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Channel: ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
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ある加害者家族・被害者遺族の叫び

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私がこだわっている宮崎での、義理の母親と奥さん、息子の3人を殺害した死刑確定事件について、興味深い記事が出ていました。

>宮崎・家族3人殺害

義兄が母姉おい殺害 「遺族」か「加害者親族」か 30歳男性の苦悩

毎日新聞2017年7月7日 東京夕刊

 自分は犯罪被害者の遺族か、それとも加害者の親族か--。2010年3月に発生した宮崎市家族3人殺害事件で、母(当時50歳)と姉(同24歳)、生後5カ月のおいを殺された男性(30)が毎日新聞の取材に応じた。肉親の命を奪ったのは姉の夫だった。被害者遺族として苦境に陥りながら、周囲から「加害者の義弟」として扱われる理不尽。男性は8日、福岡市内で開かれる犯罪被害者遺族の集いで胸の内を明かす。

 3人を殺害したのは奥本章寛死刑囚(29)。7年前、家庭への不満から姉のくみ子さんとおいの雄登ちゃん、同居していた母の貴子さんをあやめた。事件当時、男性は23歳。福岡で1人暮らしをしていた。父母は離婚していたため、男性は肉親を一度に失った。生きる気力がうせ、自暴自棄になった。事件の1年後、公務員を辞めて無職に。貯金も底をつき、消費者金融で借金もした。生活の困窮以上に苦しんだのが周囲の視線だった。

 「お前、加害者の弟だろ?」「(姉を殺したのが)夫だったら、どうしようもないよね」。知り合いから心ない言葉を浴びたことも何度もあった。3人の葬儀では母方の親族に「あなたが(奥本死刑囚と)親戚関係を切ってくれないと、うちの家族の縁談に差し障りが出る」と言われた。「何で俺がそんなことを言われるのか。俺が迷惑をかけたか」。怒りがこみ上げたが、言い返すことはできなかった。

 加害者の親族ゆえの複雑さもあった。男性は奥本死刑囚と同い年。拘置所で面会を重ねるうちに、情が湧き、弁護士の求めに応じ、死刑回避に動いたこともある。だが、人ごとのように事件を話す姿を見て「反省していない」と確信するようになった。

 事件2カ月前の正月。男性は母親を福岡に呼び寄せ、一緒に暮らす約束をしていた。同居する家を見つけた直後の惨劇で、夢はかなわなかった。「事件がなければ公務員として働きながらお母さんと暮らしていたはず」。男性は役所に姻族関係終了届を出すつもりでいる。【川名壮志】

記事中ちょっと「?」と思ったのがこちらです。

>加害者の親族ゆえの複雑さもあった。男性は奥本死刑囚と同い年。拘置所で面会を重ねるうちに、情が湧き、弁護士の求めに応じ、死刑回避に動いたこともある。だが、人ごとのように事件を話す姿を見て「反省していない」と確信するようになった。

この考えが正しいか妥当かは私にはちょっと判断できません。実際に死刑囚が「反省していない」かどうかは、私もふくめた、もちろんこの人にも断言はできない。だから記事でも

>確信するようになった。

というところまでの表記のわけです。実際に奥本という人が、人ごとのように事件を話しているのかは確認できないし、ご当人の内心はわかりません。現実問題として、親と姉と甥を殺されれば、それは非常に複雑かつ怒りや憎悪が出ることは仕方ないわけですが、ただこの人はあまりに気の毒ですね・・・。どういう事情で

>公務員を辞め

たのかは見当もつきませんが、いろいろな意味でご本人も人生を狂わされたわけです。それで

>事件2カ月前の正月。男性は母親を福岡に呼び寄せ、一緒に暮らす約束をしていた。同居する家を見つけた直後の惨劇で、夢はかなわなかった。

というのが事実なら、じゃあ犯人ももう少し我慢していれば、殺人事件は起きなかったのかいという話になります。実際のところどうなったかは神のみぞ知るですが、いろいろ考えさえられます。こちらの記事によると

>(前略)

「死刑、慎重に審理を」遺族、異例の同意

 代理人の黒原智宏弁護士らによると、遺族は宮崎市に住む20代男性。10年11月の宮崎地裁の公判では「死をもって償うべきだ」と意見陳述したが、14年3月に奥本死刑囚と初めて面会してから考えが変わった。事件前と変わらず素朴な印象の奥本死刑囚と会話を交わすうち、公判で動機についてあいまいな供述を繰り返して検察の主張を追認したことを思い出し、「自分の言葉で説明してほしい」と考えるようになった。

 上申書では「1審では強い怒りから『極刑を望む』と言ったが、被告との面会で彼なりに反省を深めつつあるのが分かった。命の大切さを考えると、まだ死刑になるべきか判断できない」とした上で「裁判をやり直し、死刑か無期懲役かを判断するため慎重に審理してほしい」と求めている。上申書は奥本死刑囚が上告中の14年8月に最高裁に提出したが、証拠として取り扱われなかったため、再審請求の新証拠として提出できると判断した。

 一方、奥本死刑囚は福岡拘置所に収監中。支援者の協力を得ながら絵を描き、カレンダーやうちわにして販売した収益を被害者遺族に送るなどしている。当初は「犯した罪の大きさを考えると死刑は当然」との考えを示していたが、遺族男性らとの面会を重ねるうちに「被害者遺族に償うためにも生き続けたい」と話すなど心境に変化がみられるという。

 遺族男性は「もちろん今も許せない。それでも奥本死刑囚にもう一度法廷で、どうしてあの事件が起きたのか語ってもらい、死刑か無期懲役か自分の気持ちをはっきりさせたい」と話す。【宮原健太】

とあり、これは今年2月の記事で、たった5ヶ月でいろいろ心境の変化があるようですが、このあたりはたぶんどちらかというとこの遺族男性の心の揺らぎなのかもしれませんね。なんとも言えませんが。

日本の殺人というのは、その半分が家族間の殺人事件だとされます。家族間の殺人で死刑というのは多くありませんが、保険金がらみなどですとそのようなこともあります。父親が自分の母ほかを殺して死刑判決が確定した大山寛人氏は、自分でも本を書き、講演などもしています。こちらに氏へのインタビュー記事がありますのでよろしければお読みください。そして本もご紹介します。

僕の父は母を殺し

また、九州では、奥さん(お母さん)が、交際相手とともに、夫と子どもを殺して、夫のほうでは保険金をだまし取ったという最悪の事件も起きています。一審では2人とも死刑、Wikipediaの記述を借りれば、二審で

>女の長男と長女は母の助命嘆願書を提出。

とあり、これがきいたかどうかはともかく、2審で女のほうは無期懲役に減刑になっています。昨今の無期懲役はめったなことでは仮釈放になりませんので、たぶん彼女は死ぬか判決が確定した2006年の最低30年後にならないと仮釈放にはならないし、死刑の求刑で減刑されて無期懲役という人はさらに処遇が厳しいので、たぶん40年か50年の服役は最低必要とするかと思います。

この人が死刑になったり無期になったりするのは不徳の致すところですが、子どもたちの心境を考えるとさすがに複雑になりますね。彼(女)らは、自分の母によって父親ときょうだいを殺されたのですから。減刑嘆願も、きわめて複雑な心境で提出したのではないでしょうか。特に子どもを殺めたことは、まさに人間として最低の所業だということになってしまうでしょう。

私も上の大山さんの本は知ってはいましたが、未読ですので、図書館で予約をかけました。あるいは、読了後記事にするかもしれませんので、その際はお読みになってください。


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