私は関西在住でなく、関西に行く際も阪急にはわりと乗りますが、近鉄や阪神に乗ることはあまりありません。むしろ京阪にはわりと乗るかな。南海にいたっては、まずめったに乗りません。切符の関係で、関空絡みでもJRを使うことが多いので。
大阪⇔京都を往復することが多いのですが、そうなるとJRでなければ阪急や京阪を使うことが多いということです。奈良や和歌山へ行かないわけではないですが、でも切符の都合でJRのほうを使います。
そういう私ですから、関西の私鉄については通りいっぺんの知識しかないし、阪急沿線は山の手系、阪神沿線は庶民系(下町系)なんていうステレオタイプの見方を知っているばかりです。そういえば昔南海電鉄のことを関西の東武東上線だと誰かが評していて笑ったことがあります。いや、笑っちゃいかんですね。読者の中で南海電鉄と東武東上線沿線にお住まいの方、いたら(たぶんいるでしょう)ごめんなさい。
阪神電鉄は、いつとは言いませんが(記事にもしていないので)1回だけ甲子園球場に行ったり、「ゆいゆいシスターズ」という人たちのライヴに行ったとき、別件で利用したことがあります。私の活動範囲からすると、阪急電鉄のほうが利用しやすい鉄道です。
それで現在阪神電鉄は、阪急阪神ホールディングスというグループに入っています。阪急と阪神では経営規模はだいぶ阪急のほうが上ですから、つまり事実上阪急の買収に近い形になっています。
さて過日面白い記事がありました。ぬるい記事ばかりの昨今のスポーツ新聞にしてはかなり突っ込んだ記事です。
監督人事や巨額FA資金の最終決済は誰が? 実質は「阪急タイガース…」と感じた株主総会
阪神タイガースは、今後最終的な決裁は、阪急側によって行われるという可能性が高いということのようです。それ自体はいいわるいということではありません。記事にもあるように経営権のある側に最終的な決定権があるのは当然です。
そしてそう考えると、つまりはこれからは事実上「阪神タイガース」という球団は、「阪急タイガース」ということなのでしょうね。オーナー企業の名前が変わることはないでしょうが、阪急電鉄は、阪急ブレーブスという球団を売却しましたが、またまた実質的なオーナー企業になったということです。
大学で経営学を勉強した人は、阪急東宝グループの創始者である小林一三という人が、日本の実業家の中でも特筆すべき経営センスを持っていると評価されていることをご存知でしょう。鉄道を引いて、その沿線に住宅地を作って、通勤客に利用してもらうというのが基本なわけです。さらに野球チームや歌劇団といった娯楽団体を運営し、また野球場や劇場を作ってその観客に自分たちの鉄道を利用してもらうというアイディアです。このアイディアを各私鉄もまねをしたわけです。だいぶ廃れましたが、各私鉄も自分たちの沿線に遊園地を作ったりしたわけです。
しかし時代が変わり、こういったやり方にもいろいろうまくいかない部分がでてきました。1988年に阪急電鉄が球団を売却した際、宝塚歌劇団を取って野球を捨てたと評されたとのことですが、つまり同じ赤字でも野球はほかでもやってくれるが宝塚歌劇団は自分たちしかできないという判断をしたということでしょう。松竹歌劇団が立ち行かなくなった辺りを見ても、このあたりの経営判断は正しかったと思います。赤字が大きかった南海ホークスがおなじく88年に売却されたわけですが、南海よりはるかに経営規模の大きな近畿日本鉄道もけっきょく21世紀初頭には野球のオーナー企業であることを継続できなくなったわけで、そうするとバブル崩壊以前の88年に野球に見切りをつけた阪急電鉄の経営センスはさすがだと思います。実際阪急はスムーズにオリックスに経営権を渡せましたが、近鉄はそれよりはるかに重大なトラブルを続発させてしまいました。
そして21世紀になり、黒字球団である阪神タイガースの実質オーナー企業になる。これもすごいですよね。もちろんこれは、阪急と阪神が合同でホールディングスを形成できるというような時代の変化と不可分であって、88年の球団売却時にそのようなことができる見通しがあったわけでもありませんが、阪急だって、同じ野球チームを経営するのなら、阪急ブレーブスなんていう大赤字球団よりも関西を象徴している阪神タイガースみたいな球団を経営するほうが金儲けにもなるし、自分たち(ホールディングス)のイメージにいいし、はるかに有意義だというものです。うーん、阪急恐るべしです。
どうでもいい話ですが、私は阪急のあのどろっとした車両の色はけっこう好きです(笑)。今度社会勉強の意味もふくめて、宝塚歌劇団を観てみようと思います。