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Channel: ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
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20年前の、対北朝鮮強硬派の考えや意見を再度ご紹介(なにが「常識人の常識」だか)

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前に、次のような記事を書きました。

1998年時点での対北朝鮮強硬派の予測する北朝鮮の将来(1) 1998年時点での対北朝鮮強硬派の予測する北朝鮮の将来(2) 1998年時点での対北朝鮮強硬派の予測する北朝鮮の将来(3)

つまり1998年に出版された反北朝鮮の本(『北朝鮮の延命戦争―金正日・出口なき逃亡路を読む 』)の中での

>北朝鮮の近未来を予測する12項目

なるものをご紹介した記事です。その内容は、概ね外れているように思います。

で、それからさらに時間も経ちましたので、また3つの記事に分けて紹介しているので参照もしにくいところがあります。よって再掲ということで恐縮ですが、これはこれで興味深いので1記事にまとめて再度ご紹介します。名前を連ねている人たちの紹介やNK会とかについての考察は省略しますので、興味のある方は(1)の記事を参照してください。この本が出版されてから20年目の2018年最初の記事(昨日の記事は、毎年恒例の新年のあいさつです)として発表します。

>1:金正日はいつまでもつか

玉城 素:1年半。金正日死後5周年までに。
関川夏央:現状ではかわりが見つかるまでは、むしろもってほしい。
恵谷 治:20世紀末まで。
野副伸一:余りもたないであろう。国民を食わせることができず、金日成のようにカリスマ性もないから。
花房征夫:数年間が限度。
久仁 昌:金正日政権は、限界点に迫りつつある。だが、彌縫策如何によって21世紀、2005年ごろまでは、つづくとみられよう。
鈴置高史:予測は困難。
小林一博:今世紀いっぱい。「国民に食わせる」という国家の役割を果たせない体制は、そう長続きしない。
荒木和博:ただちに排除されても不思議ではない(側近のテロなどのかたちで)。
田中 明:金正日「体制」ということなら、もうこわれている。


2:北朝鮮という国はいつまでもつか

玉城 素:中国保護下に15年ほど。
関川夏央:韓国に、北朝鮮と中国に対するリアリズムが育つ日まで。あるいは中国に統一コリアと国境を接する準備が整うときまで。
恵谷 治:21世紀初頭まで。
野副伸一:意外ともつかも。肝心の韓国が統一を何が何でも実現したいという気がない以上、周辺国も現状維持に傾くしかない。
花房征夫:金正日と国家は運命を共にしている。国家だけが生き残る場合は、中国介入の可能性が高い。
久仁 昌:中国が必要と考えれば、自国の政策展開に適う、「社会主義原理の北朝鮮製権」の継続・冊立を図る可能性もありえよう。
鈴置高史:予測は困難。ただ、周辺国の支援や、各国の現状維持策で、3年前と比べ存続の可能性が高まった。
小林一博:金正日体制崩壊後1年。閉鎖体制に穴があけば、国民の統率はできなくなる。
荒木和博:長くもっても20世紀中。
田中 明:韓国がこれまで通りである限りつづく。

3:戦争はおこるか、おこるとすれば、いつ、どんな形か

玉城 素:おこる。1年半後ころ非正規戦先行の打ち上げ花火型。
関川夏央:全面戦争でなければ1、2年以内に。あるいは金正日の精神・肉体が危機的となったとき。
恵谷 治:おきない。しかし、韓国内での不正規戦は現実に展開中である。
野副伸一:北朝鮮が起こす可能性があるケースは、①韓国が大混乱(例えば金大中暗殺事件)がおこった時。②北朝鮮の体制崩壊が目前に迫った時。
花房征夫:非常に少ない。戦争形態は、在韓工作員などによるテロ、建築物爆破などとか。
久仁 昌:米国を敵とする全面戦争は起こらない。敵を韓国に限定できる情勢と判断した場合には、限定的戦争の可能性もありうる。
鈴置高史:状況次第だが、98年初段階では可能性は高くない周辺国が北朝鮮の存続を消極的ながら望んでいることを北朝鮮が知ったからだ。
小林一博:おこらない。「窮鼠猫をかむ」例は、かつての日本だけ。対南工作はこれまで通りつづく。
荒木和博:金正日の立場があやうくなったとき、韓国国内でのテロに始まり、直接の南侵へと展開するだろう。
田中 明:挑発的事件はあっても全面戦争はおこらない。

