京都新聞は、滋賀県をも地盤としている地方紙とブロック紙の過渡的な立場にある新聞です。それでその京都新聞の記事に興味深いものがありました。全文引用します。
>県警の体質に異例の苦言 警官射殺事件判決、旧態依然の指導印刷用画面を開く
滋賀県警が発表した再発防止策の概要
「組織の指導や養成のあり方が検討されるべきだ」。元巡査に懲役22年を言い渡した8日の彦根警官射殺事件の裁判員裁判の判決。伊藤寛樹裁判長は滋賀県警のあり方について再考を促した。背景には、5日間の公判で警察官の証言や調書により明かされた旧態依然とした体質がある。だが、この日も県警は「事件時の組織風土に問題はなかった」と、判決と乖離(かいり)した意識を見せた。
公判では、巡査部長の元巡査に対する執拗(しつよう)な指導が明らかになった。元巡査は「書類訂正を12~13回求められ、時には午前3時になった」と証言。元巡査の「できの悪さ」を親のせいであるかのようになじった発言は、犯行の直接のきっかけとして事実認定された。
「かなり厳しい。あんなに怒らなくても」(2人のやりとりを見た市民)。「理不尽ではないが、恐怖で萎縮した」(巡査部長の指導を受けた若手警察官)。証拠提出された調書からも度を超えたような指導の様子がうかがえた。若手警察官からは、さらに厳しい指導をする警察官がいるという証言もあった。
判決は、警察学校の養成課程も「十分な教育を尽くすに至らず、指導担当者と新人との組み合わせ次第で達成度に差を生じさせかねない」と批判した。
公判では書類作成について、複数の警察官が重要な業務と述べながら、学校で教わらず現場で習得するのが実情とした。若手警察官は「警察学校を出ても、実際の書類作成はほとんどできない」と明かし、警察学校で学ぶ内容を問われても「あいさつ」「服装」「体力錬成」と答え、実務能力より組織統制を重視している面をうかがわせた。
判決は未熟な警察官が拳銃を携帯していたとも指摘した。裁判員を務めた20代の男性は会見で「10カ月で警察学校を出た未熟な子に拳銃を持たせるのは正直どうか」と疑問を呈した。
相談体制も機能しなかった。元巡査は「新人のくせに不満を言うと思われたくない」などと周りの評価を気にして、悩みを同僚らに相談できず、心身の不調があっても医療機関を受診できなかったと証言した。結果、県警は元巡査の苦悩をくみ取れなかった。
判決は、周囲に相談して事態の打開を図ることはできたとしたが、同日の会見で複数の裁判員が「相談できる環境づくりが必要と感じた」「最前線の警察官へのケアが必要ではないか」と投げかけた。
■「閉鎖的、人権意識が欠如」と識者
公判で明らかになった滋賀県警の体質や再発防止策について、太田肇同志社大教授(組織論)に聞いた。
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一番の問題は、県警の上下関係が、仕事上必要な範囲を超えてプライベートや人格にも及んでいることだ。親を侮辱されたという証言があったが、事実なら明らかなパワハラだ。書類訂正を12~13回もさせたり、勤務時間内でも未明まで指導するのはやりすぎだ。
だが、県警は「組織風土に問題はない」「適切な指導だった」と主張する。身内に甘く、加害者を生んだという認識が足りないと言える。県警には、厳しい指導の容認など、さまざまな面で人権的な意識が欠如しているのではないか。外部との交流が少なく、閉鎖的になっている様に感じる。
再発防止策を県警内部だけで考えたことも問題だ。警察と世間の常識にはずれがある。外部の専門家も交えて意見を聞き、一緒に考えるべきだった。
一方、再発防止策の内容では複数人で新人を指導する仕組みの導入は評価できる。交番勤務は長時間にわたって少人数で勤務し、絶対的な上下関係が生じて、閉鎖的になる。部下が異動を申請できる制度を設けたり、異動間隔を短くして人間関係を固定させないことも大切だ。
相談窓口の充実は機能するかは疑問だ。匿名でも調べれば分かり、仕返しを恐れて相談できない状況には変わりない。外部カウンセラーを導入するなど、内部の目を恐れず相談できる体制にするべきだ。
