過日の朝日新聞の記事にひどいものがありました。私は、こちらの記事で知りました。
>手首を骨折していても本塁打 前橋育英、信頼応えた4番
8/9(水) 18:59配信 朝日新聞デジタル
前橋育英―山梨学院 七回表前橋育英無死、飯島は左中間に本塁打を放つ=林敏行撮影
(9日、高校野球 前橋育英12―5山梨学院)
■前橋育英・飯島大夢
左手首の骨が折れている。テーピングを幾重にも巻き、さらにサポーターをつけてバットを握った。
【写真】前橋育英―山梨学院 三回表前橋育英2死二塁、小池(手前)が左越え本塁打を放ち、盛り上がる前橋育英の選手たち=清水貴仁撮影
前日、群馬大会の決勝以来、約2週間ぶりに打撃練習した。「緩い球で、軽く当てる程度」で約10スイング。痛みが全く消えていなくて、びっくりした。
それでも、試合になれば「4番サード」に名前がある。5月の関東大会で死球を受けてから、ほとんど練習できていないのはみんな分かっている。打つことが期待されているわけではない。「仲間からの信頼がある。そこ(4番)にいることが大事」と荒井監督。
そして、期待以上に応える。バットを短く持ち、右手で押し込むイメージで振る。一回に先制の左前適時打、三回は中前適時打。七回は左中間席まで白球を運び、「いっちゃったなあって思いました」。いかつい顔でおちゃめに言った。
次の試合は第8日(15日)。そこまではまた、ほとんど練習できない。「打てなくても、違う面でチームを引っ張る。『気持ち』とか」
監督が「男気がある。昔のガキ大将みたい」とほれ込む主将。次も「そこ」にいるだけでいい。(山口史朗)
>前日、群馬大会の決勝以来、約2週間ぶりに打撃練習した。「緩い球で、軽く当てる程度」で約10スイング。痛みが全く消えていなくて、びっくりした。
って、正気じゃありませんね。こんなの出場させる監督も論外だし、本来なら大会役員から部長・監督に厳重注意がされるべきものでしょう。お話にもならないとはこのことです。ピッチャーのひじもそうですが、選手へのドクターチェックを入れて(これはしているはず)選手登録を拒否するなり、どうしてもなら、登録絶対不可の選手と条件付出場保留選手みたいなものをわけて、出場保留者に関しては試合前日に最終チェックをして医者の判断で出場の可否を決定するくらいのことをする必要があるんじゃないんですかね。この選手の場合
>「緩い球で、軽く当てる程度」で約10スイング。痛みが全く消えていなくて、びっくりした。
だそうですから、とても出場させられるような状態じゃないでしょう。そしてどうもこれ、群馬大会もかなり無理して強行出場したようじゃないですか。ご当人の意思か同調圧力か、監督の命令かは定かじゃないですが、これでは治るものも治らないでしょう。
しかしより問題なのは、こういうことを肯定して報じちゃうマスコミの姿勢かなと思います。そしてそれに「感動」(?)しちゃう高校野球ファンの態度も。
野球というスポーツの特性もありますが、さすがにいまどき他のスポーツでここまでの無茶はしないんじゃないんですかね。していたとしてこのようにマスコミが肯定して報じるかどうか。先日の世界陸上でも、やや不安のあるサニブラウンを4×100mリレーで外したじゃないですか。本番ではジャマイカのボルトのアクシデントで銅メダルを取れましたが、それがなければメダルは不可だったわけで、陸連も、ここは本人の将来を考えてリレーから外したわけです。その時点で陸連も、これはメダルよりサニブラウンの将来のほうが大事だと考えたわけです。サニブラウンとこの甲子園のバッターでは、舞台も立場もまるで違いますが、でも本質は何も変わらないんじゃないんですかね。
それにしてもこの朝日の記事、まるで昔の戦争の際の武勇伝記事じゃないですか。ナントカ少尉がシナ兵を、みたいな。そういった報道の1つが例の「百人斬り」でもありますが、一応朝日新聞は、そういった過去の戦意高揚を目的とした報道は建前として否定・反省しているんじゃないかと思うんですけどねえ。