4:いわゆるソフトランディングは可能か

玉城 素:不可能。ハードランディングでもない。クラッシュ型。
関川夏央:不可能。
恵谷 治:不可能。改革なき解放がソフトランディング幻想を生んでいる。
野副伸一:ありえないと思う。
花房征夫:可能性は失われた。現実は、危機管理問題に移っている。
久仁 昌:平壌の硬直した思考・行政能力に、ソフトランディングのプログラムに適応する「対応能力」の期待は、まったくもてない。
鈴置高史:不可能である。
小林一博:不可能。改革・開放に耐えられない国家の体質になっているため。
荒木和博:不可能。
田中 明:不可能。

5:韓国は統一を望んでいるか。また、その用意はあるか。

玉城 素:望んでいない。用意もない。
関川夏央:望んでいない。国民が北朝鮮に興味をもっていない。
恵谷 治:望んでいる。が、まだ用意はできていない。
野副伸一:望んでいる人もいるが、国全体として現在そういう方向にはない。
花房征夫:建前はともかく、現在の韓国は統一を望んでいないし、用意もできていない。
久仁 昌:現状では、自国がメインの立場に立つ早急な統一を望んではいない。まだ用意があるとはいえない。
鈴置高史:早急な統一は望まなくなっている。KEDO(朝鮮半島エネルギー開発機構)への姿勢で見られるように覚悟は固めていない。IMF支援で客観条件はさらに遠のいた。
小林一博:望んでいるが、できるだけ遠い将来がいいと思っている。用意はまだできていない。
荒木和博:望んでいないし、その用意もない。
田中 明:いまは望んでいないし、用意もない。


6:統一は可能か

玉城 素:やる気があれば可能。
関川夏央:韓国に覚悟が生まれ、かつ中国がそれを許したとき。
恵谷 治:可能。IMF統治が契機となってふたたび統一機運が盛り上がるのではなかろうか。
野副伸一:北朝鮮が韓国に攻撃を仕掛けてきた時、韓国はそれを受けて立たざるをえないであろう。そうなれば戦争が統一へのチャンスとなろう。
花房征夫:統一は韓国が決意さえすれば、大国利害がどうあれ可能である。
久仁 昌:統一は、北朝鮮が韓国武力統一路線=「故・主席の遺訓」を廃棄できるかにかかっている。金正日政権下では期待できない。
鈴置高史:平和的な話し合いによる統一は不可能に近い。
小林一博:結局、吸収統一になる。
荒木和博:当事者が主体的に統一する可能性はない。したがって、可能かどうかではなく、北の崩壊によって統一せざるをえなくなる。
田中 明:外部要因次第。


7:北朝鮮の食糧危機は本当か

玉城 素:政治的につくりだされた「食糧危機」は本物。
関川夏央:本当。しかし地域と階級による格差ははなはだしい。
恵谷 治:嘘。慢性的な食料事情が激化(引用者注・ママ)してはいるが、戦争用備蓄は十分にあるため。
野副伸一:本当と判断する。餓死者や亡命者の増加はその顕れである。
花房征夫:事実。
久仁 昌:伝えられる情報は、すべて一致しており、国連機関の調査その他、北朝鮮農業の構造的な実態などから見ても、真実と思われる。
鈴置高史:北朝鮮公開の「飢え死に寸前の子供」は真実でない可能性が高い。だが食糧不足で多くの人が生命線上にあるのは事実と思われる。
小林一博:本当。70年代後半から始まっている。経済運営、農業政策全般の失敗が原因。
荒木和博:総体としての危機は事実だが、階級によって極端な差がある。
田中 明:本当。

