昨日(11月12日)書店で本をあさっていたら、興味深い本を見つけました。
著者の岡江晃氏は、精神科医で、刑事被告人の精神鑑定も担当していました。著名な事件では、大阪教育大学付属池田小学校での大量殺人事件の犯人の精神鑑定も担当しました。で、今年岡江氏はその時の精神鑑定についての書籍を発表しており、私も記事を書いています。
この記事で私は、
>たぶん読んでいてそうとうストレスがたまる本だと思うので感想を書ける自信がありませんが、書けたら記事にします。
私は、犯罪被害者遺族を批判することもあり、その点でいろいろ批判も受けています。そういったことをかんがみても、やはりこの重大事件の犯人の論理というか思考様式というのは知っておきたいと感じています。
と書いています。私が上の記事を書いたのが、今年の5月19日(実際の執筆はその前日)ですから、ちょうど半年ですが、今にいたるまで私はこの本の感想を書けません。正直なかなかそれは難しいというのが本音です。
しかし私が、この本を書店で見て「おや」と思ったのは、著者のことを知っていてその本をすでに読んでいたためだけではありません。著者がつい最近亡くなったことを知っていたからです。訃報を。日経新聞から。
>岡江晃氏が死去 元京都府立洛南病院長
2013/10/29 21:32
岡江 晃氏(おかえ・あきら=元京都府立洛南病院長)28日、へんとう腺がんのため死去、67歳。告別式は30日午後1時から京都市東山区五条橋東3の390の中央ブライトホール。喪主は長男、寛明氏。
2001年6月の大阪教育大付属池田小の校内児童殺傷事件で宅間守元死刑囚(04年執行)の精神鑑定を担当した。
私は岡江氏の訃報を知った時、ああ、氏はいわば遺書のような意味合いであの本を出版したのだなと思いました。病名からして、たぶん氏は、自分に残されている時間がさほど長くないことを意識されていたのでしょう。そう考えると、ちょっと(いや、かなり)複雑な気持ちになりました。
それで、この本の出版を昨日知りました。著者紹介を読んでも、著者がすでに故人であることは(当然ながら)書かれていませんでした。奥付は確認しませんでしたが、Amazonによると本の出版は11月9日付ですから、私の勝手な想像では、岡江氏は、この本が出版されるころにはご自分はこの世の人ではないことも覚悟されていたのかもしれません。全く話は違いますが、かのマルコムXも、自伝の出版まで自分は生きてはいないだろうと覚悟していました(これは自伝に出てきます)。
ちょっと本を開いてみたところ、「ですます」体の文章でした。前著も、鑑定部分以外のところはそうでした。たぶん氏は、まさに一般読者のために最後のメッセージをこの本にまとめたのでしょう。Amazonから、内容の紹介を引用します。
>内容紹介
91人の被告人と対面した精神鑑定医(著者)が、精神障害者の犯罪に切り込んだ衝撃作! 取材殺到の話題作『宅間守 精神鑑定書』の著者による第二弾。 精神障害とりわけ統合失調症(精神分裂症)に対して厳罰化を求める風潮、そして裁判員制度のスタート。 鑑定事例を詳細に引きながら、「責任能力あり・なしの境界線」を世に問う。 〈本書収載の鑑定事例〉 [事例1]車で通勤途上の人たちを次々とはねて多数を殺傷 [事例2]父親を包丁で刺して重傷を負わせ、止めに入った母を刺殺 [事例3]長年各地を放浪したホームレスがコンビニで焼酎などを万引き >著者は、宅間守元死刑囚をはじめ91件の精神鑑定を行ってきた。精神障害を負った被告に対して厳罰化を求める風潮、そして裁判員制度のスタート。精神障害を負っていても罪をつぐなうべきなの?鑑定事例を詳細に引きながら、「責任能力ある・なしの境界線」に切り込んだ問題作。 これは面白そうですね。さっそく読んでみたいと思います。読んで記事を書けたら記事を書きます。書けなかったら書きません。すいません。 私が特に興味のあるのは >精神障害とりわけ統合失調症(精神分裂症)に対して厳罰化を求める風潮 ですね。このブログでも、かつて(おそらく)統合失調症を患っている方の記事を引用した記事を発表したことがあります。統合失調症患者が必ずしも犯罪発生率が高いというわけでもないようですが、しかし専門家のお考えをいろいろ学べればです。 最後に、岡江晃氏のご冥福を祈ってこの記事を終えます。