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Channel: ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
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「電話を借りる」という行為が過去の話であるということ

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過日「家族の肖像」を観ました。ルキノ・ヴィスコンティの晩年の映画ですが、彼は体調を崩していたので、オールセット撮影のこの映画を監督したとされています。

それで本日の話は映画の感想や評論でなく、派生的なことについてです。この映画では、いろんな登場人物が固定電話を主人公の教授( バート・ランカスター)から借りるわけです。それでつまり今の時代、他人の家で電話を借りるということはほとんどなくなったなということです。

現在は、だいたい自分で携帯電話を持っているし、持っていない(忘れたとか)場合、複数での行動なら仲間に電話を借りればいいし、そうでもなければ・・・という状況に限られるのではないでしょうか。私もいろいろな仕事をしましたが、最近人の家で電話を借りた記憶なんて(当然)ありません。

日本で、かつての大きくてとても「携帯」なんていうレベルでない電話の時代(映画「眠らない街〜新宿鮫〜」で、浅野忠信が持っていたようなやつ)でなく、ハンディでそれなりに使い勝手がよいものが手に入れられる時代、つまりは暴力団とか医者など以外の人たちも使えるような時代はいつからでしょうか。ごくおおざっぱに言って、90年代半ば過ぎですかね。オウム事件や阪神淡路大震災があった1995年に生まれた人は、今年2017年は、大学生なら4年生なわけです。すると、これもごくおおざっぱに話をすれば、現在30歳未満の人は、電話を他人の家で借りるなんてことはしたことも見たこともないか、昔の映画やドラマなどで見たことがある、っていうところですかね。以上年代の厳密さには難があるかもということはお断りします。

それで、借りるというのとはまた話が違いますが、例はいくつでもあげられますが、映画「ステート・オブ・グレース」では、やはり電話での通話が後半での大きなポイントになります。これも携帯電話があればまた話は違います。それで、映画「激突!」も、やはり携帯電話があったら話が成立しません。携帯電話を何らかの理由で使えなくしないと映画になりません。これは以前記事にしました。 

携帯電話があったらこの映画は成立しない-『激突!』

そう考えると公衆電話も今の時代だいぶへりましたよね。私の家の近隣にあった公衆電話(電話ボックスからコンビニにあるものまで)もだいぶ撤去されているし、昨年学生に監禁されていた中学生が逃げたときも、現在の子どもたちは公衆電話の使い方を知っているかという問題も議論されました。公衆電話は、緊急時は金がなくても通話できるのですが、それを昨今の子どもたちが知らないのも仕方ないところです。これは教える必要があります。「ドラえもん」の「もしもボックス」なんていう道具も、今の時代の子どもたちは、すくなくとも昔の子どもより電話ボックスになじみがないので、あの道具もいまひとつぴんとこないところもあるのかもと考えます。設定では未来の道具なんですけどね(苦笑)。

運送手段と通信手段の変化と進化は、本当に社会を変えます。かつて蒸気船は大西洋を横断できないとされた時代がありました。なぜなら大西洋を渡るだけの燃料(石炭)を船に積めなかったからです。しかし蒸気機関が発達して、横断できるようになりました。シャーロック・ホームズも、アーサー・コナン・ドイルが書き始めた頃は馬が最速の交通手段であり通信手段でもありましたが、晩年(1927年が最後の執筆です。ドイルが亡くなったのは1930年)には無線が一般的、ラジオ放送も始まっていました(BBCは、その前身は1922年に放送を開始しています)。今日、飛行機は世界中を飛び回り、世界中に携帯電話の電波がさまよっています。個人的にはこのような社会はいまひとつ面白くないのですが(まあアジアは猥雑であってほしい、先住民は昔ながらの生活をしていてほしい、なんていうレベルの愚劣なノスタルジーですが)、ともかくそういう社会や時代になったわけです。昔は、遠方への連絡手段は、それこそのろしをあげる(これだけで、最低2ビットの情報は可能です)馬を走らせる、ほら貝を吹くとかのようなきわめて物理的実態(書面そのものを持っていくとか煙とか空気の振動=音とか)のある方法しかなかったわけですが、電波や電気のような物理的な質量でないものを活用できるようになり、大いに時代も変わり便利になったわけです。

考えてみれば、一般の家庭に固定電話がついているのが当然だということだって(最近は逆に携帯電話だけの世帯も増えています)、これまたすごい話なわけですが、私たちはそれを「当然」とつい考えてしまいます。世界には、固定電話の布設がうまく進まず、逆に携帯電話で完全に固定電話の代替となる国だって少なくないわけです。携帯電話だって、上にも書いたように暴力団や医者のような仕事でないと持たない(持てない)時代があったわけですが、今はそんなことはない。いいわるいは別ですが、携帯電話のようなものは社会を徹底的に変えたと思います。何をいまさらながら、すごい時代だなと思います。

電話は黒電話で十分だと思っていたら、いつのまにかファクシミリつきの多機能なものになり、ファクシミリもすでにスキャニングのPDFファイルなどに代替されることが多くなり、携帯電話もスマートフォンに進化し、非常に使いやすくなりました。機能も優れていて、過日の記事に書いたように海外でも地図を活用して非常に便利でしたし、またコンパスとか電卓なども標準アプリで入っているわけです。こういった便利さにおぼれないように、しかし十分に活用して今後もいろいろやっていきたいと思います。


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