8:拉致被害者を救うにはどうすればよいか

玉城 素:政治、経済、軍事、情報のすべてを動員した圧力のみ。(救出作戦本部、救出レインジャー部隊の設置を考えたらどうか)
関川夏央:粘り強く、強硬な、首尾一貫した外交態度と交渉のみ。
恵谷 治:秘密交渉以外には不可能。援助などの交換条件として、明確な意思をもって粘り強く交渉すること。
野副伸一:日本政府がはっきりと事件を明らかにし、北朝鮮政府へきびしい対応をとる必要がある。
花房征夫:終始、拉致問題をとりあげること。
久仁 昌:日本政府が毅然たる態度で息長く、北朝鮮当局に拉致事実をつきつけ、抗議・陳情を継続的に繰り返すしか道はないと思われる。
鈴置高史:日本政府が粘り強く交渉すること。
小林一博:秘密交渉により第3国へ出国させる。北朝鮮は問われても「関知しない」と答える。後に何らかの支援をする。
荒木和博:あくまで原則的かつ強硬に対処すべき。基本的な姿勢を崩さなければ、相手は折れざるを得ない。
田中 明:諦めずに押しまくること。

9:現在の日本の北朝鮮政策は妥当か

玉城 素:定見なく、一貫性なく、及び腰で不可。
関川夏央:妥当ではない。対韓も含め、どのような政策があるのか見えない。
恵谷 治:妥当ではない。政治家たちの利益追求による場当たり式の対応のため。
野副伸一:良くない。日朝国交正常化交渉を急ぐ必要はまったくない。
花房征夫:腰がひけている。北朝鮮政策の究極目標は、北東アジアの平和と安定にある。政治、経済、文化を含めた総合外交が重要。
久仁 昌:野党、自民党幹部が情報を政府に一元化して国益を実現すべきである。中国がらみの対北朝鮮政策も考慮すべき段階にある。
鈴置高史:強攻策でいくか、柔軟策でやるかはそれぞれ理がある。ただ、外務省や政治家の利益のために、筋を曲げて正常化を急ぐ必要はない。
小林一博:微温的で無原則。「地域の平和と安定」のためにプラスになる―という原則が必要。
荒木和博:問題外。体制についての基本認識がない。
田中 明:政策があると思えず。


10:報道各社の支局は必要か。必要とすればいつか

玉城 素:現状では不必要。かえって有害。北の国内で、交通、通信、言論の自由実現後。
関川夏央:あった方がよい。しかし各社いっせいに、かつ優秀な記者が行くという条件を満たした場合。
恵谷 治:不要。希望するメディアがすべて常駐し、通常の報道活動ができるのであれば別。
野副伸一:あった方がよいと思うが、ちょうちん記事しか書けないような支局はいらない。
花房征夫:メディアの多様化は望ましいが、相手国のPR役では困る。
久仁 昌:アジアは今、新しい世界史の誕生の場と化した。「現場」報道を重視する意味で通信網の設置は早いほうがよい。
鈴置高史:あったほうがいいが、支局開設のために報道を曲げるのは好ましくない。
小林一博:必要だが、国交正常化とともに設置するのが妥当(各国とも外交案件、政府間取り決めになっている)
荒木和博:あるに越したことはないが、崩壊後、自由に報道ができるようになってから。
田中 明:不必要。現在の日本のマスコミが支局を置けば、向こうの広報部になるだけ。


11:国交正常化は、いつ、どんな条件で行うべきか

玉城 素:北の革命路線放棄後。南北平和協定による軍縮の実行過程で。
関川夏央:新興宗教国から、普通の途上国になったとき。急ぐ必要はまったくない。
恵谷 治:現体制がつづくかぎり急ぐ必要はない。
野副伸一:北朝鮮が南朝鮮革命原則を放棄することが条件である。
花房征夫:朝鮮半島の主役はソウルに移った。韓国とじゅうぶん協議して行うことが大事。
久仁 昌:南北情勢が動きはじめようとする今、早ければ早いほどよい。日本は、理由がなくて気ままな要求には応じない態度を貫くできである。
鈴置高史:被拉致者に解決のめどをつけてから。
小林一博:北朝鮮が普通の国際的つき合いができるようになってから。(拉致事件をそのままでは、正常なつき合いはできない)。
荒木和博:北の政権が崩壊し、かつ統一がなされずに分断が長期化すると認識した場合。
田中 明:北が少なくとも拉致事件を認めてから。


