特にこのブログではそんな記事を書いた記憶もありませんが、私はわりと将棋が(以前は)好きでして、旅先に詰将棋の本や雑誌付録を持っていったり、専門誌(「将棋世界」とか)に目を通していた時代もありました。最近はほとんど関心を失い、NHKの将棋番組すら見ることもなかったので、この記事はちょっと驚きました。
><将棋>谷川九段「降級、仕方がない」…現役に改めて意欲
毎日新聞 1月11日(土)12時23分配信
第72期名人戦A級順位戦(毎日新聞社、朝日新聞社主催)で初の降級が決まった谷川浩司九段(51)は11日、「厳しい戦いが続いたので降級は仕方がない。残る対局でいい将棋を指して(B級1組での)来期につなげたい」と語り、現役続行の意欲を改めて示した。
降級は同日未明、屋敷伸之九段(41)が深浦康市九段(41)に勝って決まった。「屋敷さんが優勢で逆転がない状況だったので、最後まで見ずに就寝した。11日朝に新聞を見て『やはり』と思った」
今期の順位戦ではここまで1勝6敗と苦戦している。「昨年4〜9月は、他棋戦でも比較的成績がよかったが、10月以降の成績は悔いが残る。順位戦では中盤から終盤に入るところでミスをして競り合う終盤戦にならなかった将棋が多かった」と振り返った。
A級10人の中で最年長となった。「10〜20代のころは10局中9局は実力を100%出し切れたと思うが、年齢を経るに従ってパフォーマンスが下がってきた感じがあり、もどかしく思うことも多くなってきた」と語る。
一昨年12月から日本将棋連盟会長に就いたことについて「対局への影響は言い訳にならない。現役棋士として対局しながら運営にあたっていることで、応援してくれる方も多いと思う」と影響を否定した。【山村英樹】
順位戦のA級というのは、一応将棋のトッププロの証みたいなものです(契約金額の関係で、竜王戦のほうが格が高いことになっています)。そこから谷川が落ちたというのは、やはり一つの時代の終焉でしょう。
記事中の谷川の談話にもあるように、今回は相当厳しいと谷川自身覚悟はしていたみたいですね。将棋の順位戦は、同じ勝ち負けでしたら順位が下のほうが降級しますから、残留者として最下位というのはかなり厳しいところがあり、それでさらに1勝6敗と大幅に負け越していたら、これは降級も仕方ないでしょう。
将棋連盟会長になったことによる心労、勉強時間の不足の影響は否定できないにしても、谷川自身も語っているように、それによって負けても仕方ないということにはなりませんから(そう考えるなら引退するしかありません。もちろん二上達也のように、会長就任からまもなく引退した人もいます)、彼なりに相当苦しみながらも現役を続けていくのでしょう。
過去のトップ棋士を見てみると、中原誠が降級(A級の次はB1級です)したのが52歳(1999年度順位戦)、米長邦雄は54歳(1997年度順位戦)です。そうすると谷川の50というのはやや早いというべきかどうかですが、中原がこのようにコメントをしていました(魚拓)。
><将棋>谷川A級陥落「来期はB級1組で頑張りたい」
毎日新聞 1月11日(土)0時45分配信
(中略)
名人戦七番勝負で谷川と激闘を繰り広げた中原誠十六世名人の話 彗星(すいせい)のように名人戦に出てきた谷川さんが、A級から降級するとは。感慨深いものがあります。将棋の内容を見て、前期あたりから大変かなと感じていました。序盤戦で苦労している印象があります。大山康晴先生も私も、50歳を過ぎるととたんに苦しくなりました。しかし、まだ老け込む年齢ではないので、これからの戦いぶりも注目したいと思います。
中原の談話にあるように、やはり「50歳」というのが大きな壁のようですね。それを乗り越えるのは、まさに中原、谷川レベルの棋士ですら非常に難しいというか大変だということです。そうなると、私が興味があるのが羽生善治の世代です。最近は「羽生」という名字の持ち主はフィギュアスケーターが圧倒的な知名度を誇りますが、かつてはこの人がこの名字では最高の有名人でした。ただ将棋のほうは「はぶ」と読みます。
彼は1970年生まれです。ほかに、同じような年齢で抜群に強い棋士が何人かいる。彼らが、2020年ごろから先どれくらい活躍できるか(できないか)ものすごく興味があります。羽生らの世代は50歳前後の壁を破れるか破れないか、羽生は将棋史にのこる別格の実力者ですから、これはどうなるのかなかなか面白そうです。
大山康晴は、70歳になる年齢(逝去したのは69歳。生まれたのは1923年の早生まれ、亡くなったのは92年の7月)までA級でがんばりましたが、羽生(あるいは他の棋士)はそれができるかどうかです。若手棋士の台頭もそうですし、いろいろな困難がたちはだかりますが、個人的には羽生(ら)にはその壁を突破してくれればいいなとは思います。回答は、2020年前後にでるでしょうか、それとももっと早く? つまり羽生らが早めに失速してしまうということです。
そういうわけで、これからも私なりに動向を見ていきたいと思います。