今年次のような記事を書きました。
この事件でとりあげたのは、群馬県警警察官による女子児童誘拐未遂と、大阪府警警察官による交際していた女性の殺害でした(この警官は既婚者)。過去の事例も取り上げましたが(あと元警官の事件も)、しかし今回ちょっとひどい殺人事件がありました。
09月12日 11:12
埼玉県朝霞市で今月4日、元タクシー運転手の寺尾俊治さん(58)が殺害されているのが見つかった事件で、県警朝霞署捜査本部は12日、浦和署地域課の巡査部長、中野翔太容疑者(31)=同県川越市鯨井=を殺人と住居侵入の疑いで逮捕した。調べに対し「(寺尾さんの)首をロープで絞めて殺害したことは間違いない」と供述する一方、「首を絞めた際に殺意はなかった」と容疑を一部否認しているという。
(後略)
05:37
埼玉県朝霞市の民家で住人の無職寺尾俊治さん(当時58)の遺体が見つかった事件で、殺人と住居侵入の容疑で逮捕された県警浦和署の巡査部長、中野翔太容疑者(31)が「金目当てだった」という趣旨の供述をしていることが12日、捜査関係者への取材で分かった。
県警によると、民家の1階の部屋にあった耐火金庫の扉が半開きだったという。寺尾さんの親族によると、金庫に入っていたはずの100万円がなくなっているといい、県警が詳しく調べている。
現段階、犯人の警官は殺意を否認しているとのことですが、しかしこれはたぶん通用しないと思いますので、たぶん殺人罪、おそらく強盗殺人で起訴される可能性が高いでしょう。そしてそれで起訴されれば、良くて無期懲役、悪くて死刑でしょう。初犯でしょうから死刑の可能性は低いかもですが、警官であるということは検察も裁判官も裁判員も情状面で厳しい判断となるでしょう。
殺人ですからどっちみち論外の極致ですが、しかしこれは、前の記事でとりあげた大阪府警警官の殺人よりひどいですね。今回の警官も、31歳と若いですが、それでも26歳の大阪府警の人間よりはだいぶ分別もあるでしょうしね。
それで、この警官は、なかなか優秀な人でもあったみていです。
>【現職警察官逮捕】中野容疑者、捜査1課も経験 「お金にはゆとり」
09月12日 21:25(産経新聞)
中野翔太容疑者は高校卒業後、平成14年4月に埼玉県警に入り、通算13年4カ月のうち8年半を刑事部門で過ごした。23年3月、殺人などの凶悪事件を扱う県警本部捜査1課の刑事に抜擢(ばってき)。一方で、無届けの海外旅行などで過去に指導を受けており、「世間知らず」(同僚)な一面もあったという。
(後略)
警察の人事とかに詳しくありませんが、常識的に考えて県警本部の捜査1課でをやるような人物が無能ではないですよね。現在は武蔵浦和駅前の交番勤務だったようですが、それってやっぱり上の記事にある無届海外旅行の件とかが響いたんですかね。それもわかりませんが、なにがしかの評価はあったということでしょう。子どもを誘拐しようとした群馬の警官や殺人をした大阪の警官などはこれといった評価はない、あるいはまだその段階ではないというものでしょうし、女性を暴行殺人した警視庁の警官は、それ以前から素行不良であり警察学校でもろくな評価ではなかったようですが、この警官はそうではない。で、そういう人物がここまでやってしまったというのは、本部からもマークされていた要注意警官というわけではないということで、別の意味でやはり相当よろしくないといわざるを得ません。
それで、個々の警官の不祥事を取り上げてそれで「警官は・・・」というように警官全体を論難するというのもどうかですが、1年に2人の警官が殺人罪で逮捕されるというのは尋常ではありませんね。こちらによると
>平成25年度の警察職員の定員は総数29万3,588人であり、このうち7,721人が警察庁の定員、28万5,867人が都道府県警察の定員(注)である。
注:平成25年度地方警察官増員に伴う警察法施行令の一部を改正する政令(平成25年政令第147号)が施行された平成25年5月16日の段階では、14都道府県において、平成25年度地方警察官増員に伴う都道府県警察職員の定員を定める条例(以下「定員条例」という。)が改正されていなかった。25年6月28日現在で、当該14都道府県において、改正された定員条例の内容及び議会に提出されている定員条例の改正案の内容を反映すると、警察職員の定員は総数29万3,762人となり、このうち都道府県警察の定員は28万6,041人(うち地方警察官は25万7,098人)となる。 とありまして、日本ではだいたい30万人くらいの警察職員がいて、私たちが一般に「警官」と考えている地方警察官が26万人弱くらいのわけです。それで、2013年に殺人事件で検挙された人間は、日本で906名です(出典は、こちらのサイトより)。 1,000人をはるかに下回る数しか殺人事件で検挙されていないし、また殺人犯の約半分(年によっても違いますが、四十数パーセントから五十数パーセントが親族間のものです(こちらの、上でご紹介したサイトをご確認ください)。大阪の事件は親族でなくても近い間柄ではあったわけですが、今回の事件はたぶん(被害者の親が死亡した時に現場検証で家を訪れたということですが)、顔見知りというほどのことは言えても、付き合いがあったということですらないでしょうから、これまたかなり異常です。 公務員といってもいろいろですが、たとえば一般の行政公務員(市町村役場、都道府県庁、中央官庁ほか)や、公安職であっても消防や刑務官、自衛艦、海上保安官などと比べても、さすがに年間2人も殺人犯人が出るというのは信じがたいですね。これは今年だけの特異な現象かもですが、それにしてもです。 さて、この記事を書いていてネットで検索していたら、次のような記事を見つけました。 >2015年1月14日(水) 男性巡査、朝霞署屋上で拳銃自殺か 携帯電話に遺書めいた文面14日午前10時25分ごろ、朝霞市幸町2丁目の朝霞署屋上で、同署地域課の男性巡査(24)が頭から血を流して倒れているのを、捜していた同署員が発見した。巡査はすでに死亡していた。
同署によると、巡査の近くには貸与された本人の拳銃が落ちており、弾が1発発射されていた。
巡査は14日午前9時半から翌日午前9時半まで勤務する予定だった。出勤後、制服に着替えて上司の立ち会いの下で拳銃を着装したが、午前9時半ごろから姿が見えなくなり、上司の男性警部補らが捜していた。発見された屋上は無施錠で、署員が自由に立ち入ることができた。
巡査の携帯電話には遺書めいた文面が記録されており、同署は自殺した可能性があるとみて捜査している。無断欠勤など勤務態度に問題はなかったという。
同署の永谷邦夫副署長は「現時点では捜査中のため、コメントは控えさせていただきます」とコメントした。
たまたま当時は、この犯人と同じ署に勤務していたのですね、この自殺した警官は。
警官の自殺だから、そして拳銃を使った自殺だから、マスコミも書くわけですが、しかし24歳の若者を自殺に追い込むというところが確かに警察という組織にはあるのだなと思います。前に次のような記事を私は書きました。といっても実際には、ブログさんの記事を全面引用したものですが。
なかなか凄まじい警察学校での人権侵害の実情このような凄まじい人権侵害の数々が、だいぶ警察官の人たちをいろいろな点で狂わせているんじゃないんですかねえ。やめ(させられ)なかった人がまともな人間であるという保証もないし。ましてや今回の警官のように、組織内でもそれなりに評価されていて、おまけに奥さんまで警官だった人物がこんな事件を起こしているようでは目も当てられないとはこのことです。お話にもなりません。
亡くなられた方のご冥福を祈ってこの記事を終えます。