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Channel: ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
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育鵬社の教科書の採択地区が大幅に減少した(安倍晋三もやる気を失った?)

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先日の産経新聞の記事より。

>【主張】教科書採択 自虐史観の復活が心配だ
2020.9.23 05:00コラム主張

 来年度から中学校で使われる歴史・公民教科書の採択で、現在は育鵬(いくほう)社版を使っている市町村の多くが他社版に切り替えることが分かった。

 育鵬社版は、日本の歴史や文化への愛情を育むことを編集目標に掲げている。しかし、反対派が組織的な不採択運動を展開していた。

 そうした運動が採択に影響を及ぼしたのなら問題だ。文部科学省や各地の教育委員会には厳格な調査を求めたい。

 育鵬社版の歴史・公民いずれかの教科書を現在使用しているのは全国23市町村に上る。このうち半数以上の14市町村が、今夏に行われた採択で、来年度から他社版を使うことに決めた。横浜市や大阪市などの大規模自治体も他社版に切り替えた。

 育鵬社版に対しては、反対派がウェブサイトで「戦争賛美」などとレッテルを貼り、各地の教育委員会に電話やファクスで不採択を求めるよう呼び掛ける運動を展開していた。教育委員の名前を並べ、手紙を出すよう促すサイトもみられた。

 実際、電話や手紙で外部から激しい働きかけを受けたと訴える教育委員もいる。文科省は今年3月、採択にあたり「静謐(せいひつ)な環境」の確保を求める通知を全国に出したが、静謐が保たれたとはとても言えまい。

 懸念されるのは、自虐的な内容の教科書が多くなることだ。

 今回の教科書検定では、「新しい歴史教科書をつくる会」が主導した自由社版の歴史教科書が不合格となった。育鵬社版と同様、自国への愛情を育むことを編集方針としていたが、採択のスタートラインにすら立てなかった。

 一方、不適切な「従軍慰安婦」の呼称をはじめ、ことさら自国をおとしめるような記述が検定にパスしている。自虐史観からの脱却を図る教科書改善の流れに、逆行しているのではないか。

 こうした中、尖閣諸島を行政区域とする沖縄県石垣市(与那国町と共同採択)は育鵬社版を継続して採択した。領土の記述など内容を重視したものだろう。外部からの働きかけに左右されず、毅然(きぜん)と採択した姿勢を評価したい。

 来春からは新しい教科書を使った授業がはじまる。

 どの教科書であろうと、子供たちに歴史や文化への愛着を抱かせる授業に努めてほしい。

マジ論すれば、どこの教科書だろうと、

>歴史や文化への愛着を抱かせる授業

ということは主観的には満たしている内容であるはずですが、それはともかく。

新しい歴史教科書をつくる会」から袂を別った「教科書改善の会」の受け入れ先である育鵬社の教科書をどう評価するか以前の話として(もちろん私は、評価しません)、自分のところの系列会社が出している教科書について社説でこのようにそれその採択状況について堂々と書くというのもひどい話です。これは道義上問題がありすぎでしょう。

他新聞(朝日とか毎日、東京などのリベラル系ばかりでなく読売や日経であっても)が同じようなことをしたら、さすがに産経もいい顔はしないでしょうに(苦笑)。どんだけダブスタでデタラメだんだか。

もっともbogus-simotukareさんもお書きになっているように、どうもこの教科書の出版については、最初は小学館やPHPあたりに教科書出版の話を持って行ったところ、ビジネス上問題があると断られて扶桑社が出版し、しかし扶桑社だとフジテレビが韓流ドラマのからみで迷惑を受けるので、さらに子会社の育鵬社なる会社を設立したということがあったという話もあります。真偽は知りませんが、それじゃまるで暴力団が自分たちの姿を隠すためにフロント企業を設立しまくるようなものであり、なんとも無様な話ではあります。だいたい小学館も、『SAPIO』みたいな雑誌を出していて、それで中国等での『ドラえもん』のビジネスなどに差し支えるとは、なかなかいい度胸の出版社です。まあそっちの方面の担当は、小学館の右翼商売(になっているか疑問です)なんかには迷惑しているのでしょうが。PHPだって、昔はともかく、今はパナソニックからすれば、PHPなんていい迷惑でしょう。

その後その活動が分裂して、自由社と育鵬社の教科書の2種類の教科書が発売されることとなり、昨年の教科書検定で自由社の歴史教科書が検定不合格(公民は合格)ということとなったわけです。

さてさて、それはともかく。記事にもありますように、

>育鵬社版の歴史・公民いずれかの教科書を現在使用しているのは全国23市町村に上る。このうち半数以上の14市町村が、今夏に行われた採択で、来年度から他社版を使うことに決めた。横浜市や大阪市などの大規模自治体も他社版に切り替えた。

