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Channel: ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
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あることに20時間真剣に取り組むことにより、一定の水準に達するというのであれば、いろいろ希望も出てくる

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先日地元の図書館で、次のような本が目に留まりました。

たいていのことは20時間で習得できる

2014年に発売された本ですので、そんなに新しい本ではないのですが、この記事を書いている時点(2020年9月5日17時25分ごろ)で、Amazonには単行本が5冊あって入荷予定ありということですから、相当に読まれている、人気がある本なのかもですね。それでこの本を読んでみることにしました。図書館で借りてみます。内容については、Amazonから引用すると、

>忙しい人のための超速スキル獲得術。初心者が上手にこなせるようになるまでの最短の道を手ほどき。あらゆる技能の習得に応用できる。

というのでは、なんだかよく分かりませんが、もう少し細かく書いてあるところを引用すると、

>素晴らしい絵を描きたい、ビジネスを立ち上げたい、ピアノを演奏したい、飛行機を飛ばしたい……
そんな思いを抱きつつも、あなたが一歩を踏み出せずためらっている最大の理由は、上達するまでにかかる時間と、うまくなるために努力をしなければならないことだ。
しかし、たった20時間の練習で、まったく何も知らない状態から、上手にこなせる状態にまでもっていくことができる方法がある。
著者のジョシュ・カウフマンは、ベストセラー『Personal MBA』(ビジネススクールに行かずに、MBAの知識を身に付ける方法を説いた)の著者。人が何か新しいスキルを身に付ける際に、短時間で効率よく習得できる単純なアプローチ法を開発した。
そのアプローチ法を、ヨガ、コンピュータープログラミング、碁、ウクレレ、ウインドサーフィンなどの習得の実例(著者の経験)を通じて解説する。

あなたは、どんなものを学びたいだろうか? マルコム・グラッドウェルは、1万時間費やして練習すれば、誰でも習熟レベルに達すると説いた。でも、そこまで我慢できる? たいていのことは上手になるまでおもしろくない。
普通の人がそこまで打ち込むのは難しいはずだ。もちろん、プロのレベルにはいかないが、何とか楽しめるレベルだったら、20時間あれば何とかなる。これから新しいことをいくつも習得したい人に、学習マニアのジョシュ・カウフマンが開発した速習術をお届けしよう!

というものです。著者が本の中でチャレンジしているのは、

>ヨガ、コンピュータープログラミング、碁、ウクレレ、ウインドサーフィン

のほかに、QWERTY配列でないキーボードのタッチタイピングも、扱っています。

それで上の6つのチャレンジしているものを分けてみると(以下私による分類)

①運動系:ヨガ、ウインドサーフィン

②頭脳系:コンピュータプログラミング、碁

③頭脳系+α::QWERTY配列でないキーボードのタッチタイピング、ウクレレ

ということになろうかと思います。

この本でポイントとなるのは、上にもあるように、

> マルコム・グラッドウェルは、1万時間費やして練習すれば、誰でも習熟レベルに達すると説いた。でも、そこまで我慢できる? 

ということです。1万時間というのは、24時間まるまるで400日以上(≒417日)、1日8時間取り組んでも1250日です。昔の司法試験とかあるいはなんかすごいことをするのなら、確かにそれくらいの時間が必要なのかもしれませんが(以下参考。ボクシングの井上尚弥は、

>現在の僕の専属トレーナーでもある父は、「1万時間の法則」という原理をよく持ち出す。マルコム・グラッドウェル氏が著書『天才! 成功する人々の法則』(勝間和代訳/講談社)で紹介した概念だ。

天才になるには、それだけの努力が必要で1日8時間練習するとしても3年以上かかる。僕の感覚からすれば、1万時間で天才になれるのならば楽なもの。その1日8時間の中身がさらに問われ、限界までやったのか、考えながらやったのか、練習のための練習ではなく試合を意識してやったのか、が問題。質の高い練習を毎日、1万時間以上、積み重ね、結果が出たときに、やっと天才の「て」くらいに言われるようになるのかもしれない。

としています)、なかなか人間、それだけの時間をひねり出すのはできない相談です。当たり前ですが、人間 映画だって観たいし、ネットともつながりたいし、女の子(男の子)とどっかに行きたい時もあるし、昨今のような暑い日は、家で冷房をガンガンに効かせてじっとしていたいこともあるでしょう。だいたい仕事をしていているのなら、その努力が仕事に直結していればいいですが、なかなかそうもいかない。

ていうか、そもそも時間というのは物理的に万人に平等ですから、なんでもかんでも1万時間それに費やすのだというのは、物理的に不可能です。実際私たちは、そこまでしたいとは思わない。車に乗るのだって、F1レーサーになりたいと思う人はごく少数だし、ギターを弾くにしたってジミ・ヘンドリックスほどのすごいギタリストになりたいわけではないし、あるいは料理のレパートリーを広げたい主婦や自炊(本来の意味の自炊ね。念のため)しようと思う学生さんはたくさんいても、世界的なシェフになりたいとか都内や京都の超一流の日本料理店で修業しようともくろんでいる人は、いないとは言いませんが、そんなに多くはありません。

当たり前ですが、私たちが必要なのは、それの専門家になるというよりも、ある程度、それなりに、ひととおり、あることができるようになるということです。専門家になりたい人は、1万時間かどうかはともかく、必要に応じた時間を費やせばいいでしょう。しかし私たちがチャレンジする何かは、そこまでのものではない。言い切ってしまって問題なら、「ほとんど」はそうだというものでしょう。

