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Channel: ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
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家族間の殺人事件が多いが、やはり自分(たち)だけで抱え込まないことが重要なのかなと思う

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最近2冊、似た系統の本を読みました。

介護殺人:追いつめられた家族の告白

孤絶 -家族内事件

どちらも新聞の連載をまとめたもので、毎日新聞の「介護殺人」が2016年11月の発売、読売新聞の「孤絶」が今年(2019年)8月の出版です。

内容については、題名からわかりますように、「介護殺人」のほうが、介護関係の事件および事件にまでは至らないまでも介護での問題に特化した本、「孤絶」のほうは、介護だけでなく、心身障害者の家族を持った親たちの関係、児童虐待、孤立死を扱い、さらに海外でのケースも触れられています。

過去、拙ブログでもいくつかこの2冊の本が扱っている件についての記事を書いています。いくつかご紹介しますと、

これでは大山のぶ代の人権が保障されない 明日のNHKスペシャルは必見(かも) 「やってられん」となれなかったから、こうなったのかもしれない なかなかすさまじい内容だ

といったところです。

それにしても、家庭内の殺人事件では、殺した加害者のほうも死ぬまで地獄を見ることもあります。実際、「介護殺人」では、に介護疲れで奥さんを殺して実刑となり出所した男性のところに取材に行き、それから間もなくして連絡が取れないのでどうしたのかと自宅を再訪したら取材後に自殺したことが分かったという話(p.114~)があります。自殺した男性が、自分の殺人を取材に来られたので奥さんを殺した記憶がフラッシュバックして、それで自殺に追い込まれたのかは定かでありませんが、しかし新聞の取材がなければあるいは自殺はなかった可能性は否定できないわけで、それは取材した記者、その上司、仲間ほかにとっても、彼(女)らに責任があるということではないにしても、とても後味の悪いものであることは間違いないところです。

また、これはけっこう世間でも話題になったかと思いますが、京都で介護に窮して母親を殺した男性が、裁判では執行猶予つき温情判決を受けたもののけっきょく滋賀県で琵琶湖に飛び込んで自殺してしまったという事例(p.94~)も紹介されています。この男性がどういう理由で最終的に自殺するに至ったかはわかりませんが、彼の場合親戚ほかも見放したわけではなく(むしろ良く面倒を見てくれていたようです)、おそらく彼の死の一因は、理由や事情はともかく親を殺してしまったことが強く心の傷になっていたという部分があったのだろうなと思いました。

そうなるとこのような本や報道を読むと、大山のぶ代のケースもけっこうやばかったかなという気がします。殺人にいたるのはさすがに少数としても、ひどい介護鬱になる人は少なくない。そして大山がまさにそうなわけですが、やはり女性より男性のほうが介護に対する精神的負担が大きいようです。毎日新聞の調査によると、介護殺人の加害者の7割が男性だったとのこと(p.153 )。同じページで紹介されている厚生労働省が調べによれば女性の介護者が7割だとのっことですから、やはり男性のほうがこのような事件を起こしやすいようです。その理由は、ジェンダー的な理由もあるでしょうし、家事育児に不慣れなところも大きい。そしてやはり男性のほうがこのようなことで自分(たち)で抱え込んでしまう傾向はあるようですね。もちろん「傾向」であってみんながみんなそうであるというわけでもありませんが、ともかくそのような現実は確かにあるようです。

「孤絶」のほうは、老人介護の事件については、一つの章をあてているだけですが、個人的には、この発言が、介護関係の事件を考えるうえでの大きなポイントだと思いますね。介護関係の殺人未遂事件の裁判員裁判で補充裁判員の人が、自分の親を介護する際に、いつも自分に言い聞かせているという言葉です。

>追い詰められてはいけない。無理をするのはよくない(p.68)

私が大山のぶ代の夫である砂川啓介の介護に、大変そうだと思ったのも、明らかに砂川が追いつめられていて、無理をしているように感じたからです。彼は、介護保険も利用せず、自分とお手伝いさんやマネージャーらのみで、大山の介護をしていました。

