3月20日が「地下鉄サリン事件」の発生25年目だったので、マスコミなどでも報道がいくらかされたかと思います。下は、被害者遺族(亡くなった夫が霞ヶ関駅助役)の高橋シズヱさんの談話です。
【地下鉄サリン25年】被害者遺族 「時間が経過したという意味での風化は小さなこと」 - 産経ニュース
> オウム真理教は名を変え、後継団体は若い人を中心に信者獲得の手口が巧妙化。危険性は増していると思う。
いや、オウム真理教の後継団体には、これといった危険性はないんじゃないんですかね。「オウム真理教の後継団体であることを隠す」といった「詐欺宗教」といった側面はあるかもですが、現在の後継団体に、地下鉄サリンのような大規模テロから、坂本弁護士一家殺害事件や、信者の殺害といったような殺人事件ばかりでなく、武器製造ほかのようなこともふくめて実行する意思も能力もないでしょう。そんなことを許したり可能とするほど、警察からリストラ官庁、3流官庁とか揶揄される公安調査庁にいたるまで、怠慢でも無能でもないでしょう。詐欺宗教なら、オウムの後継団体以外にもたくさんあります。仮に今後、宗教団体が何らかのテロをふくむ大事件を起こすとしたら、それはオウムとは関係ない別の団体がすることになるでしょう。あるいは浅原彰晃のものの考えを悪い意味で発展させる人間は出てくるかもですが、たぶんその人物が何かをするのなら、オウムの系譜とはまたちがった形の団体で何らかの事件を起こすのではないか。
それで例えば江川紹子のこちらの記事はどうですかね。
>(前略)
教祖を含め13人の死刑囚の刑はすでに執行され、一連の事件は「歴史」の領域に追いやられつつある。
しかし、オウム事件は今なお進行中だ。浅川さん遺族の新たな悲しみに加え、オウムによって大切な人の命を奪われた遺族の喪失感は続いている。被害を受けた人の健康被害も解消されていない。そんな中、後継団体(アレフ、光の輪など)は引き続き活動をし、勧誘活動も行っている。
オウムのようなカルトに人が引き寄せられていくのは、被害者にとってたまらない「脅威」であると同時に、取り込まれていく人にとっても、その周囲の人にとっても、人生を破壊する不幸に他ならない。そうした被害を、少しでも減らすために、とりわけ若い人たちにはカルトの怖さを知って欲しいと思う。
(後略)
カルト宗教一般の危険性と、麻原他が主導して未曽有のテロ事件を起こしたオウム真理教の危険性とでは、正直言って次元が違うんじゃないんですかね。いわばカルト宗教は、多くの場合問題視するにしても民事の次元であることが多い(刑事になることももちろんあります)。が、人民寺院 やブランチ・ダビディアン、あるいはオウム真理教、太陽寺院、ヘヴンズ・ゲートなどのめちゃくちゃぶりというのは次元が違うでしょう。次元が違うことはそれ相応に認識しなければ、正しいものの考えには到達できないでしょう。また同じ江川の書いたこちらの記事も。これも、前出の高橋さんの談話です。
地下鉄サリン事件・がんばり続けた25年、遺族の高橋シズヱさん「どうかバトンを受け取って」
>本質は、事件を起こした時のオウム真理教と変わらないと、公安調査庁のホームページでも報告されている。そういうところに、若い人たちがまた取り込まれて人生をむちゃくちゃにしてしまうんじゃないかという危険性を感じる。そういうカルトに入らないよう、注意して欲しい
公安調査庁はそういうことを主張するかもですが(この公安調査庁の分析の妥当性についても議論しようと思えばできるのかもですが、ここではそこまで話を広げません)、人間の頭の中で考えていることとそれを実行するというのは大差がありますからね。被害者遺族や家族、坂本弁護士を巻き込んだ江川紹子がこういうことを書いたり訴えたりするのは理解はできますが、でもそれオウム後継団体の実情にそぐわないでしょうに。それはそれ、これはこれで考えないといけないでしょう。私がいつも主張するように、気持ちはわかるということと主張の妥当性というのは、物事の次元が違います。そういうことを一緒くたにしていたら、社会も迷惑します。
前に、憲法学者の故奥平康弘氏が、オウム事件は、オウム真理教の起こした事件というより麻原ほか一部の幹部がオウムを利用して起こした事件という側面が強くないかという趣旨の指摘をしていました。本が手元にないのであるいは私の要約が間違っている可能性もありますが、事実麻原らの逮捕以降、オウムおよびオウムの後継団体と目されている組織は、形式犯や微罪での逮捕はあっても、あのような重大事件は犯していないわけです。
基本的に日本の公安当局および日本社会は、オウム後継団体の再暴走というのはすでにあり得ないという次元で連中を封じ込めていると思いますけどね。私は死刑廃止論者ですので連中に対する2018年における死刑執行を「いい」とか「仕方ない」とは考えませんが、13人もの大量の執行をしたにもかかわらず、オウム真理教の後継団体は報復テロはおろか、まともな抗議活動もろくにしていないわけです。そういったことは少しは考えたほうがいいと思います。
なおこの記事は、bogus-simotukareさんの記事を参考にし、またその記事に投稿した私のコメントを一部そのまま使ってることをお断りいたします。bogus-siotukareさんに感謝を申し上げます。