というのはさすがにかなり興味深いですね。せんだっての教科書検定で一発不合格となった自由社の歴史教科書は、ほとんどシェアのない教科書でしたが、育鵬社はそれなりのシェアはあったわけで、事実上右派系教科書は全滅とまではいわずとも、商売だけを考えたら存続も厳しいですね。それは無視して無理やりでも次の検定でも教科書を出すのか。日本共産党の機関紙『赤旗』の記事を。

>2020年9月22日(火)
中学教科書採択 育鵬社激減
侵略美化 歴史 6分の1
改憲誘導 公民 12分の1
 7~8月に各地で行われた中学校教科書の採択の結果、侵略戦争を正当化する育鵬社の歴史教科書が、来年度は現在使われている冊数の6分の1に激減することが21日までに明らかになりました。歴史をゆがめる教科書を子どもたちに手渡すなという運動の成果です。子どもを改憲に誘導する同社の公民教科書は現行の12分の1の冊数になる見通しです。

 今年度まで育鵬社教科書を使用してきた地区のうち横浜市や大阪市、松山市など多くの地区が、今回は不採択にしました。同教科書を採択した地区数は歴史が21から6に、公民は19から4に大きく減少しました。

 全国の採択結果に基づく「子どもと教科書全国ネット21」の推計(17日)によると、来年度から公立学校で使用される育鵬社の教科書は歴史が約1万200冊、公民が約3400冊です。

 私立学校でそれぞれ千数百冊使用される可能性がありますが、それを含めても歴史が1万2000冊程度、公民が5000冊程度です。育鵬社版が占める割合は歴史教科書で約1%、公民教科書では0・5%以下にとどまる見通しです。

 文部科学省によると、今年度使われている同社の教科書は歴史が約7万2500冊(占有率6・4%)、公民が約6万1200冊(同5・8%)で、来年度はいずれも大幅に減ることになります。

政治介入、押し返した
 侵略戦争美化、改憲誘導の育鵬社教科書が激減したのは、各地で教職員、保護者、住民らが粘り強く運動を続けてきたからです。

 現在、育鵬社の教科書を使用しているのは歴史で21地区、公民で19地区ですが、このうち来年度以降も同社を採択したのは歴史で5地区、公民で4地区にすぎません。歴史は安倍晋三前首相の地元である山口県下関市が新たに採択しました。

 中高一貫校など都道府県立学校で育鵬社を使用しているのは歴史で8都県、公民で7都県ですが、引き続き採択したのはいずれも4県となり、ほぼ半減しました。東京都と愛媛県は、2001年に育鵬社版の前身にあたる扶桑社版教科書を全国の公立学校で初めて採択して以来、19年ぶりに侵略美化の教科書の使用をやめました。

 育鵬社教科書については、自民党が地方議員に指示して同教科書の採択に有利になるような質問をさせるなど、露骨な政治介入を行ってきました。

 これに対して「戦争する国」づくりのための教育を狙うものだと批判が高まり、育鵬社教科書の問題点を知らせ、現場の教員の意見を尊重して公正な採択を行うことを求める運動が各地で続けられました。自民党などの政治的介入で使われてきた教科書を市民の力で不採択にしたのです。

 教科書採択 次年度から学校で使う教科書を決めることを採択と呼んでいます。小中学校の場合、ほぼ4年に1度おこなわれ、区市町村立学校は全国581の採択地区ごと、都道府県立学校は各教育委員会で決定します。今年は来年度から中学校で使う教科書が決められました。

表も、同じ記事からのものです。

上の引用記事にもありますように、育鵬社の教科書の採択状況は、ほぼ壊滅状態ですね。いままでの育鵬社のシェアの高さは、日本で2位と3位の人口の都市である横浜市と大阪市が採択していたためであったのですが、両市が不採択にしたのはかなり致命的ですね。

それにしてもこれはいったいどういうことなんですかね。千葉県立とか山口県立は、知事が右翼だったり安倍晋三の地元だったり(下関市もそういうことでしょう)しているわけですが、何かと安倍政権との親密さをアピールしていた(そして安倍も明らかにそれを応援していた)維新が牛耳る大阪市などは、育鵬社の教科書に固執するのではないかと私は思っていたのですが、そうでもないようです。

その理由はいろいろでしょうが(たぶんですが、想像以上に教員ばかりでなく保護者などからも育鵬社の教科書の評判は悪いのでしょう)、これもたぶんですが、安倍晋三も明らかに、育鵬社の教科書を各自治体が採択するよう動くといったことを前ほどしなくなったのでしょう。

自由社の歴史教科書が検定不合格になったことのほか、従軍慰安婦という言葉が教科書に復活したことも、この検定では話題となりました。その件については、私も記事を書きました。

