参議院選挙の結果は、だいたい事前の世論調査どおりだったので「やっぱりね」という以上の感想もあんまりないんですが、ただいろいろ面白いところもあります。
たとえば
?やっぱり京都と高知は共産党が票をとる
なんてのは面白いですね。京都なんか比例で約18万2千票で、選挙区でもしばらくぶりに(98年の選挙以来)共産党候補が当選しましたものね。正直あんまり強そうな候補じゃなかったんで、「どうかなあ」と思っていたんですが、僅差ではありますが勝ちました。よかったですね。昔は、参議院は京都では自民党と共産党が2議席を分け合っていたくらいですが、そういう時代でもなくなってきて京都ですらも厳しい時代が続きましたが、今回はなんとか議席を取れました。蜷川さんが知事だった時代とは比べるべくもありませんが、いろいろ興味深いものがあります。
で、たぶん共産党も、候補者選出の時点では、今回の選挙も選挙区での議席獲得は厳しいという予想だったんじゃないんですかね。東京選挙区で勝った人も、どうみても強そうな人じゃないもんね。小池晃さんを選挙区から外して比例にまわしたのもそういうことでしょう。大阪の人はどうだか知りません。
で、inti-solさんもご指摘のように、共産党というと「組織票」というイメージがあろうかと思いますが、共産党のコアな支持層なんてのは激減・衰退の一途でしょうから、今回は共産党に「風」が吹いたんでしょうね。なにしろ、昨年12月の衆議院選挙の比例より150万票上積みされたのですから。これをどれくらい維持・あるいは伸ばすことができるかが共産党の試金石でしょう。
?維新は、大阪ではやはり強い
維新の比例票が、共産党より120万票多いというのは、昨年の総選挙より半減した(! 橋下の慰安婦関係の発言が致命的にまずかったのでしょう)とはいえ、大阪では選挙区、比例ともに、100万票を超える得票数ですから、まだ維新は大阪では別格の強さだということです。今後はいざ知らずですが、現段階では大阪府・大阪市の首長選挙では、維新の候補が勝つ可能性が高そうです。
で、維新の比例の個人票で、アントニオ猪木が30万票とっているのには(世の中だいたいそんなもんだとは思いながらも)「おいおい」です。いまさらあんな人を当選させなくったっていいと思うけどね。
それはそうと、自民党から比例代表で出馬した佐竹某という元格闘家の人は、ほとんど引っかかりもしない票数しかえられず落選です。このあたり、やはり文字通り役者が違うのでしょうか。
?社民党は、沖縄で救われた
私は選挙の際、比例をちょいちょい社民党に入れているんですが、今回は入れませんでした。正直、この選挙はついに議席獲得も無理かと思っていたら、なんとか1議席は確保しました。2010年の選挙より比例票が半減しているので(共産党にまわった票が少なくないと思います)、次回の参議院選挙は(出れば)福島瑞穂が出馬しますから、彼女の個人票で可能性があるかもしれませんが、次の次は、かなりやばそうですね。で、沖縄では社民党に比例票が大量に入っています。沖縄の大量投票がなければ社民党はぜんぜんだめだったでしょう。まさに沖縄の票で救われました。
?渡辺美樹と太田房江はあまり票を取れなかった
上の話より、私がいちばん興味を感じたのが(なにしろ関連する記事を書いたくらいで)これです。ワタミのトップである渡辺美樹の自民党比例代表区立候補では、いろいろ批判がありましたが、選挙の結果は104,175票でした。自民党当選者では、下から3番目です。
私は、彼が何票くらい記名で獲得するのかは見当もつきませんでしたが(今回の選挙での自民党の強さからして、当選はすると思いましたが)、比例当選者のうち下から3番目ですから、その知名度を考えれば高いとはいえませんね。むしろかなり低いと思います。
で、以下はすべて私の想像なので、正確かどうかについてはぜんぜん自信がないのですが、たぶん渡辺が立候補するということへの批判の意味をこめて(日本は、落選させたい候補者にマイナス票を投票する制度はありませんから)自民党に比例票をいれるのを控えた有権者の数はけっこう多かったんじゃないんですかね? それと渡辺への票を相殺したら、渡辺が得た票はかなり低いものになるんじゃないんですか。あるいはマイナスになるかも(笑)。いや、笑っている場合じゃないか。といいますか、私はたぶんマイナスだろうと(勝手に)考えています。
自民党がどういう思惑で渡辺を候補にすることを最終的に決定したか、その詳細はわかりませんが、こと比例票を稼ぐという観点からすると、たぶん渡辺の立候補は、マイナスでないとしてもそんなにプラスにはならなかったでしょうね。そうすると、自民党での渡辺の今後の立場はどんなもんですかね。ばかばかしくて、次の選挙には立候補しないか(あるいは途中で辞任する可能性もあるでしょう)、それはそれとしてなんとかやっていって再選をめざすか、私なりに注目していきたいと思います。
もう一人、私が「おや」と思ったのが、元大阪府知事である太田房江の最下位当選です。77,173票でした。
彼女のHPか何かを見れば、なぜ彼女が今回の選挙に立候補したのかわかるのかもしれませんが、特にそれには興味がないので未確認です。ただ正直「なにをいまさら」という気はしましたが。
私は彼女が立候補すると知ったとき、「知名度が高いから当選するんだろうな」と考えて、その後特に興味関心もなかったのですが、当選者リストを見て彼女が最下位の当選なのには驚きました。彼女は組織立候補者でもなく新人ですからそのあたりは不利ですが、大阪の府知事だったのはそれなりの知名度です。でも実際は最下位のぎりぎり当選、しかもこれは自民党が大量の比例票を獲得したが故の当選であり、落選とまさに紙一重です。正直彼女が落選したら、私は部外者だからどうでもいいですが、ご当人やその関係者は文字通り目も当てられない屈辱でしょう。彼女も、少なくとも立候補する時は、正直自分が最下位当選なんて想像しなかったんじゃないんですかね? 太田なんて世間からすれば「過去の人」なのかもしれませんし(といいますか、私もそう思っていました)、いまさら彼女が議員になったところでどれくらいのことができるか疑問ですが、府知事3選出馬見送りに、やはりいろいろもやもやしたところがあるんでしょうか。彼女が再選を目指すかどうかはわかりませんが、今回の選挙の結果はたぶん彼女にはショックだったと思います。
渡辺や太田は組織選出候補ではありませんが、それとは別に、今回の選挙の結果からみると、自民党もやはり往年ほどの組織選挙は難しいですね。これもinti-solさんがご指摘の通り(上のリンクをご参照ください)、東京選挙区でも、自民党候補が2人とも当選しましたが、組織票を持っている候補より浮動票の候補のほうがずっと獲得票数が多い。今回自民党は、選挙でTPPについて参加を言明して選挙に臨みました。反対する農業団体系を無視しても選挙には勝てるとみなしての判断だし、それで実際勝ったわけですが、組織力は弱くなります。公明党のみが、組織選挙全開なのでしょうか。たぶんそうです。
というわけで、選挙の結果というのもいろいろ興味深いので、読者の皆さまもぜひご自分の興味関心のあるところをご自分なりに解析・分析してください。また、inti-solさんに感謝を申し上げます。
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第23回参議院選挙の結果で感じたこと(渡辺美樹と太田房江はあまり票を取れなかった)
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