今日はほとんど記事の紹介です。
産経新聞 10月30日(水)12時10分配信
「ピザを大量に注文されましたか?」
福岡県内の大学の研究室で働く男性(42)に、宅配ピザ店から電話があったのは、平成23年の春。男性の名前で大量の注文が入ったというが、身に覚えがないので即座に断った。
男性は、神奈川県逗子市で昨年11月、元交際相手の男=当時(40)=に刺殺された三好梨絵さん=同(33)=の兄。後日、梨絵さんに電話で顛末(てんまつ)を伝えると、「ごめんね。ストーカーのせいだ」と弱々しい声で何度も謝られた。
梨絵さんは18年ごろから警察に男からの被害を相談し、兄も話を聞かされていたが、「ここまで深刻だとは思わなかった」。ピザの一件から間もなく、男は脅迫容疑で逮捕され、執行猶予付きの有罪判決を受けた。だが、保護観察中に梨絵さんを殺害して自殺し、真相は闇に葬られた。
警察が介入しながら防げなかった悲劇に、兄は「どうしたら梨絵を救えたのか」と自問自答を繰り返した。刑法や犯罪学などの専門書を40〜50冊読み、ストーカー問題の専門家に尋ね、答えを求めてきた。
「被害者を二度と出さないためには、警察の介入や厳罰だけではなく、加害者対策が必要では」。事件から1年を迎え、こう結論づけた。年内には専門家を交え、梨絵さんの事件を検証する研究会を立ち上げる。
◆米では強制入院も
精神科医で、NPO法人「性障害専門医療センター」代表理事の福井裕輝氏(44)も加害者対策の必要性に同調。「警察の口頭・文書警告で、8割はストーカー行為をやめるが、残り2割は続ける。その中には治療でやめられる人も確実にいる」と指摘する。
ストーカーが殺人や傷害などの凶悪犯罪に発展するのは、「自分がつきまとうのは相手のせい」という被害感情を持ち、相手に拒絶されても「受け入れられるはずだ」と自己中心的に考える性質があるからだという。
福井氏はこうした加害者の特異な傾向を「ストーカー病」と名付け、認知療法でのアプローチが有効だとみている。認知療法は、思い込みと現実のギャップを認識させて、考え方を変えさせる手法。具体的にはカウンセリングで複雑に絡む感情を解きほぐし、エスカレートするストーカー行為に歯止めをかけるという。
ただ、自ら治療を受ける加害者は限られる。対策が進む米国などでは、強制的に入院させる仕組みもある。福井氏は「強制入院とまではいかなくても、治療を受けない加害者に、どう対処するかを検討していく必要がある」と訴える。
警察庁は加害者の更生に向けた対策を本格化させるため、来年度予算の概算要求に約1100万円を計上している。加害者のカウンセリング費に充て、“先進国”で現地調査を行う。
◆深刻化避けるには
一方、専門家は、被害者にも被害を深刻化させないための自衛策を求める。
ストーカー問題に取り組む調査会社「SP解決センター」(東京)は、インターネットの交流サイト「フェイスブック(FB)」や短文投稿サイト「ツイッター」、スマートフォンの無料通話アプリ「LINE(ライン)」を通じた被害の広がりに着目する。
FBで「友達」だけに閲覧を制限しても、第三者を装う元交際相手を友達として閲覧を許可(承認)し、飲み会などの行動を把握されたケースもある。東京・三鷹の事件でも、池永チャールストーマス被告(21)=殺人などの罪で29日起訴=が女性になりすまし、ラインで鈴木沙彩(さあや)さん(18)の友人にメッセージを送っていた。
常磐大学大学院の諸沢英道教授(被害者学)は「ストーカー対策は警察の意識改革に加え、加害者対策や被害者の啓発など、自治体や民間団体を巻き込み、社会全体で取り組む必要がある」と指摘している。
毎日新聞 10月30日(水)7時13分配信
ストーカー事件の被害者遺族や専門家らが11月、殺人など重大事件にエスカレートすることを防ぐための対策を検討する研究会を発足させることが分かった。ストーカー対策でこうした横断的な試みは初めて。被害者保護だけでなく、精神科医などによる加害者側へのカウンセリングや治療法も研究し、「被害者も加害者も生まない社会」の実現を目指す。【神保圭作】
◇被害者遺族や専門家ら横断的試み
発起人は、神奈川県逗子市のストーカー殺人事件で、妹の三好梨絵さん(当時33歳)を失った男性(42)=福岡県在住。梨絵さんの元交際相手の男は2011年6月、執拗(しつよう)に電子メールを送りつけたとして脅迫容疑で逮捕されていたが、その後もストーカー行為はやまず、梨絵さんは自宅で刺殺された。
男性は事件後、「事前に何かできることがあったのでは」との思いに駆られ、ストーカー問題に詳しい専門家らを訪ね歩いた。再発防止に向けた意見を聞き、海外の事例や対策を調べた。米国やカナダでは、重大事件に至る前に加害者にカウンセリングなどを行うことに力を入れているが、日本では一部の民間組織の活動にとどまっている。
