先日、これは予想以上にひどいなと思った記事を読みました。
>エアアジア・ジャパン破産へ 2万人超に返金見通せず
2020/11/17 17:20 (2020/11/18 4:43更新)
格安航空会社(LCC)のエアアジア・ジャパン(愛知県常滑市)は17日、東京地方裁判所に破産手続きの開始を申し立てた。保全管理人によると負債総額は約217億円。コロナ禍での国内の航空会社の経営破綻は初めて。新型コロナウイルスの感染拡大による航空需要の低迷で資金繰りが悪化し、マレーシアのエアアジア本体に支援を打ち切られたことが響いた。
欠航便の返金を受けられていない一般客が2万3千人以上おり、払い戻しの見通しが立っていないことも明らかになった。エアアジア・ジャパンは、エアアジア本体や楽天、ノエビアホールディングス、アルペンなどの出資を受けており、株主に支援を求めていく方針を示した。
エアアジア・ジャパンの設立は2014年。中部国際空港を本拠地とする唯一の航空会社で、札幌、仙台、福岡への国内線と台北への国際線計4路線を運航していた。
2019年12月期の売上高は約40億円、最終赤字は約47億円だった。保有機材がリースで3機にとどまり、規模拡大で採算性を改善する前の段階でコロナ禍に見舞われた。4月から一時全便を運休するなど、次第に欠航が目立つようになり、10月に12月5日付で全路線を廃止すると発表していた。
保全管理人の上野保弁護士は同日、中部空港内で記者会見を開き、欠航便のチケットの返金を受けられていない顧客が少なくとも「2万3千人以上いる」と明らかにした。金額ベースでは5億円強の返金見通しが立っていないという。
エアアジア本体は将来的なグループの国際線の搭乗代金などに使える「クレジットアカウント」で対応し、現金の払い戻しにも応じる方針だ。ただ上野氏は現金での払い戻しの原資が確保されていない点を指摘し、「救済されてしかるべきだ。株主に支援できないか協議していく」と話した。
事業廃止の決定前に300人弱いた従業員は11月4日付で大半を解雇し、清算手続きに必要な約50人まで減らした。上野氏は未払い賃金があることも明かし、現在の手元資金や国の制度などで救済していきたい考えを示した。
役員は保全管理人の管理下に入る。会田純・最高執行責任者(COO)は電話取材に「必要な手続きに対して協力していく」と話した。株主の1社、アルペンは「我々としてコメントできることはない」とした。同様にノエビアも「コメントできない」としている。
エアアジア・ジャパンが、事業継続を断念したということはすでに報道されていたのでわかっていましたが、破産手続き開始の申し立てですか。会社更生法とかそんななまやさしい事態ではなかったということです。いや私も、エアアジア・ジャパンが会社更生の手続きを踏む可能性があるとは思っていませんでしたが、破産というのも相当ひどい状態ということなのでしょう。現エアアジア・ジャパンは、2014年に設立されたので、たった6年で自己破産です。しかも就航は2017年からですので、それからですと3年です。しょうがないこととはいえ、さすがに「どうもなあ」ではあります。
格安航空会社(LCC)というのは、就航も早いですが、撤退も急速です。そうしていかないと経営が成り立たない。それは理解していますが、会社の存亡も早いものがあります。だめならさっさと会社をたたむ。こういった会社は、かつては投資家による投機的な経営であることが多かったので、赤字になったらすぐ撤退するというのがその在り方でした。実際、LCCのはしり、少なくとも大きな淵源の1つであることは間違いないレイカー航空も、大手航空会社のダンピングに対応しきれずに1982年に破産、ただちに運航停止となり、航空券を購入していた利用者たちは、足止めとなってしまいました。
ここで世界LCC興亡史など書いてもしょうがないのでやめますが、日本でも例えば、バニラエアは、旧エアアジア・ジャパンから会社名を変更して運行した後、2019年10月末で、同じANAホールディングス傘下であるPeach Aviationに統合されました。バニラ・エア名では、2013年からの就航、旧エア・アジアジャパンは2012年、会社設立は2011年で、それからしてもたった8年の長さでしかなかったわけです。私も数回バニラを使ったことがあるので、消滅したときはやはりちょっと残念な気持ちになったものです。
ただ航空会社って、ほんとしょっちゅう倒産するし、また合併再編も年がら年中だしね。日本航空は、2004年までに日本エアシステムを吸収合併しますが、これが経営に負担になったこともあり、2010年に倒産、会社更生法を適用されています。ほかのナショナルフラッグも、スイス航空は2002年に消滅、ベルギーのサベナ・ベルギー航空は2001年に倒産、米国でも、コンチネンタル航空、トランス・ワールド航空、ノースウエスト航空、パンアメリカン航空といった、米国ですから「ナショナルフラッグ」ではなくても、それに準じた規模と知名度のあった航空会社が、倒産、吸収、合併により、消滅しています。
けっきょく航空会社って、経営の在り方は、バス会社のようなものですからね。鉄道会社なら、関西の一部私鉄などをのぞいて、ある種の独占運行事業者たりえますが、路線バス事業ならともかく高速バス事業が各社の競合になるのと同様、規制が解除されればいろんな航空会社が参入して競争は生じます。またたとえば日本の旧国鉄などは膨大な土地を持っていましたから、それが大きな財産になりましたが(JRはどこも不動産事業をやっています。国民の財産を、民間企業化して私有地にしちゃったのだから、盗人猛々しいにもほどがあります)、航空会社にはそんなものもない。
それで先日拙ブログ常連コメンテイターであるアンドリュー・バルトフェルドさんからもご指摘いただいたように、韓国のアシアナ航空も、どうも大韓航空に買収、合併される見通しになりそうですからね。個人的には、アシアナ航空は好きな航空会社ですのでぜひ存続してほしいのですが、どうも難しそうです。大韓航空傘下の航空会社として存続できればなあとはかない期待をしているのですが、たぶんはかない期待で終わるでしょう。合併になったら私の持っているアシアナのマイレージはどうなるかですが、早急に使わないとな。
そんな個人的な話はともかく、これからも上で書いたような事態はどんどん起きるでしょう。まったく油断も隙もありません。