いずれにせよ井上尚弥なら、ボクシングにそれくらいの努力をして人生をかけるでしょうが、一般人は、、たとえばギターを弾こうと思っても、井上のボクシングに対する取り組みのようなことをするわけがないし、またする必要もありません。将棋だって、誰だって中学生棋士のような超一流になろうと考えているわけではない。当然の話。

それでこの本の著者の主張の骨子は、20時間それにとりくめば、ある程度の水準まで行くことが可能であるというものです。そのエッセンスを、すみません、こちらのサイトから引用します。

>■超速スキル獲得の10のルール
1 魅力的なプロジェクトを選ぶ
2 一時に一つのエネルギーに集中する
3 目標とするパフォーマンスレベルを明確にする
4 スキルをサブスキルに分解する
5 重要なツールを手に入れる
6 練習の障害を取り除く
7 練習時間を確保する
8 すぐにフィードバックが返ってくる仕組みをつくる
9 時計のそばで一気に集中する
10 量と速さを重視する

詳細な解説については、引用もと他、あるいは本をお読みになってください。

で、読者の皆さまにちょっと質問します。あなたは、ここで著者が主張する20時間という時間について、「多い」「じゅうぶん」と思いますか、「妥当」「まあそんなものか」と考えますか、それとも「足りない」「少ない」とお感じになりますか。

もちろんどう考えようといい悪いの問題ではないからどうでもいいのですが、私見では、「20時間一生懸命やるのはけっこう大変」だと思います。が、これは「多い」とか「少ない」というより、「妥当」「そんなもんかな」という感想です。それくらいやれば、確かにそれなりにスキルは向上すると思います。

たとえば、最近の私の経験で言いますと、自動二輪(オートバイ)の免許取得について考えてみます。こちらの表を参照してください。私のように普通自動車免許を持っている人間が、普通自動二輪免許(400㏄以下の自動二輪車に乗れる免許)を取得する場合、最低17時限の技能教習を必要とします。教習所では、50分=1時限ですから、最低50×17=850分の教習で、免許を取得できるわけです。免許なしの人なら、学課は除いて、最低50×19=950分です。20時間というのは、60×20=1200分ですから、優にこの時間内に収まってしまいます。

大型ですとさすがにだいぶ時間がかかり、免許なしの人ですと50×36=1800分、大型・中型・普通免許保持者は50×31=1550分、普通自動二輪免許保持者ですと、50×12=600分です。免許なし、自動車免許だけの人の場合相当に多くの教習を必要としていますし、私の場合、普通自動二輪はともかく大型自動二輪取得の際は、相当にオーバーしてしまったので、この数字とはかけ離れていますが、それでも1200分でしたら、教習では24回受けられます。24回の教習をこなせば、相当にライディングの能力は向上しているのは間違いないところです。

なお普通自動車免許の場合でしたら、免許なしの人がMTでしたら50×34=1700分、ATでしたら50×31=1550分です。1200分を超えますが、しかしこれも24回分乗っていれば、それ相応のドライビングテクニックを得ているはず。

なお以上の話は、技能教習だけの話です。学科教習に関しては考えていないので、乞うご容赦。

で、上の著者の挑戦したもので考えると、囲碁もウクレレもヨガも、運転免許取得ほどの社会的責任はないですから、自分が楽しむという範囲内でしたら、20時間やれば相当なものでしょう。タッチタイピングもコンピュータ・プログラムもご同様。たぶん一番微妙なのが、ウインドサーフィンですかね。これは、最悪遭難する可能性があるので、そのあたり自分の実力を慎重に見計らう必要があります。しかしいずれにせよ、著者は、これらをなんとかひととおりできるようになっています。読んだうえでの感想を申し上げますと、囲碁に関しては、もう少し時間があれば、もっとやっている本人も面白くなる段階まで行けたのではと思いますが、ただそれなら、自分の意志で、20時間を超えた時間を費やせばいいわけです。世の中相性というものはあります。いわゆるゲームに関してだけでも、私は将棋のほうがいいという人もいるでしょうし、マージャンにかぎるという人もいるかも。

それで著者の実践が、下の動画です。聴衆の前で、ウクレレの演奏をしています。15分51秒ごろから始まるので、興味のある方は乞うご確認。この動画は、著者が本に書いている講演を収録したものですかね。著者は、この講演でウクレレを演奏することを目標に練習を積んだとか。

最初の20時間 — あらゆることをサクッと学ぶ方法 | ジョシュ・カウフマン | TEDxCSU

ともかく20時間集中して何かを習得しようと思えば、かなりのことができますね。車や自転車の走り始めで分かるように、何でも最初のスタートが一番大変です。語学も、最初の段階が一番面倒です。しかしそこを乗り越えると、案外それ以降は楽になるものです。たぶんスポーツなども同じじゃないかな?

なおこの本は、実践の部分はすべて読む必要はありませんね。たとえば私なら、ベースをやっているからウクレレのくだりが一番面白かったし、運動系に興味があるのなら、ヨガかウインドサーフィンのくだりを集中的に読めばいいでしょう。もちろんすべて読めば、より幅広く著者の考えを理解することができます。

というわけで読んでみていい本だと思います。人間いろいろなことにチャレンジして、それでいろいろとやっていくのが楽しいと思ます。さあ、あなたも20時間を目標に何かにチャレンジしようじゃありませんか。


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