その結果、女性をシェルターに避難させるなどの「対症療法」では被害を根絶できないと感じ、「加害者を生まない仕組みづくりが必要」と考えるようになったという。発足させる研究会には臨床心理士や犯罪心理学者らに参加を呼びかけ、一部からは内諾を得た。加害者側への医療的ケアや家族を含む周囲の対処法を研究し、国に対策を提言する方針だ。
男性は「加害者側へのアプローチを充実させれば、事件を生み出す感情のゆがみを正せる可能性がある。東京都三鷹市で女子高校生が殺害された事件についても事前に対処できた可能性もある。社会として事件を防ぐ方法を考えたい」と話す。
いろいろな考えはあるでしょうが、本当にたちの悪い人間に当たった場合、一体何ができるのかという気がします。実際、逗子の事件では、犯人の男は女性を殺害した後自殺しています。たぶん犯人は、かなり早い時点で女性を殺して自分も自殺する気だったと思われるわけで、そうすると刑罰とかの抑止力もないか、ほとんど期待できないということになりそうです。三鷹の事件でも、犯人が自殺する気だったみたいな供述をしているという記事を読んだことがあります。もちろん本当にそう考えていたのかはわかりませんが、少なくともこのような犯罪をする人は、犯行時にはその犯罪に対する刑罰ということはあまり考えていなかったと思われます。考えていたらたぶんこのような犯罪はしないでしょう。三鷹の事件でも、犯人の男性はたぶんそうとう厳しい刑罰が科せられるわけですが、それはこの人物の犯行を抑止するには全く役に立たなかったわけです。
その極端な例が、これも世間で話題になった長崎のストーカー殺人事件です。事件の概要は−
>三重県桑名市の無職筒井郷太被告は、千葉県習志野市で同居していた女性(三女(当時23))が、家族によって西海市の実家に連れ戻されたと思い込み、家族を殺害して連れ戻そうと計画。2011年12月16日午後6時ごろ、西海市の実家の敷地内にある別宅に窓ガラスを割って侵入し、祖母(当時77)を包丁で刺殺。さらに午後6時20分ごろ、実家に侵入し、母(当時56)を包丁で刺殺し財布などを盗んだ。そして二人の死体を、母のワゴン車に押し込んで隠した。
2011年9〜10月に習志野市内で女性の顔を殴るなどして約3週間のけがをさせたほか、2011年11〜12月、三女の姉弟や同僚ら8人に「お前は必ず殺す」などとメールを送って脅した。
三女と筒井被告はインターネットの会員制交流サイトで2010年9月に知り合った。2011年5月から三女の住む習志野市のマンションで同居を始めたが、筒井被告は三女のメールを先にチェックする、勝手に家族や友人たちと連絡をとらせない、勤務中の出来事について10〜15分おきにメールや電話で報告させる、など厳しく束縛した。6月下旬以降、連絡や帰宅が遅れたといった理由で三女の頭や顔を殴る蹴る等の暴行を加えた。「俺から離れたら、絶対にお前の家族を殺す。先輩、友達も殺すし、みんな殺す」などと脅迫した。三女は逃げ出すことも、家族や警察に相談もできない被虐待女性症候群となった。そして三女は事実上の監禁状態にされた。
2011年10月29日、三女の父親から相談を受けた長崎県警西海署が、千葉県習志野署に通報。30日、三女の部屋に長女、会社上司と習志野署員2人が突入。署員が筒井被告を傷害容疑で任意同行したが、「二度と近づかない」との誓約書を書かせて帰した。三女宅にはその後も筒井被告から電話があった。31日、父親が三女を西海市の自宅に連れて帰った。
11月1日、父親は西海署に「傷害の被害届を出したい」と相談したが、「事件が起こった場所の警察署へ」と言われた。同日、習志野署は筒井被告に2回目の警告を行った。父親は4日、習志野署に「被害届を出したい」と電話をする。5日、西海署に「無言電話が続く」と相談した。8日、神族が習志野署に「三女の部屋に侵入の跡がある」と通報したが、同署は対応しなかった。13日頃から、筒井被告は三女の知人らに脅迫メールを送り続けた。21日、父親は西海署、習志野署に脅迫メールについて相談。両署とも「被害者の居住地の警察署に相談を」と言うのみであった。そこで父親は桑名署に脅迫メールを伝え「筒井の実家巡回を」と要求。同署は「西海、習志野署に確認する」と回答したものの、その後連絡はなかった。いずれの署もメール内容を詳しく確認しなかった。