夏の高校野球というのはかなりめちゃくちゃなことがまかり通っている世界なので、私も以前記事を書いたことがあります。
けっきょく甲子園の「感動」というのは、組み体操の「感動」と同じようなものだと思うしかしそれにしても、上の選手はこれ最悪後遺症ものでしょ。それは監督なり部長なりが出場をやめさせる必要があるし、仮にそれで非難する手合いがいたら、それは非難に受けてたたなければいけないんじゃないんですかね。前橋育英高校というのはサッカーも強い(かの故・松田直樹の母校です)ので、たぶんスポーツ高校なのでしょうから、学校側の姿勢も「絶対勝て!(そのためには生徒への負担も仕方ない?)」というものなのかもですが(どうなのかは知りません)、うんなもん最終的には監督の運用でしょう。この選手が最終的にプロをめざしているのかどうかは知りませんが、それにも影響を及ぼしかねません。めざしていなくても(野球は高校までと考えていても)、こんなことで後遺症が残るリスクをかけるほどのことじゃないでしょう。
私は「ドカベン」というマンガを、山田太郎らの明訓高校での1年夏から2年の夏あたりまでの部分を読んだことがありますが、実物を確認はしませんけど春の大会の決勝で、怪我をしたピッチャーの里中智(彼が、里中満智子から名前をいただいているのはご存知? 水島新司のマンガに出てくる女性は、里中に顔が酷似している)が大要ここでつぶれていもいいから投げさせてくれと監督に訴えるというくだりがありましたが、そしてマンガでは監督は投げさせちゃうのですが、1970年代のマンガなら、まあそういうこともありなのかもですが、これは現在にはそぐわないですよね。おそらく作者はこれを肯定的に描いたのでしょうが、そして里中は(話の中では)その後も活躍しますが、単純に水島の見識の問題ではなく、やはり野球界ばかりでなく世間に、そのようなことを肯定する意識が強かったということでしょう。今はまた時代がちがいますが、今年の話は、上のマンガと酷似しているじゃないですか。
それで私が思い出すのが、組み体操ですね。最近の朝日新聞記事によると、さすがに組み体操も、やめる学校が増えているようですが、私が書いた記事に次のようなコメントを出す手合いがいたのには本当に呆れました。
>2016-09-24 21:29:04いちいち文句をつけないでほしいわw
組体操で頑張った人もあんたに感動してほしくないしw
こういうことを(いくら無責任なコメントとはいえ)書く人間の精神というのは本当に度しがたいですね。こいつだって、自分や自分の身内が怪我をしたり死んだりしたら少しは考えを変えるのかもですが、いずれにせよ人間のクズとはこういうやつのことです。
しかし拙ブログへのコメントだったら、影響力皆無あるいはそれに近いでしょうからまだいいですが、上の朝日新聞記事はそれよりはるかに影響があります。この記事が、主催する新聞社だから書いたのだ、他紙、他通信社、系列以外のテレビ局ほかならこんな報じ方はしない、というのならまだいいですが、たぶんそういうことではない。組み体操を危険だと考えるのなら、骨折している選手を出場させる行為も同様に批判するべきでしょう。お話にもなりません。
ほかにも高校野球での酷暑の問題(今年、開会式でプラカードを持つ女の子が倒れました)などいろいろあります。私個人は、夏の高校野球は、やるのなら(やめるというわけにも現実いかないでしょうから)、涼しい季節にするとか北海道でするとか、大阪ドームでやれとか考えますが、どれも現実性皆無です。このままだとグラウンドで熱中症で倒れて最悪死ぬ人間すら出かねません。選手はまだいいですが(ベンチで休めます)、審判など本当に危険です。何かがあってからでは遅い、ではなくて何かが起きなければ変わらないのでしょう。起きたって変わるかどうか怪しいものです。上の、私のブログにコメントをよこしたクズと同類です。それもどうかです。