その次は、精神疾患や引きこもりなどの子どもへの対応に苦慮する親についての記事です。今年は、農林水産省の元事務次官が自分の子どもを殺めたという事件が大きな話題になりましたが、ほんとこういうことは、(当然ながら)人間には過去の地位などとは関係なく降りかかります。時に家庭内暴力、あるいは浪費、完全な寝たきりの子どもに年老いても親は対応しなければいけません。そしてひどい家庭内暴力があっても、警察や行政もなかなかよく対応してくれません。そういった修羅場は、こちらの記事でご紹介したこの本が参考になります。

「子供を殺してください」という親たち

さらに児童虐待の章で私が驚いたケースを。51歳の女性は、孫娘を激しく揺さぶて重いけが(重い後遺症が残ったとのこと)を追わせて実刑判決が確定しました。自分の娘が3人目の子どもを生んだので、女性の夫(子どもの祖父)が、奥さんに相談、すでに1人の子どもを預かっていたので大丈夫だろうと思っていたのですが、うまくいかず子どもを叩いたり、どなったりする。夫が娘に引き取ってくれと連絡すると、女性は「大丈夫だから。私が面倒見るから」とそれを制し、そして上のような事態になってしまったのです(p.151~)。

記事では、識者による大要、虐待というのは、悪逆非道な親のみが行うものではないという言葉が紹介されています(p.153 )。たしかにこの件では、祖父はもちろん、虐待をしてしまった祖母も、自分が虐待をするなんて想像もしていなかったはずであり、祖父祖母はもちろんのこと、孫の母親である娘も、悔やんでも悔やみきれないものがあるでしょう。本当に心が痛みます。

それでこういう本を読んでいてつくづく思うのは、けっきょくのところ、苦しくなったら、他人を巻き込むに限るということですね。他人に迷惑をかけたくないなんて考えていてもしょうがない。自分たちで抱え込んでしまうと、あまりに苦しくなる。いつも当てになるかは定かでありませんが、行政、社会福祉協議会、NPO法人、子育てサークル、知人、友人、親戚、民生委員、その他その他その他、使えるものはなんでも使って、自分以外の人を巻き込める人は、さすがに殺人とか心中などはさけられるのではないかと思います。こんなことで家族を殺したり、一緒になって自殺したって馬鹿らしいだけです。助けてくれる人、組織はどこかにあります。それは、「孤絶」の最後から2つ目の章(最後の章は、海外の事例の紹介です)にある「孤立死」にもあてはまるでしょう。日本全体で何人が「孤立死」しているか厚生労働省も統計を取っていないので不明ですが、統計が得られた都道県では、3.5%の死者がそうであるといいます(p.169)。核家族化や少子化、未婚者の増加など、孤立死が増える要素ばかりですが、これもやはり他人とかかわらないから孤立死にいたるわけです。あれ、あの人どうしたんだろうなと思ってくれる人がいれば、より孤立死の可能性も低くなります。残念ながらお亡くなりになってしまっても、発見されるのも早くなるでしょう。人間、どんな人間でも居場所がないということはありません。しかしないと感じる人にとっては、あるはずの居場所が「ない」ものなのでしょう。それは仕方ない側面もあるでしょうが、居場所のある人は、介護殺人ほかの家族間の殺人も、しないですむ可能性はより高くなることは、議論の余地がないでしょう。

それでは、最後に、「孤絶」で紹介されている犯罪白書の記述をご紹介します。2018年の白書で、「進む高齢化と犯罪」という特集から。すみません、本からの孫引きです。法務省も、このような犯罪は、「悲劇」ととらえていて、あからさまに非難するようなものではないと認識してることがうかがえます。

>高齢者特有の将来に対する不安や、自身と同様に高齢である配偶者との生活に行き詰まりを感じながら、これを抱え込んだままでいることが、殺人という悲劇につながった例が少なくない(p.6)


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