すみません。選挙は選挙でも、今日は大阪の住民投票の件で。
また若干旧聞になって恐縮ですが、大阪都構想の賛否を問う住民投票が11月1日に執行されて、今回も反対派が僅差での勝利でした。それでこの住民投票で、最終的に勝敗を分けたのが、意見はいろいろあるかと思いますが、私は公明党支持者の動向だったと思います。朝日新聞の記事を。
>「維新に尻尾振るなんて」 都構想、反発した公明支持層
有料会員記事 大阪都構想
笹川翔平 河合達郎、太田成美
2020年11月1日 23時37分
地域政党「大阪維新の会」が結党以来10年にわたって掲げ続けた大阪都構想の実現に向け、2度目の住民投票に打って出たが、連敗に終わった。公明党を賛成に転じさせることには成功したが、公明支持層の動きは鈍かった。特別区の財政見通しや住民サービスの行方に対する市民の不安も払拭(ふっしょく)しきれなかった。
都構想の賛否ほぼ互角、公明支持層も反対多く 出口調査
「今回は、公明党さんに多大なるご支援をいただいたが、すべて私の力不足だった」。維新代表の松井一郎市長は1日午後11時ごろから大阪市内で開いた記者会見でこう述べた。左隣には公明府本部代表の佐藤茂樹衆院議員が座っていた。
公明は前回2015年の住民投票で反対したが、今回は賛成に転じた。昨春の府知事・市長のダブル選で、維新が2度目の住民投票実施を掲げて圧勝したことを受けてのことだった。背景には、維新が公明の現職議員がいる関西の衆院6選挙区への候補者擁立を何度もちらつかせた経緯がある。
しかし、過去の選挙戦で維新幹部らが公明を激しく批判したこともあり、支持層の反発は根強かった。学会関係者には厳しい意見が相次いだ。「賛成というのも分かるが維新が嫌いだ」「負ければ辞めると松井市長が言っている。つぶしたい」「裏切り者」
>第7回都構想の賛否ほぼ互角、公明支持層も反対多く 出口調査
大阪都構想
2020年11月1日 20時43分
今回の住民投票も5年前の前回住民投票と同様、反対がわずかな差で賛成を上回った。朝日新聞社が投票当日の1日に実施した出口調査によると、公明支持層の賛成が前回の2割程度から今回は5割近くに増えたものの、無党派層の反対が5割台から6割台に増えた。
都構想に賛成している日本維新の会の支持層は賛成が90%。前回の維新の党支持層の97%に比べると、勢いに欠けた。
前回は反対したが、今回は賛成に回った公明党の支持層は賛成46%(前回21%)、反対54%(同79%)。賛成はかなり増えたものの、反対の方が多かった。
一方、都構想に反対している自民党の支持層の賛成は37%(同42%)、反対は63%(同58%)だった。立憲民主支持層、共産支持層はともに反対が9割前後を占めた。
無党派層は今回は賛成が39%(同48%)で、反対が61%(同52%)。前回も反対が賛成を上回ったが、今回はその差を広げた。
(以下略)
毎日新聞の記事も。
>「衆院選の議席守る党利党略だ」公明支持層半数、維新協力に反発 都構想否決
会員限定有料記事 毎日新聞2020年11月2日 20時49分(最終更新 11月2日 21時40分)
「大阪都構想」への賛否を問う住民投票が否決されたことで、日本維新の会と良好な関係を築いてきた菅義偉首相にとっては痛手となった。賛成に転じた公明党と、地元府連が反対論を展開した自民党との間にもしこりを残す。大打撃を受けた維新は出直しを迫られ、与野党の次期衆院選の戦略にも影響を与えそうだ。
「大阪都構想」を振り返ると、大阪府・市議会で多数派を形成して国政にも進出した維新と、衆院選での協力関係を重視したい公明が、接近と対立を繰り返してきた歴史が浮かぶ。今回は約1万7000票の小差での決着。昨年の参院選比例代表で公明に投票した大阪市内の有権者は約17万人おり、公明支持層の投票行動も結果に影響した。
「公明党さんに、多大なるご支援をいただきましたが、全て私の力不足」。1日夜、佐藤茂樹・公明党府本部代表らとともに記者会見した松井一郎維新代表は、そう語った。2018年末に都構想の制度案づくりの過程で松井氏と非難の応酬を繰り広げていた佐藤氏はこの日、真横の席に座り、「都構想という政策テーマの賛否と、選挙とはおのずから性格が違う」と強調。「大阪市をなくしてほしくない感情」を、反対多数の要因に挙げた。
昨年4月に行われた大阪市長選挙で、松井現市長は、660,819票を獲得し、自民・公明の推薦、当時の国民民主の支持、立憲民主と共産の自主支援の対立候補に184,468票差、ポイント数で58.1%対41.9%と実に16.2ポイントもの差をつけての完勝でした。投票率が52.70%と高くはなかったとはいえ、これで大阪では強い公明党を味方に付ければ、住民投票も勝てると踏んだのは、当然の計算というものでしょう。私も正直、今回は賛成が多数はないなるんじゃないのと思っていました。それもかなりの差でです。少なくともある時期までは。
それで実際の住民投票では、投票率62.35%で、賛成675,829票、反対692,996票というわけで、今回の投票では、賛成派は昨年の市長選から15,000票上積みできただけで、投票率が上がった分は、ほとんど反対票にまわったようですね。もちろん昨年松井氏に投票した有権者で今回反対に投票した人もいるわけですが、たぶんそんなに多くはないはず。
そうなると今回の住民投票は、賛成派が、公明党支持層を固めきれなかったことが最大の敗因ですね。ほかにもいろいろ賛成派の票を減らした要因はありますが、公明党支持層を固めきれなかったのは、賛成派によってどうこうしなければいけないことですから、やはりこれが致命的だったということです。大阪市で公明票が17万票くらいの集票能力があるのだとすれば、1割でも15,000票から20,000票くらいは動かせるのでしょうから、けっきょく公明票しだいだったのでしょう。ほんと1万票が反対から賛成に動くだけで今回は賛成派が勝っていたのです。
上の記事の引用にもあるように、公明党は維新から恩を着せられてそれで都構想(というより、実際は政令指定都市である大阪市廃止です)に賛成したということですが、正直足元の市会議員たちの中には、「それはないぜ」と考えていた議員も多かったでしょうし、創価学会会員を中心とするコアな公明党支持層もあんまり一生懸命にならなかった人も多かったんじゃないんですかね。コロナの関係で、不十分な選挙運動になったところもあるでしょうし、またやっぱり「大阪市をなくして都にするメリットというのがいまひとつ見えない」というところも大きかったはず。2018年の沖縄県知事選挙では、政権与党側が推薦した佐喜眞淳を(当然ながら)公明党支持者は投票することが期待されたわけですが、実際には1/3くらいがオール沖縄が擁立した玉城デニーに流れたとされます。玉城氏が8万票の差をつけて完勝した背景には、やはり自公系候補が公明票を固めきれなかったことが一因としてありました。
公明党は、自称「自民党に無茶をさせない監視役である(だから安倍改憲にもいい顔をしなかった?)」のかもですが、そういうあてにならん話よりも、現場の実働部隊(創価学会婦人部とか)が事実上のストライキ、サボタージュをしてくれたほうが、野党、リベラル系にとってもよさそうです。ただいずれにせよ維新はあまり公明党支持層といい関係にはならなそうですね。維新のような第二自民党にでかい面されても嫌なので、それも悪いことではありません。