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Channel: ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
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どうやって対応すれば良いかいろいろ考える

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過日毎日新聞に載っていた記事です(魚拓)。表も記事にあったもの。

>認知症:115人鉄道事故死 遺族に賠償請求も
毎日新聞 2014年01月12日 03時00分(最終更新 01月12日 04時19分)

 
認知症の人の事故と鉄道会社の対応例
拡大写真 認知症またはその疑いのある人が列車にはねられるなどした鉄道事故が、2012年度までの8年間で少なくとも149件あり、115人が死亡していたことが分かった。事故後、複数の鉄道会社がダイヤの乱れなどで生じた損害を遺族に賠償請求していたことも判明した。当事者に責任能力がないとみられる事故で、どう安全対策を図り、誰が損害について負担すべきか、超高齢社会に新たな課題が浮上している。

 鉄道事故については各社が国土交通省に届け出て、同省は「運転事故等整理表」を作成している。毎日新聞は情報公開請求で得た整理表と各事故の警察発表などから、「認知症」という言葉が介護保険法改正で取り入れられた05年度以降の事例を調べた。当事者が認知症であることを記載していない届け出も多く、件数はさらに膨らむ可能性がある。

 事故の多くは認知症による徘徊(はいかい)や、危険性を認識しないまま、フェンスなどの囲いがない場所や踏切から線路に入って起きたとみられる。線路を数百メートルにわたって歩いた人や、通常は立ち入れない鉄橋やトンネルで事故に遭った人もいた。

 08年1月に大阪市で当時73歳の女性が死亡した事故では、駅ホームの端にある職員用の鉄柵扉から入り線路に下りた可能性がある。本人がGPS(全地球測位システム)発信器を身につけていたが、間に合わなかった死亡事故もあった。

 認知症の人による鉄道事故を巡っては、名古屋地裁判決が昨年8月、「家族が見守りを怠った」というJR東海の主張を認めて約720万円の賠償を遺族に命じた(遺族側が控訴)。家族会などからは「一瞬の隙(すき)なく見守るのは不可能。判決通り重い責任を負うなら在宅介護はできなくなる」と不安の声が上がっている。

 毎日新聞はJR東海の事故を含め、被害者の氏名や所在地が判明した9社10件の事故について、遺族や関係者に話を聞いた。

 遺族によると、係争中のJR東海のほか、東武鉄道が2件、近畿日本鉄道と名古屋鉄道が各1件で約16万〜137万円を請求していた。約137万円のケースでは会社側が事故で生じた社員の時間外賃金や振り替え輸送費などを求めていた。この事故を含む2件は双方の協議で減額されたが、4件とも遺族側が賠償金を支払っている。

他の5件は北海道、東日本、西日本、九州のJR4社と南海電鉄の事故で、いずれも請求なしだった。遺族によると、JR東日本は「認知症と確認できたので請求しない」、南海は「約130万円の損害が出たが請求しない」と伝えてきた。JR東日本は「そういった伝え方はしていない。事実関係に基づき検討し、請求を見合わせたのは事実」、南海は「回答は控えたい」とコメントした。JR各社で請求しないケースが目立つ一方、他社では「原則請求」の対応が少なくないとみられる。

 12年度の鉄道事故死者数は295人、統計上別区分の自殺は631件だった。【山田泰蔵、銭場裕司】

 ◇認知症
 脳血管や脳細胞の障害で記憶力や判断力が低下し、日常生活に支障が生じる程度に至った状態。以前は「痴呆」と呼ばれたが、侮蔑的で誤解を招きやすいとの理由で2004年12月、厚生労働省が行政用語を変更した。12年の患者数は「予備軍」と呼ばれる軽度認知障害の人(約400万人)を含めて約862万人に上ると推計され、高齢者の4人に1人に上るとみられる。

 ◇「個人賠償責任保険」などで損害対応できる可能性
 日本損害保険協会によると、遺族は「個人賠償責任保険」などと呼ばれる保険で損害に対応できる可能性がある。自動車保険や火災保険の特約として契約され、保険料は年数千円程度。ただし補償例が「ボールで人家の窓を割った」「飼い犬が人にけがをさせた」などと記載され、鉄道事故を対象と考えない人もいるとみられる。

 協会は「種類により対象になる場合とならない場合があるので詳しくは保険会社に相談してほしい」と話している。

記事にもあるJR東海での事故の民事訴訟の件については新聞その他でもわりと大きく報道されました。inti-solさんが記事を書いておられるのでご参照ください。

記事にもありますように、

>当事者が認知症であることを記載していない届け出も多く、件数はさらに膨らむ可能性がある。

というわけで、認知症の人の事故件数は、その実数はおそらくこれをかなり上回るのではないかと予想されます。そして高齢化社会がこれからも進む以上認知症患者数の数は今後も増加の一途をたどるでしょうから、たぶん将来的にも事故は増えることはあっても減ることは考えにくいでしょう。

それでこの件は、この記事を書いている私も読んでいるあなたも、いつ当事者になるかわかりません。私たちが認知症にならない保障はないし、家族になる可能性はもっと高い。いや、私も祖父が認知症ですから、同居はしていないから直接関係はないにしても、もちろん無縁ではありません。

上の記事を読んだ限りで言うと、どうも現状損害賠償等の対応はまさに鉄道会社しだいというところがあるようですね。司法も、現在係争中なので確定していないとはいえ、現段階では鉄道会社の主張を支持しています。でも720万円なんて払えませんよ、私。いや、払えたって払いたくないよ、そんな金。払いたい人間なんかこの世にいるわけもありませんが、記事で紹介されている関係者の発言にもあるように、

>一瞬の隙(すき)なく見守るのは不可能。判決通り重い責任を負うなら在宅介護はできなくなる

という以上の話ではないでしょう。事故を起こした認知症患者の行動は、おそらく鉄道営業法その他の違反になる可能性があり、本来だったら起訴もありえるのでしょうが、死んだら起訴できないのは当然として、死ななくったってたぶん心神喪失状態で不起訴処分になる見込みが強い。家族はそのような人間の行動までは責任をもてませんよね。しかし裁判でも遺族側不利となれば、可能な限り自分たちでその防止策を考えなければならなそうです。本来なら行政がガイドラインみたいなものを作成して、遺族なりなんなりの鉄道会社への損害賠償の支払い基準とか鉄道会社の請求基準みたいなものをある程度確定させるのがいいのでしょうが、それが難しい(民間同士の案件なので、行政が介入することが好ましくない)というのなら、記事にもあるように保険で対応するしかないですね。記事では

>遺族は「個人賠償責任保険」などと呼ばれる保険で損害に対応できる可能性がある。

とあり、ある程度こういった情報を公知にしていかなければなりません。また、保険制度も充実させる必要があります。加入者には最大限漏れがないようにしていかなければ・・・。

本来なら鉄道会社が請求を控えるのがいちばんいいのでしょうが、法的にも鉄道会社は請求する権利は当然あるという立場ですから、現段階ではそんなに期待ができなさそうです。上の記事のJR東日本の談話で

>そういった伝え方はしていない。事実関係に基づき検討し、請求を見合わせたのは事実

としていて、南海電鉄がコメントを拒否したのは、そういったことを会社側として大々的に公表するわけにもいかないという認識があるのでしょう。やはり自分で何とかしなければなさそうです。

このブログの読者の方の中にも、実際に認知症のご家族を介護している方もいるかもしれません。その方は、保険についてお調べになってもよいのではないでしょうか。いずれにせよこの件については私もこれからもいろいろ考えていきたいと思います。また参考になる記事を書いてくださったinti-solさんに感謝を申し上げます。


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