警察学校は、自分で一定判断して行動できるようにする教育が必要だ。
市民や自らを守るために、未成年でも拳銃を所持することは仕方ないかもしれないが、リスクもある。現場に出て半年から1年は拳銃を持たないなどの検討も必要なのではないか。
■「組織風土問題ない」と県警
滋賀県警は8日、判決を受けて、メンタルヘルス対策や警察学校での教養の充実といった再発防止策を発表した。滝口一也首席監察官は「組織風土に問題はなかった」と強調した。
再発防止策は、県警が業務委託する医師や県警職員の臨床心理士の意見を取り入れ、県警が考案した。完全な外部人材は関わっていないという。また、井本巡査部長の指導は「適切だった」とし、判決内容については「コメントする立場にない」とした。
鎌田徹郎本部長は「改めておわび申し上げます。引き続き、規律高い組織づくりに取り組んで参ります」などとコメントを出した。
【 2019年02月09日 17時53分 】
拙ブログでも、消防学校での言語道断ないじめ、暴行、あるいは勤務時間外ではありますが、消防士長の言語道断な不祥事をご紹介したことがあります。
「ふざけて」他人にアイロンを押し付たり服に火をつける馬鹿な消防隊員ふざけて、熱したアイロンを他人に押し付けたり、ふざけて、他人の家でその家の住人が着ている服にアルコールを噴射して火をつける人間というのは、精神異常者といわれたって文句は言えないと思いますが、未熟な消防学校の生徒(この後退校処分を受けて、懲戒免職)だって論外ですが、消防副士長の人物がそういうことをするというのもなかなかすごいと思います。つまり、制服を着ている公務員の世界というのは、ここまでひどいところがあるということでしょう。
以上の警察と消防の話は現場仕事の公務員の話ですが、自衛隊の最高幹部のコースである防衛大学校についても、すさまじい内情のようですね。記事を。写真も引用した記事より。
>元上級生らに95万円賠償命令=防衛大いじめ訴訟-福岡地裁
2019年02月05日17時56分
元上級生らへの賠償命令の判決を受け、会見する防衛大元学生の男性(中央)と弁護士ら=5日午後、福岡市中央区
防衛大学校(神奈川県横須賀市)の元学生で福岡県在住の男性(24)が、学生寮で「指導」と称するいじめを受け続け精神的苦痛を負ったとして、元上級生ら8人に慰謝料計1400万円を求めた訴訟の判決が5日、福岡地裁であり、足立正佳裁判長はうち7人に計95万円の賠償を命じた。
足立裁判長は、公務員である防衛大生が学生間で行う「指導」について、「規律を順守させるために行うこと自体は許容される」との見方を提示。その上で、7人の行為は適切な範囲を逸脱した「不法行為」「いじめ」だったと認定した。
判決によると、原告は2013~14年、体毛に火をつけられたり、掃除機で体を吸われたりするなど多数の暴行を受けていた。インターネット上での中傷、療養中にLINEグループから排除されるなどの嫌がらせもあった。
上級生が下級生の素行に落ち度を認めると点数がたまっていき、それを解消するためこうした暴行を強要する「粗相ポイント制度」など独自のルールも横行していた。
原告に声を荒らげるなどした被告1人については、「指導としての外観を失わせるほどのものではない」として賠償請求を棄却。責任は被告個人にはなく、国が国家賠償法で負う範囲にとどまるとした。
男性は福岡市内で記者会見し、「全員に賠償命令が出なかったのは残念。国に対する判決が残っており、これから主張を考えていきたい」と語った。防衛大に対しては「今後、自分のような学生を一人も出さない体質になってほしい」と求めた。(2019/02/05-17:56)
もう1つ。
>防衛大いじめまん延 暴行訴訟で賠償命令 福岡地裁 元上級生らに95万円
2019年2月6日 6時0分 西日本新聞
防衛大学校(神奈川県横須賀市)で「指導」と称して繰り返し暴行、いじめを受けたとして、福岡県内の元男子学生(24)が当時の上級生や同級生8人に慰謝料など計1400万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が5日、福岡地裁であり、足立正佳裁判長は7人に計95万円の支払いを命じた。
