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Channel: ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
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映画字幕翻訳家、翻訳家、ミュージシャンの寺尾次郎氏が亡くなる

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もうだいぶ前になってしまいましたが、次のような記事を以前に書きました。

遅ればせながら、奥村昭夫氏の死を知る

奥村氏は、前衛映画の監督をした後、もっぱらゴダールの翻訳家、紹介者として有名でしたが、2011年に亡くなりました。私がその死を知ったのは、記事を書いた14年の12月です。

それで、奥村氏ほどゴダールに特化されていたわけではありませんが、字幕翻訳家、一般の翻訳家、ミュージシャンでもあった寺尾次郎氏がお亡くなりになりましたね。記事を。

>字幕翻訳家の寺尾次郎氏が死去…62歳
2018年06月06日 18時38分
 寺尾次郎氏 62歳(てらお・じろう=字幕翻訳家)6日、胃がんで死去。

告別式は近親者で行う。喪主は妻、恵子さん。

 ジャン・リュック・ゴダール監督作品など、フランス語、英語の作品を中心に多数の映画の字幕翻訳を担当。クロード・ランズマン監督による長編ドキュメンタリー「SHOAH ショアー」も手がけた。近作に「マルクス・エンゲルス」など。フランス芸術文化勲章(シュバリエ)を受章。山下達郎さんを中心に結成されたシュガー・ベイブにベーシストとして参加した。長女は、シンガーソングライターで文筆家の寺尾紗穂さん。

もうひとつ

>元シュガー・ベイブで字幕翻訳家の寺尾次郎が死去、長女の寺尾紗穂が公表
2018年6月6日 17:54 129

元シュガー・ベイブのベーシストで、映画字幕を中心とした翻訳家の寺尾次郎が、本日6月6日朝に死去した。彼の長女であるシンガーソングライターの寺尾紗穂がTwitterで公表した。

葬儀は親族と関係者のみで行われるとのこと。寺尾紗穂はTwitterで「私にとっては長らく『遠くて遠い』父でしたが、最後に少し近く感じることができました。ホスピスに移る日、看護師さんに『またどこかで』と言った父の姿が目に焼き付いています。映画の一場面のようでした」とつづっている。

寺尾次郎は学生時代の佐野元春が結成したバンド・バックレーン元春セクションにベーシストとして参加し、1975年にハイ・ファイ・セットのバックバンドに在籍。その後、山下達郎からの誘いを受けて第2期シュガー・ベイブのメンバーとなり、1976年に解散するまでシュガー・ベイブに在籍した。シュガー・ベイブ解散後はナイアガラ・トライアングル(大滝詠一、山下達郎、伊藤銀次)のアルバム「NIAGARA TRIANGLE Vol.1」や、大貫妙子のアルバム「Grey Skies」などのレコーディングに参加。以降は映画字幕の翻訳家に転身し、映画美学校の演習科講師なども務めた。字幕を担当した近作は「ダゲレオタイプの女」「皆さま、ごきげんよう」「ハッピーエンド」「修道士は沈黙する」など。2016年にはジャン=リュック・ゴダールの監督作「勝手にしやがれ」「気狂いピエロ」の新訳に挑んだ。

なお寺尾が字幕を手がけた「マルクス・エンゲルス」は、現在東京・岩波ホールほかで上映されている。

娘さんのTwitterより。

>寺尾紗穂 @sahotera

父寺尾次郎が今朝永眠しました。葬儀は親族と関係者のみで行います。私にとっては長らく「遠くて遠い」父でしたが、最後に少し近く感じることができました。ホスピスに移る日、看護師さんに「またどこかで」と言った父の姿が目に焼き付いています。映画の一場面のようでした。

読売の記事を読む前の病名が判然としていない段階でこのツイートを読んだので、ああ寺尾氏はがんか何かで亡くなったのだなということはわかりました。ホスピスに入るということは、そういうことです。

それで私は寺尾氏のミュージシャンとしての足跡には全く暗いので、特に字幕翻訳家としての氏について書きたいと思います。

1976年ごろまででミュージシャンとしての活動を終えた寺尾氏は、Wikipediaによれば

>時期は不明だが山田宏一に師事し

1980年代後半ごろから、フランス映画を中心とした字幕翻訳活動に携わります。90年代から、『美しき諍い女』のような話題作を翻訳することも増えてきます。特にゴダール作品での活躍は目覚ましく、『ゴダールの映画史』、『新ドイツ零年』、『ゴダールの決別』、『映画というささやかな商売の栄華と衰退』、『勝手に逃げろ/人生』、『万事快調』、『はなればなれに』といった作品を、さらには再上映されたゴダール映画である『パッション』などの字幕翻訳も担当、2016年にはついに『勝手にしやがれ 』と『気狂いピエロ 』の新訳を制作し、上映もされました。こちらの記事を参照してください。

事件です!ゴダール大先生の『勝手にしやがれ』『気狂いピエロ』が寺尾次郎の新訳決定版で蘇り、上映決定!!!

私の勝手な想像ですが、たぶん寺尾氏は、これを2本の字幕翻訳を制作することを自分の人生の一つの大目標に設定していたんじゃないんですかね。彼がその時点で自分の残り時間が少ないことをご存じだったかどうかについては当方もちろん知りませんが、この2作の字幕翻訳を完成させ、そして上映させることができて、もちろんこれでやるべきことはやったとはいえないまでも、人生における大きな目標を成し遂げたという満足感があったのではないかなと思います。たぶんゴダールが好きな日本人なら、彼の映画の字幕を自分で作れればなんていう妄想を持った人が多いのではないでしょうか。そして彼は、新訳という形で代表作2作の字幕を作ってしまったわけです。それはとても幸せなことではないかと思います。

寺尾次郎氏のご冥福を祈ってこの映画を終えます。上の写真は、娘さんのツイッターに載っていた寺尾氏の写真、下は、もちろん寺尾訳のDVDソフト2点です。また、彼のもしかしたら遺作となった『マルクス・エンゲルス』も張り付けておきます。

勝手にしやがれ 

気狂いピエロ


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