12月1日、三女が習志野署に「被害届を出したい」と電話し、生活安全課は「いつでもいい」と回答した。そこで6日、父親と三女が習志野署で傷害の被害届を出そうとしたが、応対した刑事課の係長は別事件の対応を理由に「被害届の提出は一週間待ってほしい」と伝え、捜査を始めなかった。その理由は、12月8日から10日まで、生活安全課長を班長とする当直勤務のグループ単位で行う北海道への慰安旅行に参加するためだった。他メンバーは刑事課の係長を含む4人、生活安全課、地域課、交通課から2人、警備課の1人で合計12人だった。
7日、三女の知人が脅迫メールについて県警に相談をしている。8日、桑名市の実家に戻っていた筒井被告は家を飛び出し、翌9日、未明から三女宅のチャイムを鳴らしたりベランダを叩いたりした。父親は習志野署に通報したが、警察官は「顔を確認したのか」「逮捕はできない」と言って帰った。その後、女性の自宅に筒井被告の両親が来て「(息子を)早く逮捕してほしい」と訴え、女性の父親が署に連絡した。刑事課員が「逮捕状が出ていない。現行犯でない限り困難」と説明した後、筒井被告らしき男を自宅前で発見。追跡するも見逃した。刑事課長は筒井被告を電話で呼び出し署で事情を聴くが、暴行を否認。逮捕を検討したが、捜査を先送りして三女への事情聴取が始まっておらず不可能と判断。生安課へ引き継いだ。生安課係長は女性宅周辺を徘徊した人物を筒井被告と確認できず、ストーカー規制法による検挙も断念。警告だけで済ませ、迎えに来た筒井被告の両親に連れ帰るよう指示した。
12日、習志野署は三女と父親から事情聴取を始めた。14日、習志野署はようやく被害届を受理した。同日夜、桑名市の実家に戻っていた筒井被告は、父親を殴り、母親の携帯電話を奪って家出した。筒井被告の父親が「息子に殴られた」と119番。署員が駆け付けた際には筒井被告の所在は不明となった。なお筒井被告の両親もこれまでに計3回、相談したり通報している。筒井被告は金を持って、長崎に向かっていた。三重県警から連絡を受けた千葉県警は三女の安全を確かめたが、長崎県警には筒井被告の動きを伝えていなかった。
16日の事件当日、三女と父親は長女とともに東京にいた。午後9時ごろ、学校から帰宅した次男が、室内が荒らされている状況を知り、ワゴン車の荷台から2人の死体を発見した。
家族らの説明から筒井被告が浮上。捜査員が17日午前9時20分頃、長崎市内のホテルにいた筒井被告に任意同行を求め、事情聴取し、同日、殺人、住居侵入容疑で逮捕した。この日、千葉県警は傷害容疑で筒井被告の逮捕状を取っていた。
2012年1月、筒井被告を鑑定留置。4月24日、鑑定が終了し、26日に殺人、住居侵入、窃盗の罪で筒井被告を起訴。5月1日、長崎県警が傷害容疑で筒井被告を再逮捕。21日、脅迫容疑で筒井被告を再逮捕した。
この事件は、1審死刑です。私は死刑反対論者なので死刑に賛成はしませんが、しかしこの事件は死刑判決になるだろうと考えます。誰もが「ここまでしなくてもいいじゃないか」と思うでしょうし私もそう思いますが、しかし実行されたのだからこれまたどうしようもありません。つまりは予想される死刑判決は、これまたこの人の犯行を抑止するに至らなかったわけです。
こういう損得でない行動というのは非常に怖いですね。やれば非常に厳しい刑罰が待ち構えているのに、犯罪をおこなう。誰も好きで被害者になるわけではないし、またそこまでひどい目に遭うような落ち度があるわけではもちろんない。人間どんな落ち度があろうと、殺されるほどのことはそうそうめったにはないでしょう。そんなものには誰って遭遇したくありませんが、たぶん可能性の問題で、誰かは被害にあう。上の記事で
>東京都三鷹市で女子高校生が殺害された事件についても事前に対処できた可能性もある。
とありますが、この件で対処できたかどうかは私は判断できませんが(たぶん実際には極めて難しいと思います)、どうにもならない案件も確実にあります。そうならないためには、それこそ家族離散で引越しするなんてことすらせざるを得ないかもしれません。勤め先も特定されないように転職するとか、海外に逃げるとか、そんなことしていたら人生めちゃくちゃですが、しかし身を隠さないと最悪殺されかねません。警察が逮捕したって、よほどの重罪を犯さない限り執行猶予判決、あるいはしばらく刑務所にいるだけです。出所したら…。
inti-solさんは、私が投じたコメントの返しで
>犯罪を犯したらどういう刑罰ということを冷静に判断できるなら、こういう種類の犯罪を犯す人はいないはずですが、世の中そういう冷静な判断を常に維持できる人ばかりではないところが問題です。
>何とかそうならないための対策は講じたいものです。
とおっしゃっています。しかし何らかの対策はあるんでしょうか…。上の「注意点」は、最初の記事の画像ですが、書いてあることはすべてお説ごもっともですが、最終的には上の話を全部守っていても、だめなときは絶対だめでしょう。残念ながら。