原告の元学生は1、2年生だった2013年6月から14年5月、上級生らから指導の名目で殴る、蹴るなどの暴行を受け、消毒用アルコールで体に火を付けられたこともあったと主張。様子の一部は撮影され、遺影のように加工した写真を無料通信アプリ「LINE(ライン)」に投稿されている。元学生は14年8月から休学。重度ストレス反応と診断されて15年3月に退校した。
上級生らは指導の一環だったなどとして、請求棄却を求めていた。
判決で足立裁判長は、上級生らによる暴行や嫌がらせを認定し「原告を精神的に追い詰め、指導としては適切な範囲を逸脱している」とした。一方、集団的ないじめが原因で体調を崩したとの原告側の主張については、「各被告の嫌がらせ行為に関連性は認められない」として退けた。
ロッカーを揺らし声を荒らげて指導したとされる上級生1人については「指導の方法として不適切だが、損害賠償を基礎づける違法性は認められない」と述べた。
原告の男性は、国に対して約2300万円の損害賠償を求めた訴訟を起こしており、年内に判決が言い渡される見通し。
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下級生への嫌がらせ、4年生57%「やった」
今回の訴訟では防衛大のいじめや暴力に関するアンケート結果も示され、下級生への嫌がらせが横行している実態が明らかになった。原告の男性は判決後に記者会見し「防衛大は自分のような学生を一人も出さないように変わってほしい」と訴えた。
裁判や家族によると、男性は災害救援に当たる自衛隊の姿を目の当たりにし、自衛官になることを決めた。2013年春に防衛大に入校したが、さまざまな嫌がらせに苦しんだ。上級生は、下級生のミスや不手際を「粗相ポイント」として加算。男性は風俗店で女性と写真を撮影するよう強要され、拒否すると体毛に火を付けられたという。
男性への暴行問題を受け、防衛大は14年に在校生約1800人にいじめの有無などに関するアンケートを実施した。弁護団が入手し、裁判で示したアンケート結果では、4年生の57%が「粗相ポイント」によるいじめを「やった」と回答。2~4年生の約半数が「やられた」と答えていた。
また、弁護団が入手した07年4月~16年7月の防衛大生の懲戒処分台帳によると、暴力や強要など私的制裁による処分が74件、窃盗や詐欺など刑法犯相当としての処分が135件に上った。合算した処分数は、同時期の防衛大生への懲戒処分全体の約4割に当たる。弁護団は「悪質さの程度が常識を超えている」と批判し、防衛大生に根強い「いじめ体質」を指摘した。
訴訟では、被告8人のうち7人は現在自衛隊の幹部になっている。男性は「自分にしたようなことを二度と繰り返さないでほしい」と強調した。
=2019/02/06付 西日本新聞朝刊=
最初の、警察の派出所での指導と、消防学校や防衛大学校での行為はまた性質が違いますが、警察学校というのもなかなかすさまじくひどい部分もあるようです。
なかなか凄まじい警察学校での人権侵害の実情 また警察学校での不祥事かそれで上の記事で引用しましたが、兵庫県の警察学校では、次のようなことがあったようです。
>暴力も振るわれた。E指導員という、A氏より年下の半年早く警察学校に入っている高卒の人物がいる。各クラスに、約半年早く入校した高卒の生徒が「指導員」と称して配置され、大卒の半年後輩をしごくシステムになっていた。そのE指導員は、朝食時にいきなりA氏の喉元をつかんで壁に押しつけたり、泥酔して部屋に入ってきて、いきなり平手打ちをしたりしたという。
滋賀県警の殺害された巡査部長の指導も、このようなものの延長の部分が確実にあるはずです。
それにしても制服を着た公務員の闇は、ものすごく深いですね。こういっては何ですが、こんな指導を受けた連中が刑事とかになって、まともに被疑者を扱うとは私には思えません。
なお現在2月14日の午後9時5分くらいですが、15日の記事として発表します。