たぶん「うわ、忠告を聞いておけばよかった」と考えたでしょうね、この人は。きっと。
この方は死ななくていい命を無意味に死なせてしまったわけです。非常に気の毒ですが、しかしどうにもなりません。
ブログを執筆された豊後ピートさんと、2人のコメンテイターの方に感謝するとともに、お亡くなりになった方のご冥福を祈って記事を終えます。