Quantcast
Channel: ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
Viewing all articles
Browse latest Browse all 4143

アマンダ・ラングレ 2016年のインタビュー(3)

$
0
0

―ロメール組は常に少人数の軽やかさで、食事の支度から掃除まで、それぞれが協力し合っていたと聞きました。ロメールはジャガイモの皮剥きも担当したのですね。

AL それぞれの作品には各々エピソードがあるでしょうけど、いつも少人数のスタッフでした。『夏物語』のときは、皆が同じ家に泊まって、洗濯も掃除も料理も、自分たちでしなければならなかったわ。普通、映画撮影でそんなことまでしないでしょう? ヘアメイクもコスチューム係もいない。ロメール映画の洋服選びは色の選択が最も重要だったわ。撮影前に彼とブティックに行って、まるで普通に洋服を買うように衣装を選んでいたの。水着を買った時の可笑しなエピソードをお聞かせしましょう。最初、大型デパートに出向いたのね。私は何着かを試着室に持って入り、ロメールは前で待っていた。赤や緑の水着を試着する度にカーテンを開けて「どう、お気に召したかしら?」という会話を聞いて、周囲の人から不思議な目で見られたわ(笑)。この二人は一体何をしているんだと言わんばかりのね。よほどのファンでない限り、ロメールの顔を知っている人はいなくて、彼自身も地下鉄やバスで身軽に行動していたんです。

―ロメールとはいつもお茶を飲んでいらしたんですね。彼はコーヒー党ではなく、紅茶派だったとお聞きしました。

AL そうよ。私たちはお菓子をつまみながらお茶を飲むのが大好きだったわ。彼は大のお茶好きで、出会った当初は紅茶を好んでいたけれど、緑茶が出回るようになってからは、じっくりと緑茶を味わっていたことを覚えています。

―ロメール映画の唯一無二な点は、どのようなところだと思われますか。

AL昨夜、指摘されたことでとても驚いたことがあるの。ロメールの映画が不謹慎なほどに官能的だというの。肉体のシルエットが露わに見えるし、暑さや体温が伝わってくる。これまでロメール映画といえば登場人物が喋りにしゃべるダイアローグの映画と言われてきただけに、このような見解は興味深かったわ。それからロメール映画は音だけでも、すぐに判断できる。俳優がどのように話すのか聞いているだけで、これはロメール映画だと区別できる。話し方や話す内容が、すごくロメール的なの。

―私はフランスで生活するまで、多くのフランス人はロメール映画のようにお喋りするものだとばかり思いこんでいました。ロメール映画のシナリオは学習教材としても発売されていたくらいですから。ところが、これまで出会ったフランス人の多くが「ロメール映画のダイアローグはとても不自然」だというのです。あなたのご意見をうかがえますか?

AL 私も多くの人から「日常生活ではこんな風には話さない」とも言われたことがあるわ。でも、私は日常でもロメール映画のように話しています。もちろん息子を叱る時はロメール的ではなくなってしまうわよ(笑)。ロメール映画のダイアローグは巧妙に書かれたランガージュ(言語)なのよ。略語はないし、きっちりと正しい文法ではっきりと発音される。ロメールは文学教師だったから、その辺は徹底しているの。台詞は役者の口から発せられた時、彼らのものになっているけれど、台詞自体は60を過ぎた新市によってしっかり書き込まれたランガージュであることにかわりないわ。だから自然じゃないと指摘する観客もいるけど、演技は自然だったと口を揃える。「演技は自然で台詞は緻密に書かれたもの」、それがロメール映画の特徴であり、たのどの映画とも似ていない点だわ。

―私はあなたのフランス語は、なぜか、とても聞き取りやすく感じられるんです。

AL すごっくはっきりと発音するからでしょう。先も言ったように多くの人がロメール映画のランガージュは自然じゃないというけれど、フランス語を学ぶときに最適ではないかしら。ロメールの現代劇は、繊細な感情の機微が台詞に詰め込まれている。男女の間で起きるもどかしい逡巡がいきいきと綴られているのですから。

―では最後にロメール映画のお気に入り3本を選ぶとしたら?

AL 『コレクションする女』と『モード家の一夜』は最も好きな2本! それから…『O侯爵夫人』も。『海辺のポーリーヌ』と『夏物語』はあまりに近すぎて、客観的には見られないわ。ロメール映画には笑わせられるし、感嘆させられるし、常に驚かされる。そんな画面に何度でも向かいたいわ。

取材日/2016年3月15日(パリ14区映画館ラントルポ(L'entrepot)併設カフェにて)

取材・文/魚住桜子

以下採録者のどうでもいい話です。

>よほどのファンでない限り、ロメールの顔を知っている人はいなくて、彼自身も地下鉄やバスで身軽に行動していたんです。

ロメールという人はこのような顔です。

 

別に顔で仕事をしている人ではないのだから当たり前の話ですが、たしかにそんなに目立つ容姿ということはないですね。私の母は、銀座で着物を着ていた大島渚を見たといっていましたが、大島のような目立つ人ではたしかになさそうです。


Viewing all articles
Browse latest Browse all 4143

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>