先日、私が以前 田舎に派遣されていた時(ていうか、つまりは左遷ですが)通っていた某食堂に行ってみようと思い、はるばるその店へ足を延ばしましたら、張り紙がしてありました。そこでは、大要突然ですが、閉店しますとありました。「おいおい」です。
調べてみると、私が行く1か月前くらいには閉店していたようです。つまりは店主が高齢になり、経営が厳しくなってきたので閉店ということのようですが、この種の個人営業の食堂は、つまりはオーナーシェフがほとんどですから、どんだけおいしくて儲かっていても、オーナーが「やーめた」になっちゃえばそれまでですから、大変残念ですが、どうしようもないですね。韓国なんかは、食堂(あるいはタクシーの運転手とか)で手っ取り早く儲けたら、すぐ違う道で新たなる商売を始めるという路線が(少なくとも昔は)ある(あった)みたいですが、だいたいにおいて弟子や次なる後継者などいませんから、けっきょくその味も、秘伝のものとなり消えていくのです。それも残念な話です。
その食堂がどこのなんという食堂かは、当方の個人情報保護ほかの理由で明らかにはできませんが、食べ物の写真はお見せします。
この店では、ハンバーグしか私は食べたことがありませんが、ステーキとかソテーなどもありました。かなり強い味ではありました。
どう、おいしそうでしょう。実際、わりと良い味でした。もう食べられないのか。残念です。
それで個人商店の食堂にかぎらず、食べ物の味というのは、ほんと一瞬の芸術であり、一瞬の至高の産物であることが、ほんとに貴重だしはかないですね。熱い食べ物も、冷えちゃえばそれまでです。そしてその味の記憶というのは、まさに食べた人間の記憶にしか残らない。それらはデータ化も難しいし、言語でそれを表すこともできません。まさに食べた人だけに刻まれるものでしかありません。
ましてや最近、コロナの関係で、閉店する飲食業も増えています。出てはつぶれ、懲りずに更なる店が出てつぶれ、最後に少数の店が長続きするのが飲食業ですが、やはり中小の飲食業で、しかもオーナーが高齢者の店は、これを機に店をたたむという例が目立ちます。私が行くことの多い某映画館近くにあった焼き鳥屋も、いっぺん行ってみようと思っていたら、けっきょく行く前に閉店になってしまいました。また、その近くにあったそば屋も、しばらく休業とか。再開するかどうかも定かでありません。今あげた店は、たぶん地域ではともかく日本全体では無名店でしょうが、たとえば大学などが休校しているので、大学生相手の食堂なども閉店を余儀なくされている店もあるようです。ネットのニュースなどでもいろいろ報じられています。たとえばこちらなど。あるいはコロナが直接関係するわけではないのかもですが、1つのきっかけではあるのかもです。以前観た『ミッドナイト・ラン』という映画に、チャールズ・グローディンの会計士が、ロバート・デ・ニーロの賞金稼ぎに向かって大要「飲食店の多くはすぐ閉店する」という趣旨のことを述べたくだりがあったかと思いますが(確認しないで書くので、間違っていたらごめんなさい)、昨今ではこちらの記事によると
>開業3年で約7割が廃業し、10年後も営業している店は1割程度
だそうで(なおこの記事は、コロナがやばくなる前の今年1月10日発表)、そういう意味で言えば、私が上にあげた店などは10年の継続営業などは軽くクリアしている店であって、それだけでも大したものですが、しかしやはりいろいろ苦労、困難が多いのだろうなと思います。ましてや、コロナの最中、あるいはポストコロナでは、事態はさらに悪くなるでしょう。
そう考えると、行ってみたい、行ってみようかという店があったら、食べに行った方がよさそうですね。ここしばらくは、飲食店にかぎりませんが、かなり冬の時代でしょうから、やはり一期一会くらいの精神で店に入って食べたほうが後々後悔しないで済むというものです。
閉店した某食堂のオーナーさんに、おいしいハンバーグありがとうございましたと、決して読んでもらえない礼を述べて、この記事を終えます。