「自由社」の中学歴史教科書の検定不合格とともに、「従軍慰安婦」の用語の復活なども非常に興味深い

安倍晋三が「それはまかりならん」と主張すれば、たぶん「従軍慰安婦」という用語は教科書に復活しなかったと思うので、つまりは安倍も、もはやその件について突っ張るということはなかったと解釈して、特に問題はないんじゃないんですかね。その理由はつまびらかでありませんが、つまりは安倍も、育鵬社教科書採択をプッシュして、日本国民の歴史認識に一定の影響を与えたいというような戦略に限界を感じていたのではないか。そう考えるのが自然だと私は思います。そもそも論として、自由社の歴史教科書が検定不合格になった背景には、右翼系教科書の育鵬社一本に統一するというねらいがあったかと思います。そうすれば、安倍に近い産経新聞系列であり、またシェアも高い育鵬社に統一するのはある意味当然でしょう。

ところでその、歴史教科書を昨年の教科書検定で一発不合格になった自由社の教科書を執筆・編集する「新しい歴史教科書をつくる会」のHPを確認しますと、最近更新が滞っていますね。

新しい歴史教科書をつくる会

この記事を書いている9月27日午後3時前現在では、8月21日更新の記事が最後であり、またその記事は、国家解体の公民教育からの脱却を!『新しい公民教科書』の思想とは 小山常実氏 講演会 開催

というのもであり、直接自由社の歴史教科書の検定不合格を批判するものではない。また連中の公式ツイッター

新しい歴史教科書をつくる会【公式】

を見ても、7月30日が最終ツイートです。しかもそれが、こんなアホツイートです。

文科省「不正検定」を正す会が週刊誌『アサヒ芸能』<「北朝鮮スパイリスト」に「文科省調査官」の衝撃真相>記事について緊急会見予定
一般人も参加可(予約不要)
令和2年7月31日午後1時30分~午後2時30分
場所:ホテルグランドヒル市ヶ谷 3階・瑠璃西の間

— 新しい歴史教科書をつくる会【公式】 (@Tsukurukai) July 30, 2020

これ、連中が味方としていたはずの萩生田文科相からまるで相手にされなかった代物ですからね(苦笑)。私の知る限り、産経もふくめた右翼系の連中も乗ってきていない(笑)。果たしてやる気があるのかというレベルで疑問です。

さすがにこれで、「新しい歴史教科書をつくる会」が活動停止になる、解散になるということはないのかもですが、安倍政権下でこれかよというのは、連中も相当重大に事態を認識しているのではないですかね。育鵬社も、安倍政権が続いていた(採択時)のに、安倍がろくに動いてくれなかったというのは、相当に事態がよろしくないと認識しているはずです。

「つくる会」にいたっては、そもそもそんなことされても行政訴訟すら起こせないくらいの連中だから、正直この事態に大いに困惑しているんでしょうね。それは当然の権利なのだから、なぜ行政訴訟を起こす程度のこともできないのか。安倍政権や日本政府、文部科学省にケンカを売りたくないとか、産経が今回の自由社教科書の検定不合格の黒幕であるとしても、その産経に自分たちの教科書の検定不合格に抗議する文章を載せたり抗議広告を掲載している無様さです。さっさと行政訴訟しろです。そうすれば、全面勝訴するかどうかはともかく、ある程度は裁判所も連中の主張を認めるところもあるかもです。だいたい安倍に悪いことをいいたくないからいろいろなことをほざいてもあからさまな安倍批判は控えていたのに、安倍は自民党総裁任期1年を残して首相を辞任する始末(苦笑)。どんだけ無様なんだか。もっとも文科相は留任ですが。

けっきょく、教科書の採択状態が悪いとなったら、その悪い部分の批判なり意見や注文なりを聞いて内容にフィードバックして内容の充実を図るなんてことより、特定の政治家や地域の有力者にはたらきかけて教育委員会で採択させるとか、そんなことばかりに熱中しているから、安倍が熱意を失ったらあっという間にこのような事態になったってことじゃないですかね。安倍ほかが動いてくれなかったら、育鵬社も自由社も、とても使ってもらえる代物ではなかったということです。それで前の記事でも書きましたように、藤岡信勝など、めちゃくちゃな安倍擁護をかつて国家基本問題研究所のHPでしていましたが、その安倍から見捨てられたのだから、その馬鹿ぶり、無様ぶり、無残さは、まさに古今に例を見ないほどのひどさです。

たぶんですが、「つくる会」、「改善の会」ともに、相当な戦略の見直しを迫られるのでしょう。自由社はもしかしたら教科書から撤退する可能性もある。他社に移るのか、それとも自由社が発行を継続するのか、どうなるか。すくなくとも2社とも撤退するということはないと思うので、今後連中も必死になって巻き返しをねらってくるのでしょうね。冗談でなく次の教科書検定の結果では、存亡にかかわる。私はもちろん連中の教科書なんか、さっさとそんなものやめろと考えていますが、やめるやめないは連中の判断ですし、まだあきらめる段階にはきていないでしょう。

いずれにせよこれからも連中はいろいろ動いてくるのだろうと思います。そのあたり私もいろいろ観ていきたいと思います。またこの記事は、bogus-simotukareさんの記事(上で引用した記事)を参考にしました。お礼を申し上げます。


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