12:朝鮮半島情勢をにらみつつ、憲法9条はこのままでよいか

玉城 素:よいわけじゃない。9条は第1章天皇と連動させて、全面改定すべき。
関川夏央:よくない。自衛権を明文化すべき。
恵谷 治:よくない。勝手な解釈で政治家たちに弄ばれないように、明確な文章に変えるべきである。
野副伸一:朝鮮半島の有事に備え、日米安保体制を強化していく必要がある。憲法9条の見直しは、いまの日本人の精神状況ではむずかしい。
花房征夫:よい。自国の安全と周辺国の安定化を意図する日米安保ガイドラインの見直しは現実的選択。
久仁 昌:9条問題は、日本人の合意による理念上の問題、我が国の存続・防衛の問題である。否定するのであれば国交正常化を急ぐ必要はない。
鈴置高史:北朝鮮問題にかぎらず安全保障に関し集団的行動がとれるようにすることが必要だ。
小林一博:いい。
荒木和博:憲法改正はとても間に合わない。憲法自体を「努力目標」にして、実質面を補完する法(ex.防衛基本法)を制定すべき。
田中 明:改正すべき。集団自衛権を認めることと平行して。

個人的な意見ですが、実に連中の意見は現実性がないですね(もちろん全部が全部そうだとは言いませんが)。それで関川などは

> 近未来予測は、ある意味で通俗なやり口といわざるを得ない。それを承知で編集委員会があえてその手法を採用したのは、大多数が普通の人々であるだろう本書の読者の利便に供したいと発想したからだが、同時に、北のみにとどまらず、長くコリア全体を見つづけ学んできた民間研究者たちの見方を、ここで日本政府にも端的に示しておきたいという意図もひそんでいる。読者は、これら執筆者の北朝鮮の将来へのクールな展望とともに、日本外交への強い危惧の念をも感じとって驚かれることだろう。しかし、それこそが常識人の常識であると知っていただきたいのである。

とまで書いているくらいでお話にもなりません。なにが「常識人の常識」だか。馬鹿にもほどがあります。たぶん自分の予想(願望)が片端から当たらなかったことが、関川が北朝鮮言論から撤退したことの一因なのでしょう。うんなもん、訂正すべきところは訂正すればいいだけじゃんと思いますが、何をいまさらながらデタラメな野郎です。

それで何回も同じことを書きますと、横田さんたちがお孫さんに会わないように説得するために西岡力や荒木和博らが使った殺し文句(?)は、たぶん大要「北朝鮮の金体制はまもなく崩壊するから、いま会わなくても大丈夫だ」というものだったと思います。で、この連中は、そういうたぐいのことを拉致被害者が日本に返ってくるよりはるか以前から、「近日中に崩壊する」という趣旨で語っているのだから、あてにならないことはなはだしいですね。連中の主張は単なる願望であり、客観的な裏づけがあるわけでなく、それでいて異常なまでの自信と図々しさで自分たちのドグマを拉致被害者家族らに押し付けるのですから、こいつらほど迷惑な連中も少ないわけです。ほんと、どうしようもないやつらです。

ところで鈴置氏など、このころよりむしろ現在のほうが言論が明らかに劣化していますね(苦笑)。個人的な変化か、商売上とかしがらみとかそういう類のことかそのあたりは不明ですが、一応「ボーン・上田記念国際記者賞」なんていう賞をもらったくらい優秀な記者がどうしてこうなるのか。非常に興味深いですね。極端な話、藤岡信勝がいくら劣化したところで、あれは彼の専門である教育学のことではないし(こう言っては失礼ですが、世間の人間で、彼の教育学に興味がある人間はそんなにはいないはず)、福島香織なんかはフリーになって仕事が苦しくなってそれで劣化したという部分があるのでしょうが(すべてではないにしても、そういう部分はあるでしょう)、彼はいまだ日本経済新聞の記者ですからね(笑)。なにがどうしてこうなるのか。いろいろ興味深いものはあります。


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